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●2012年9月某日/五島列島・福江島徘徊.01〜海を巡る〜

  • 2012/12/29 19:33
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期限切れ寸前の航空券を手に入れた。どこでもいい、急遽出かけなくては!
とはいえ休めるのは土日の二日間のみ。
真っ先に頭に浮かんだのは二年ぶりの北海道であるが土日で走るにはあまりにサイズが大きすぎる。
どこか適当なサイズの離島がないかと地図を見て思いついたのは長崎県の五島列島にある福江島であった。
そんなわけで急遽向かうことになった9月某土日の九州北部、五島列島は大雨予報。
天気図をにらんでも晴れる要素はまったくなし。
一時はいっそキャンセルしようとまで考えたものの
勢いで出発してしまった土日だけの二日間ばたばた旅。


photo:Canon eos7d 15-85mm


東シナ海に浮かぶ長崎県五島列島。15年以上前、軍艦島への旅の途中、廃墟となった教会を探しに野崎島という無人島へ渡ったことがあった。海の美しさと教会の荒廃ぶりに感激したが五島列島を訪れるのはその旅以来。今回の目的地は五島列島最南部の福江島に的を絞った。
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普段、自分の旅と言えば北海道でも海峡部分以外は基本、車で自走するスタイル。しかし今回は航空券というありがたいものがあるので最寄りの長崎までは飛行機となる。長崎港から福江島までは船で向かおうとまずは時刻表を調べたものの、ジェットホイルでも時間がかかる。このような悠長なプランでは土日だけの二日間、とても島内を回りきれそうもない。何か良い方法がないかと改めて地図を開くと長崎空港から福江島まで空路を示す細い線が引かれており、ORC(オリエンタルエアブリッジ)という会社が運航しているらしい。結局、長崎空港行きと福江空港行き、二つの往復便を贅沢に予約、当日を迎えた。


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九州は対馬海峡に停滞する秋雨前線の影響で金曜日から大雨が続いている。
長崎までの飛行機でも眼下は雨雲が作り出す厚い雲海が続き地表の様子はまったくうかがい知れない。さらに長崎空港到着後、ORC(オリエンタルエアブリッジ)便への乗り換えのためロビーへ向かうと目的地の福江空港が豪雨に見舞われ出発が大幅に遅れるという館内放送が流れた。雨どころか豪雨か。今回ばかりは晴れ男でも奇跡は起こせなかったか・・・と意気消沈する自分を乗せた福江空港行きのプロペラ機は定刻遅れでなんとか飛び立った。乗客は自分含めわずか3人。



プロペラ機は東シナ海上空に浮かぶ積乱雲を迂回しながら飛び続ける。気流が安定しないようで小さな機体が揺れ続ける不安定な飛行。豪雨の島で果たして何をすればよいのだろうかと落ち込みながら真っ白で視界のない機外を30分ほど見つめ続けていると突然雲が切れ眼下にいきなり緑の山とブルーの海のコントラストが美しい島が見えた。
この島が福江島であった。信じられないことに島の上空だけが晴れわたっている。プロペラ機は旋回しつつ高度を下げ着陸態勢に入る。


福江島空撮1209fukuejima001.jpg
福江空港のオリエンタルエアブリッジ201209fukuejima003.jpg


滑走路にぽつんと停車したボンバルディアDASH8。上空は先ほどの豪雨をもたらした城壁のような積乱雲にぐるりと取り囲まれていた。福江島到着を待っていたかのように滑走路に日が差し始めた。



空港到着後、予約してあったレンタカーを受け取ったもののろくに下調べもせず福江島へやってきたため特に目的地はなし。手元にはツーリングマップルのコピーと空港で手に入れた地図があるのみ。福江島に関する知識といえば島を舞台にした新田次郎の小説「珊瑚」を読んだ程度。明治時代、一攫千金を狙い珊瑚漁に命をかける男達と珊瑚バブル、その後の衰退が男女群島遭難事件の悲劇的な結末とともに描かれていた。そんなわけでとりあえず舞台となった海でも眺めようかと福江島南海岸を海に沿って西へと走り始めた。そのうち何か興味深いものでも見つかるだろう。



