●2013年9月某日/沖縄.座間味島へ.01〜無人島嘉比島編〜
- 2013/10/25 22:40
- Category: 旅

はじめての一人旅が沖縄だった。高校生の時だ。
その後、事あるごとに離島を中心に訪れてた時期があったものの気がつくと次第に足が遠のいていた。
ところが昨年久しぶりに訪れた沖縄に頭がクラクラしてしまい
今年も漠然と沖縄行きを考えていた際、頭に浮かんだのが東シナ海に浮かぶ慶良間諸島だった。
今から10年前、2003年夏。
孤島南大東島へと渡る船の欠航が1週間近く続き那覇で缶詰となっていた日々のこと。
運行状況を調べに今日も訪れたフェリーターミナルで
またも欠航との表示に意気消沈し引き上げようとした自分の目を引いたのもの、
それが薄暗いターミナルに張られた色鮮やかな慶良間諸島の観光ポスターだった。
こんなに綺麗な海があったのか。
PLフィルターを駆使し海の透明度と濃度をさらに高めたその空撮写真に衝撃を受け
さっそく翌朝、同じターミナル内のブースで慶良間行きチケットを衝動買い、
訪れた阿嘉島で海の美しさに感激したことがあった。
あの感動をもう一度というわけでもないが今回は再び慶良間に向かってみることにする。
昨年の八重山旅は過去の気象データをにらみ梅雨明け日を逆算予測し
三ヶ月前には飛行機の予約が完了、出発日の二日前に見事梅雨明けという
素晴らしく緻密なスケジュールとなったのだが今年は思いつきということもあって、
具体的に計画が動き始めたのは出発日直前だった。
島での滞在中はほとんど海に入っていたので写真もろくに撮っていない。
写真自体も同じような海面の写真ばかり。

photo:Canon eos7d 15-85mm
10年前の行き先は慶良間諸島のひとつ阿嘉島だったが、今回は隣に浮かぶ座間味島を目的地に定めた。
夏の沖縄旅はいつも台風との戦いでもある。台風が島に接近しただけですべての航路、空路は欠航、行程、計画は破綻してしまう。今回も天気図と衛星写真を睨み日程を決める。
先週末は台風15号の影響で沖縄離島航路はすべて欠航だった。しかし15号さえ通過してしまえば最低一週間は好天に恵まれるはず。幸い低緯度のマリアナ近海には台風の卵となる雲の塊は存在せず一週間後は間違いなく好天だろう、と調子に乗っていたら15号の落とした雲が集合し、八重山近海で前触れもなく台風17号が産まれてしまうという事態となってしまった。
この緯度で台風が発生するとは予想外。こうなったらダラダラせずに発達して、出発日までに通過してくれと祈るも、予想気圧配置ではこの台風、しばらくの間日本列島南岸に停滞するというではないか。停滞されたら沖縄は雨か曇り、そもそも船は欠航で島すら行けない。
しかし高層天気図を見れば上空の風は強い。この予想は当たらないだろうと強気に荷物の準備、宿の手配。結局台風17号は出発前日に鹿児島で今年の初上陸台風となると、予想通り足早に去って行った。

というわけで空港へ。台風が過ぎ去った空は抜けるように青い。那覇行きの飛行機は夕方早めの便である。那覇空港に19時頃到着予定、これは那覇市内で観光でもと考えていた矢先館内放送が流れはじめた。
「00時00分の那覇行き000便は・・・」 ん?予定の便か。アナウンスは続く。「機材のやりくりがつかず今のところ出発時刻は未定です。」


時間をもてあまし展望台からひたすら飛行機を眺め続け数時間が過ぎ去った。やがて日は沈み空港は水銀灯の明かりに包まれ、アナウンスの度に出発時刻は延期されていく。
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10年ぶりの那覇着。結局那覇市内のビジネスホテルに到着したのは夜23時過ぎであった・・・。
観光どころではなく明日に備え即座に寝るしかない。

