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●2010年10月某日/富士グランドキャニオンにて

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富士登山を行った際、偶然知った変わった断崖、その名は「富士グランドキャニオン」。
どこかB級っぽさを感じさせられるその名称がいつまでも心に残り、
あれから数年改めてグランドキャニオンとやらを訪れることとなった。
名称の怪しさとは裏腹に富士火山が作り出した魅力的な地形を見ることができる
おもしろい場所だった。


photo:Canon eos7d 15-85mm


子供心をくすぐるモノの一つに崖がある。生まれ育った田舎は川や池など遊び場所には事欠かなかったものの特に男子心をくすぐる危険な場所といえば崖だった。丘陵に現れる荒々しくも冒険心を擽られる崖に何度も挑戦したもの。
さらに出土する化石にも魅了され崖はたちまち悪友達のたまり場となった。しかしそんな遊び場もやがて大人の知ることとなり、立ち入り禁止へ。同時に成長していった自分たちもやがて崖や化石への興味を失い足を向けることもなくなっていった。先日本当に久しぶりに通ったその崖は繁殖した草木に覆われかつての荒々しい断面を見ることはできなくなっていた・・・



さて富士山の裾野に面白い断崖があるとの知ったのは、以前見かけた案内看板。その名称の胡散臭さに大いに気にはなってはいたものの二年ほど経ちようやく向かう機会が訪れた。

場所は富士山麓。名前は富士グランドキャニオン。さびれた観光地で世界三大○○、東洋一の○○、という看板を見てしまった時と同じく、どこか気恥ずかしくなってしまう壮大な名称ではあるものの行ってみなければわからない。



昼を回った頃ようやく富士山が近付いてきた。秋空を覆う電線、原色の看板。日本の典型的な風景が広がる富士市市街地。それら人工物の間からは冠雪したばかりの富士山頂がわずかに顔をのぞかせている。

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おそらく日本で最も人気のある被写体であろう霊峰富士。
人工物が写り込まない撮影スポットは鈴なりとなったカメラマンでいっぱいだ。富士山写真には興味が湧かないので、多少しらけた目でそんな喧噪を眺めていた自分が出会い衝撃を受けたのが藤原新也氏が富士山を大判カメラで撮った「俗界富士」という写真集。

いかに人工物を入れず富士を撮るかにこだわる星の数ほどある富士山写真集、ところが藤原氏はあえて下界に広がるコンビニや工場、ラブホテル等、下品な人工物も風景の一部と扱い富士を撮った。今までの典型的な富士山写真に対する彼らしいアンチテーゼだったのかもしれない。あまりに現実とかけ離れた富士山写真集に違和感を感じていた自分は「俺の知っている富士山とはまさにとはこれだ」と衝動買いしてしまったことを思い出す。





御殿場を経由し富士山にいくつかある登山ルートのひとつ「須走り口」へ向かう車道へと入った。
何度も行った富士登山、その全てが富士宮口ルートだったため須走り口へ入るのは今回が初めて。広大な裾野のつづら折りの車道を登り続け、あたりをつけたポイントで車を停める。
特に目印もないが地図によればこのあたりが富士グランドキャニオン入口と思われる。

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道は深い森へ続いている。普段は薄暗い富士の樹林帯もこの季節は葉が落ちたため太陽光が差し込み明るい雰囲気。そんな山道を歩いていくと次第に周囲の地形が盛り上がっていくことに気が付いた。と言うよりいつの間にか自分たちが巨大な枯れ沢の窪地へと入り込んでいたのだ。


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そう、富士グランドキャニオンとは斜面を流れる水が、富士の柔らかい火山灰を深く削り取った巨大な谷のことなのだ。

この枯れた谷を登って行くとついに富士グランドキャニオンはその全容を現した。本家のグランドキャニオン(見たことはないですが)に比べたらあまりに小さな規模、さすがに言い過ぎだろうとは思ってしまうものの、それでも積み重なったスコリアが作り出す地層の美しい曲線に見とれてしまう。

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富士グランドキャニオンfujiCanyon01.jpg

砂漠のような場所にもしぶとく生息している植物に驚かされる。

それにしても富士グランドキャニオンは冠雪した初冬の富士から吹き下ろす風の通り道となり異常に寒い。風を防ぐ巨大な岩影に隠れながら麓で買った昼飯を食べはじめた。



落ち着いたところで改めて崖を見上げれば登ってみたくなるのが男心というもの。もちろん写真のような断崖は無理だが多少緩い部分を見つけたので軽量化を図り友人と挑戦。
初めは余裕で高度を上げていく。ところが次第に進まなくなる。足を踏み入れても踏み入れてもずるずると滑り落ちてしまう。2歩進んで3歩下がる。細かい火山灰で形成された崖にはまったく歯がたたず敗退。まるで無間地獄のような砂山にとある小説を思い出す。



それは安部公房の名作「砂の女」。とある砂丘の漁村で村人の罠にはまり砂に埋もれたアリ地獄のような家に閉じこめられた主人公が脱出を計るという集落マニアの自分にぴったりのストーリー。

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閉じこめられた家から地上まではわずかに数メートル。少し手を伸ばせば届きそうなわずかな距離、しかし流体の様な砂にまるで太刀打ち出来ず主人公は家の女と奇妙な同棲を続けることになる。砂はある意味監獄よりも頑丈なものなのだ。砂の恐ろしさを思い知らされた小説だったがこんな場所で実感できるとは・・・



ふもとに下りると冬の日は暮れ、先ほどまで中腹で悪戦苦闘していた富士山は巨大なシルエットになっていた。

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[了]
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