断崖上に作られた外周路。眼下の海を眺めながら時計回りに走り続け訪れたのが有名な高浜海岸。魚監観音と呼ばれる高台から海を見下ろせば確かに美しいビーチ。ガイドブックに必ず掲載されているのもうなずける海の色。しかし高浜海岸のさらに奥にちらりと見える入り江が気になって仕方がない。

福江島頓泊ビーチ1209fukuejima016.jpg

日が差し込むと水面の色が瞬時に変わる奥まったビーチ。これは行ってみるしかない。胸を高まらせながら高浜海岸の入り江にあるトンネルを抜けあたりをつけた場所へ向かってみると、そこには高浜海岸よりも遥かに透明度の高い遠浅の砂浜が広がっていた。先日訪れた八重山の海のような鮮やかな色。

看板によればここは頓泊ビーチと呼ばれる場所だという。9月とはいえまだ夏。雨予報が嘘のように晴れ渡る空と猛暑にもちろん海へ飛び込んだ。

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福江島頓泊ビーチ201209fukuejima002.jpg


それにしてもこの頓泊ビーチ、あまりに静かな場所。隣接する10棟ほどの民家があるものの人の気配は感じられず訪れる観光客も皆無。1時間ほどの間、頓泊ビーチで素潜りをしていたものの車一台、人一人現れない不思議な場所だった。しかし大の大人がたった一人で素潜り。逆に見られないでよかったのかもしれない。



そのうち猛烈に腹が減りはじめるた。腕時計を見るとすでに午後1時過ぎ。考えてみれば早朝セントレアで小さいパンをかじったのが最後。腹が減るはずだと車に戻り移動を始めるものの、どれほど走っても食料を補給できそうなスーパーはもちろん離島や田舎につきものの個人商店すら現れない。

空腹はさらに激しさを増し次第に運転も散漫になっていく中、ついに「遣唐使ふるさと館」と書かれた道の駅が目に入った。助かった!ここでパンかおにぎり、うまく行けば弁当あたりが手に入るはず、意気揚々と内部へ入り売店を物色する。
しかしこの道の駅、昼飯になりそうなものが何ひとつとして存在しない。販売されている食材と言えば魚の干物、あるいはまんじゅう。菓子パンも見当たらず、食堂らしき空間も閉まっている。あまりの空腹に耐えかねて土産物のまんじゅうを買ってを腹の足しにしようと思ったものの、リュックサックに登山用の非常食を常に入れていたことを思い出す。ザックの底からへしゃげたカロリーメイトの黄色い箱が転がりでてきた。ああ、カロリーメートがこんなにうまいとは・・・。

この場所、午後二時というのに1人の観光客の姿もない寂れた道の駅だった。とはいえここで島の詳細な観光マップを手に入れることができたのは大きかった。これで効率よく島を回れるはず。



島の北西の端にあった教会。先ほどの観光マップがさっそく役に立つ。誰もいない室内、静かにお邪魔する。内部も良いが外観もおもしろい。

福江島三井楽の教会1309fukueisland015.jpg
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コンクリートにカラフルなモザイクタイルが貼られた教会の外観。南米の街角にある教会のようだ。

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福江島で印象に残った場所のひとつ、それが三井楽という集落端にある柏崎から南下する海沿いの一本道。特にナビには表示されない道だったがいつもの癖で入り込んでみる。東シナ海に面した草原の中を走る道、離島とは思えない開放感。

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福江島レンタカー1209fukuejima011.jpg
渕ノ元キリシタン墓地01fukue26.jpg

時折草原にレンタカーを停めながら雰囲気の良い草原の一本道をのんびり走って行くとやがて道の果てに海を望む墓地が現れた。十字架のシルエットが逆光の海の海を背景に立ち並んでいる。後に調べると渕ノ元キリシタン墓地という場所だと言う。