●2日目 AM7:30
沖縄本島周辺に多数点在する小島へのフェリーのほとんどは「とまりん」と呼ばれる、那覇泊港フェリーターミナルから出航する。
昔この場所に入居する大東海運を何度も訪れたものだ。懐かしい風景。本日出航する座間味島行きの高速船クイーンざまみのチケットを購入する。張り紙によれば例の台風の余波でしばらくの間欠航が続いていたようだ。

10年前、慶良間に向かった際にはとまりん正面だったフェリー乗り場。しかし高速船乗り場はなぜか離れた埠頭にぽつんとたつ古びた建物。あらかじめ調べておかなければ迷っていたところだ。眠い頭でとぼとぼと埠頭を歩いていく。
乗り場を間違えたのか、出航定刻を過ぎているというのに大慌てで走ってくる観光客が多い。船の方も辛抱強く乗客を待っているようで結局埠頭を出航したのは定刻を15分以上過ぎた頃だった。


目の前で転回する久米島に向かうフェリー。平べったい高速艇と比較するとあまりに巨大だ。
クイーンざまみは外洋に出た途端、スピードを上げ海面を飛ぶように進む。狭い座席にも飽きたので揺れる階段をよろめきながら登り甲板へ出てみるとそこは足の踏み場のないほどの乗客であふれていた。上部甲板の揺れはさらに激しく左手で手摺りを握りしめ、左右に揺れる身体を支えながらながらカメラを構える。


船体下部の船室の方が重心が低く安定しているのだろう。海には特に白波も立っていないのにここまで揺れるとは思ってもいなかった。
両足の間に顔を埋めじっとしている人たちは船酔いだろうか。自分はといえばここ10年以上船酔いには縁がない。以前は大東島航路や五島列島航路でひどい船酔いにかかったことを考えると、マリンスポーツで波に揺られることに慣れたことが影響しているのかもしれない。
やがて緑が鮮やかな慶良間群島が近づき内海へと滑り込むと揺れは嘘のように収まった。

クイーンざまみは途中白砂が美しい多数の小島の脇を通過していく。
地図と照らし合わせるといずれも無人島のようだ。


座間味港。那覇から1時間ほどで到着した。高速艇から降りた直後は多くの乗客で喧噪に包まれていた港だったが、皆どこかへと消え去り五分ほどで再び静寂に包まれた。無人の岸壁には波が打ち付ける音が響くのみ。
近くの民宿に到着後、重いリュックをおろすとまずは先ほど見た無人島に行ってみたいもの。幸いなことに先ほど港の近くで渡船をやっているという親父に偶然出会い電話番号を聞いていたので、電話してみるとすぐに船の用意はできるという。水着に着替え身軽になると再び徒歩5分ほどの港へと引き返す。
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待っていた渡し船に乗り込み無人島へ。座間味島港の周辺には三つほどの無人島が浮かんでいる。今回はどの無人島を訪れるべきか・・・。安室島は大きすぎ島っぽさが感じられそうもないのでパス。安慶名敷島はこの時間帯、潮の流れが悪いという。というわけで嘉比島(がひじま)へ渡してもらうことにする。
嘉比島は先ほど高速船の甲板から偵察し、灯台の存在が少し気になった島。ちょうど干潮の時刻のようで渡し船は係留された岸壁を一旦離れると砂浜へ乗り上げた。じゃぶじゃぶと乗船。

いよいよ出航。
座間味港内にある鯨のモニュメントを横目に船はぐんぐん加速する。


やがて砂浜が白く眩しい嘉比島が近付いてきた。予想通りいい感じに小さく、いかにも無人島といった雰囲気で期待が高まる。

島に近づくにつれみるみる変わっていく水面の色にあっけにとられているうちに船は砂浜へ乗り上げた。
一旦はそのまま島へ飛び降りようとするもあまりの陽射しの強さに恐怖を覚え、渡し船に積んであったパラソルをレンタル。その他にもなにかとレンタルしたものの精算時にいろいろと値引いてくれとても親切な方だった。


