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●2013年8月某日/八百津発電所跡見学記。

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空撮写真をスクロール中偶然見つけた廃校らしき怪しい建物。
とある夏の日、この建物を探しに長野南部の山岳地帯目指し出発した。
しかし毎度のことながら寄り道が多くなかなか進まない。
果たして時間内に辿り着けるのか。
まずは最初の寄り道、八百津発電所跡見学記


photo:Canon eos7d 15-85mm


幼少期欲しかった空想グッズのひとつに限りなく拡大できる地球儀というものがあった。
見た目は直径30cmほど変哲もない地球儀、しかし顕微鏡で覗けば近所の家まで見分けることができる超精密マップ。現実には拡大すれば印刷モアレが拡大されるだけだが、この夢は近年思わぬ形で実現することになった。それがGoogleマップ、Google Earthを初めとするWeb Mapの急速な進化。拡大縮小移動、まるで神になったかのごとく意のままに地球を操ることができる。



そんな空撮写真をスクロールしながら画面上でさまようのが好きだ。深い山中に現れる秘境集落。用途不明の施設。山中の一本道を画面上でたどっていくと思いもよらぬ発見をすることもある。今回も深い山中に不釣り合いの広場を持つ怪しい建物群を見つけた。

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プールらしき場所が映し出されていることから学校であることは間違いない。さらにMAP上に表示されるはずの校名がないということは現在は使用されてはいない、つまり廃校。木造校舎らしき建造物も確認できるが検索をかけても何もひっかからないので現地へ出かけてみることにした。場所は長野県の山間部の山村となる。



AM11:05。八百津発電所。岐阜県八百津町を流れる木曽川に面し建つ発電所跡。近くを通りかかったので立ち寄ってしまった。この発電所、40年ほど前に操業は停止されている。とはいっても廃墟ではなく現在も一般公開されている施設。8年前に一度訪れたことがある。

駐車場から木曽川に向かって階段を下り発電所本体の古びたドアを開けるも中に人の気配はない。かすかに届く機械音を頼りに回り込んでみると草刈りをしていた男性が気がついたようで走ってきた。



八百津発電所内部。巨大な空間の中心には重量感を感じる発電機器が鎮座している。

八百津発電所の発電機201308yaotsu0002.jpg

八百津発電所の発電機1308yaotsu031.jpg

発電所内観は白く塗られた壁のせいか窓から入り込む自然光が拡散し明るくさわやかな雰囲気。笹間渡発電所跡、あるいは先日訪れた富山県の発電所跡美術館、内壁を白く塗装するのが発電所の主流なのだろうか。酷暑の屋外とはうってかわりひんやりと涼しい空間。

八百津発電所の窓枠201308yaotsu0001.jpg
八百津発電所201308yaotsu0004.jpg


中央に規則正しく並ぶカタツムリの殻のような渦をまいたオブジェ、これが水力発電の核となるフランシス水車。10キロほど上流でせき止められた水は地中に敷設された水圧鉄管と呼ばれるパイプの中を通り発電所の真上まで送られる。
落差を利用し水圧鉄管の中を猛スピードで落下してきた高圧の水は水車内を一周、内部のプロペラが回転し発電が行われるわりと単純な構造だ。よく見れば発電機とカタツムリが太い軸で繋がっているのがわかる。

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水車のプロペラに同調している発電機の軸が回転すると、コイルに電流が流れるという仕組み。風力発電に代表されるアナログなものから原子力発電まで動力は違えどプロペラが回され発電するという根本的なこの仕組みは変わらない。

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理論上は単純に思える発電の仕組み、だが現実に運用するのはなかなか難しいようで設置当初、このカタツムリが水流に耐えきられずに破裂してしまったことが何度かあったそうだ。
それだけ高所から落下する水の圧力は強いものなのだろう。竣工当初はフランシス水車初め発電機器のほとんどが輸入製だったという。当時の我が国にはこういった複雑な機械を作る技術力はまだなかった。明治時代のことである。



さて続いては先ほど通り過ぎた川辺に発つ発電施設へ向かってみよう。ゆったりと流れる木曽川の湖畔に立つこの廃墟、その優雅な姿はまるでライン川のほとりに建つヨーロッパの古城のようだと大げさな妄想をしてしまう。


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古城へ続く古びた階段を下ろうと思ったもののルートは封鎖されているようで門が閉ざされていた。するとのぞき込んでいた自分に気が付いたのだろう、再びやってきた管理人の方からに見ますか?と聞かれたので即答。事務所まで鍵を取りに引き返し門を開けてくれた。



朽ちた橋のような通路眼下には水草がびっしりと密集するよどんだ沼。こんなところには絶対に落ちたくはない。古城の古びた扉は簡単に開いた。

この古城、実は放水口発電所という小規模な発電施設。その名の通り先ほどのメインの発電所内で発電機を回転させ、役目を終え川へ戻される水を再利用するために設置された発電施設。後付といっても管理人の話では大正時代のもので、まもなく建設から100年になるそうだ。確かに老朽化は著しくいつ崩れてもおかしくない、閉鎖も仕方がないところ。

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何年かぶりの八百津発電所、相変わらず興味深く昼を大きく回ってしまった。ようやく当初の目的地の廃校らしき建物へと出発することにした。車に戻ると炎天下放置された車内はやけどしそうな熱さ。近所のスーパーで昼飯を買い込み八百津の街をあとにした。
廃校は積乱雲湧き出る広大な恵那山の向こう。中央道へ乗ると恵那山トンネルを抜ける。到着はいったい何時になるのだろうか。いやそもそも廃校自体存在しているのだろうか・・・。

[続く]
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