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墓地から振り返ると福江島の北側に浮かぶ上五島方面は巨大な積乱雲の雲塊に覆われていた。雨予報だった今日の福江島、運良く晴れ間に入ったものの積乱雲に入った隣の島々ではどのような修羅場になっているのだろうか。



森に包まれた湾が複雑に入り組む福江島西岸。時折眼下に広がる海面は不思議な色をたたえている。夏の日本海のスカイブルーでもなく先日訪れたばかりの八重山のエメラルドグリーンでもない。吸い込まれそうな静かな深い緑。

長崎県五島列島福江島の海1309fukueisland005.jpg
長崎県五島列島福江島の海201209fukuejima001.jpg
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今回は今までの旅とは大きく違うことが二つ、一つ目は飛行機という手段を使ったこと。もう一つはまともな宿をとっているということだ。車中泊メインという普段の旅では珍しいことだが、車を持ち込めない離島なので仕方が無い。今夜泊まる民宿は福江島南西端の大宝という小さな集落にある。昼前レンタカー屋で島の外れに泊まるなんて珍しいねと驚かれた。福江島を訪れる観光客は市街地に宿泊するのだろうか。先日の石垣島でも島の果ての安宿に滞在していたが夜に飲みに出歩く事もないので、市街地よりも田舎の方が個人的には落ち着くのだ。



夕方と言ってもまだ明るい4時過ぎ、古い集落の先の海沿いに建つ民宿に到着する。観光です。と言うと釣りじゃないんですねと再び驚かれる。このような島の外れに泊まる客は海釣り目的なのだろう、皆大きなクーラーボックスや釣り竿を下げている。彼らと話すと皆一応に釣りじゃないんだね。という答えが返ってきた。民宿二階の海が見えるきれいな部屋に案内され重いリュックをどしんと降ろす。

福江島南西端の大宝1209fyukuejimatravel03.jpg

それにしても疲れた。5時起き、重いリュックを背負い飛行機乗り換え、休む間もなく炎天下泳ぎ回る。昼飯にいたっては食堂、商店は見当たらずカロリーメートのみ。宿の風呂で汗を流し、冷房が効いた部屋でゴロゴロしていると強い眠気に襲われた。




屋根を叩き付ける激しい雨音に目が覚めた。畳から起き上がり窓から外を見ると土砂降りの夕立ちが降り注いでいた。雨飛沫に包まれ白く霞む集落をぼんやりと眺め続ける。やがて雨雲は去り、再び晴れ間が広がった。夕立ちによって先ほどまでの猛暑が嘘のように涼しくなる。昼寝と気温の低下で体力も復活、夕飯までまだ間があるというので福江島西端にある大瀬崎という景勝地を訪れてみる事にした。

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大瀬崎は東シナ海へと突き出た半島の先端にある。宿がある大宝集落から車で片道15分くらい。峠道を回避する新しいトンネルができていたため予想よりも早く到着した。迫力ある断崖を見下ろす大瀬崎展望台に腰掛け夕焼けを待つ。しかし晴れ間もつかの間、日没時間が近づくにつれ空は西から流れてきた雲に次第に覆われていく。東京から訪れたいう今日会った唯一の観光客と話しながら雲が切れるのを待ち続けるも残念ながら夕焼けを望む事はできなかった。

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とはいえ出発前、飛行機をキャンセルしようとまで考えた絶望的な雨予報から一変、島は日中、好天に恵まれ遊び回ることができたことを思えば幸運だった。明日も福江島は雨予報、この幸運が続くのはさすがに無理か。

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日が暮れた道を走り、宿へ戻ると立派な夕食が用意されていた。そうだ今夜は素泊まりではなく一泊二食付き。夕飯もおいしく量も多い。とても親切で良い宿だった。今後、旅する都度、宿泊が癖になってしまいそうでちょっと怖い。



夜、静まりかえる集落を徘徊していると大粒の雨がバラバラと降り始めあわてて宿へ避難。部屋のテレビで天気予報を見れば明日は九州全域でさらなる大雨が予想されるという。

[続く]

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