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●2013年12月某日/アルプスを望む廃校/明治の廃校

  • 2013/12/18 20:43
  • Category: 廃校
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この冬一番の冷え込みとなった12月初旬のある日、
空白地帯だった長野県北部の廃校地帯を探索することとなった。
校庭で出会った地元の方に内部を見学させていただくことができた山の果てにあった廃校、
明治期の廃校、二つの木造校舎を紹介。


photo:Canon eos7d 15-85mm
※本記事は訪問時のものです。現在の状況は異なっている可能性もあります。



[アルプスを望む廃校]

冬の夜明けは遅い。まだ明けぬ闇の中、走り続けた道はやがて峠へとさしかかる。夜明けが近付くにつれ気温は低下し車載温度計は0度を下回った。試しに車の窓を開けてみると身を切るような冷気が流れ込んでくる。
それでも次第に東の空はしらみはじめ夜は明けた。こんな冷え込んだ朝は間違いなく好天になるだろう。

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ところが予想に反し周囲は深い霧に覆われ始めた。霧はさらに濃度を増しめ視界はわずか数メートル。どこまで走っても切れる気配がない。盆地に張り付く朝霧なのだから9時を回れば晴れるだろうと高を括っていたのたものの10時近くになっても続く濃霧にさすがに不安を覚え始めた。



午前11時前。しつこい霧からようやく抜け出すことができた。付近のコンビニ駐車場で今後のルートを検討、冠雪した北アルプスを間近に望む県道12号を北上していく。

山岳集落マニアとしては時折現れる集落も魅力的。集落では判で押したかのように、たわわに実り枝をしならせた柿の木が現れる。はるか昔、住人たちが保存食として植えたものだろうか。現在は食用とする人もいないのか多くの柿が路面に落下しているためタイヤが滑らないよう慎重に通過していく。

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いくつかの集落を通過、ようやくのことでひとつ目の目的地、某廃校が近づいて来た。昼が近づくにつれ気温も上昇、早朝の冷え込みが嘘のようにポカポカと暖かくなってきた。陽射しが差し込む車内も12月とは思えない程暑いので窓を全開にして車を走らせる。



山道を進んでいくと見え始めた古びた建物、目的地の小学校跡に到着。裏手の坂道を登り草に覆われた広場へ。

長野県の廃校御山里小学校1311naganohai01.jpg
長野県御山里小学校1311naganotuika01.jpg

美しい木造二階立ての校舎と立派な松の木がそびえ立つこの廃校、立地も見事。
地形図を見るとすでに標高は800m近く。山が連なる斜面では建設用の平地もなく尾根を削り取り土地を作ったのだろう。北側以外の東西南は景色が大きく広がる開放的な立地となっている。

御山里小学校1311naganotuika02.jpg

校庭からは冠雪した北アルプスを望むことが出来る。時間の経過と共に太陽の位置も次第に西へと移動し北アルプス方面は逆光状態となっていた。

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再び山々が延々と続く山道をのろのろと進みあたりをつけた地点に到着。見渡すと広場のような平地があるので校庭跡に違いないと車を乗り入れた。

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しかし奥に見える肝心の校舎らしき建物、廃校にしては妙に新しい。場所を間違えたのかと思いながら車を降り看板を読むとかつての校舎は新たな施設に生まれ変わったと書かれていた。解体されたのが割と最近の事だというから落胆は大きい。


[明治の廃校]

紅葉に包まれるダム湖岸。長野では既に冬間近、紅葉も残すところあと数日余りだろう。
その時ダム湖対岸に見えた廃校を思わせる古びた木造建造物。直後、ダム湖を渡る橋が現れた。かなりのスピードで流れる車列、右折する余裕はあるかとバックミラーを見ると幸い後続トラックとの車間は開いている。対向車もなし。即座に右折を決意、橋へと滑り込んだ。

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橋を渡った対岸で脇道に車を乗り入れるもののいずれも見当違いな方角へ向かう道ばかり。目的地から離れていく一方なので車での訪問を諦め徒歩で建物を目指す。路地を抜け、あぜ道に足を取られながら歩いていくと人道に突き当たった。斜面に刻み込まれた坂道を登り切ると空間が広がりその奥に先ほど見えた木造の建物が残されていた。

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西日があたる対岸とは対照的に、冷え込んだ建物周辺。見渡すと白い看板が片隅に設置されていることに気がついた。読んでみるとこの建物はやはりかつての学校、入口付近には「見学する方は割れたガラスに気を付けてね」と手書きの張り紙がされており廃校見学も可能のようなので内部を探索。

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散乱するガラスの破片に注意しながら古びた階段を上ると教室が三つ。室内には等高線を再現した集落模型が残されていた。ジオラマにはダム湖が再現されている。隣接するダム竣工は1950年代というからそれ以降に作られたものだろう。



そんな中、時代を遡るものを発見した。教室の隅の床に転がる額縁。ちらりと見えた肖像画のようなものが気になり近寄ってみると威厳のあるヒゲの男性、もしや明治天皇でのお姿ではないか。

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よくよく眺めるとやはり明治天皇を中心にした皇族の肖像写真のように見える。かつて学校に御真影と呼ばれる天皇の写真が厳重にされてれていたのは有名な話。見つけたものが御真影かどうかではさだかではないものの、さらに時代を遡ってしまうことになった。



「見学下さい」の看板によれば学校が設立されたのは明治のこと。大正になって現在の木造校舎が建設されたという。長い歴史を持つ小学校、来年は竣工100年という記念すべき年でもある。その節目の年をわずか1ヶ月後に控えながら廃校は森の中で朽ちるに任せていた。

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[了]





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