嘉比島島では渡船でレンタルしたシュノーケルセットを装着し延々と潜り続ける。
同じ様な写真ばかりで申し訳ないが泳ぐ以外にやることはないのだ。




嘉比島は無人島と言っても自分たちの他にも同じように渡船でやってきた5人ほどの先客がいるし、沖合にはシュノーケルツアーらしき船が何隻か停泊しているすこし賑やかな感じの島。

横にいた白人カップルの片方はひたすら寝続け、もう片方はひたすら読書。かつてバックパッカーとして海外を旅していた時にも感じたが不思議な事に白人の多くは海で泳がない。ひたすらビーチの木陰で本を読み、飽きるとそのまま寝る。透明度の高い海で泳がないなんてもったいない、と自分のような貧乏バックパッカーは思うわけだが、美しい風景を背景にくつろぐと言うことが彼らにとっての贅沢なのかもしれない。
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嘉比島に上陸し数時間。さすがに泳ぐことに飽きたので島内を探検してみることにした。とりあえず時計回りに島内を回ってみる。遠くから眺めると、とるにたらない小島だが歩き出すと意外に大きいことに気がついた。南側は砂丘のような砂山がどこまでも続いてる。しばらく真っ白な砂の上を歩き続けたもののあまりの暑さに引き返す。

海岸線を歩いただけでは島の全容をうかがい知ることはできない。やはり高台を目指さなくては。
幼少期好んで読んだ無人島小説、ロビンソンクルーソーや15少年漂流記(二年間の休暇)、神秘の島、あやうしズッコケ探検隊の主人公達も無人島に漂着後、例外なくまず行ったことは島の最高部を目指すことだった。高台から島の全容を把握することによって島か大陸か、無人か有人かを知ることができるのだ。
先ほど船上から眺めた灯台ならば見晴らしも良いだろうし管理用の道もあるだろう。ということで北海岸へと戻り今度は反時計回りに歩きながら山頂にある灯台を目指す。幸い干潮時間にあたったため海水が大きく引き露出した濡れた岩場を進んでいく。
やがて岩場の向こうにかつての桟橋のような人工物が見え始めた。朽ち果てた感じが魅力的なコンクリート。

この構造物を渡りきると階段のようなものが現れた。この道をたどっていけば山頂の灯台へとたどり着けるだろう、と歩き始めたのもつかの間、次第に道を覆い始めた植物によって数百メートルほど進んだところで行く手が阻まれてしまう。
ここまで来ながら引き返すのも勿体ない。草をかきわけ廃道らしき踏み跡を前進し続けるもソテツのような尖った葉が多く、むき出しの足が傷だらけになってしまった。
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ようやく茂みを脱出。視界が開け振り返るとそれなりに登ってきた。眼下に先ほど伝ってきた橋が見える。

やがて行く手に目的地の嘉比島灯台が見えた。ここからは草むらもなく道もまっすぐだ。迷いようがない。



ようやく嘉比島最高地点にある灯台へと到達した。沖縄の空にそびえる真っ白の灯台が目に眩しい。山頂を吹き抜ける南風が汗ばんだ体を冷やしていく。
眼下を見下ろすと思わず足の痛みも忘れてしまうほどの絶景が広がっていた。座間味島、阿嘉島、蒼い海。そして台風が残して行った遥か上空の巻雲。


ぐるりと周囲を見渡すと当たり前だがやはりこの島は無人島。渡船の迎えがなければこのまま置き去りである。
小説の主人公が無人島で感じた絶望感もこんな印象なのだろうかと、暇なのでくだらないことばかり考えてしまう。とはいえこの嘉比島、上記小説のような絶海の孤島ではなくわずかの距離に座間味島を望み、対岸には時折走る車の姿も望むことができる。声はもちろん届かないものの電波は入る安心の無人島。

その後も先ほど傷つけた足が海水にしみるのを我慢しつつで潜り泳ぎ続け、もちろん渡船は時間通りに迎えに来てくれた。
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夜、宿の連中と座間味港まで星を見に行く。


寝ころんだアスファルトは昼間の余熱を残しまだ少し暖かい。背中に温かみを感じながら少しひりひりする足を夜風に当てだらだらと夜空を見上げ続けた。
[続く]
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