●2014年5月某日/海、山、川そして廃校。初夏の尾鷲徘徊。
- 2014/08/22 22:31
- Category: 廃校

年末に行った紀伊半島廃校探しの途中【LINK】、その奥深さにはまってしまった三重県尾鷲周辺。
深い紀伊山地と複雑なリアス式海岸が独自の風景を作り出す、
尾鷲熊野周辺の海山川を巡った適当なドライブ記録。
photo:Canon eos7d 15-85mm
訪れる度に南へと延び続けついに尾鷲まで開通した紀勢自動車道によって予想時間よりもかなり早く到着。
「海山(みやま)」というおもしろい名前の真新しいインターで高速を下りる。
今回の徘徊にぴったりな名前。今日はこのあたりで川や海、廃校、神社、さびれた漁港をめぐるつもり。とはいえ広い紀伊半島。はたして予定地すべてを回りきることができるのだろうか・・・
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深い谷間を流れる銚子川支流に沿って作られた林道を走り続ける。
時折視界が開けると木々の隙間から美しい清流を望むことができる。上流にダムがあるとは思えない透明度の高い水中にはのんびりと流れに身を任せる魚影も多数確認できる。
渓流沿いの林道を走ることが多いが、水質がきれいな箇所に限って川面へ下りる道がないのが玉にキズ。ところが今回はうまい具合に水面まで下りることができそうな箇所を見つけた。ガードレールを乗り越え崖を伝い一枚岩が続く川辺へ下りるとひんやりと冷たい水に足をつけしばし川遊び。



渓流を抜け出すと完成したばかりの熊野尾鷲道を走り抜けやってきた波田須の集落。
川から一転眼下に広がるのは熊野灘。そんな海を見下ろす高台に民家が点在している。前回の訪問時、回りきることができなかった廃校探しを行おうとやってきたものの苦労することなく即座に見つけることができた。道路沿いから続く古びた石段を登り校庭に立つ。
廃校となった波田須小学校は傾斜の多い集落の貴重な平地に立つ平屋の木造校舎だ。廃校と言っても閉鎖されたのはまだ10年ほど前、校庭や建物は整備され、現役ではないことを示すものといえば朽ち果て破れ始めたカーテンくらいだ。このカーテン、なんだかハロウィンのお化けの顔に見える破れ具合。そんな廃校の校舎裏へと登ってみると輝く海を望むこともできる開放感あふれる学校跡だった。


現在地波田須から二木島湾にある阿古師神社を目指し複雑な海岸線をトレースしながら北上していく。阿古師神社、年末に高台から俯瞰して以来どうしても訪れたかった場所のひとつだ。当時は高低差を往復する時間もなくスルーしてしまった。
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尾鷲から和歌山まで続く紀伊半島横断道のひとつ311号線は時折現れる小さな漁村をいくつも通過していく。
そんな漁村では長大トンネルを掘削することによってこの難所を打破した紀勢本線の無人駅、廃校らしき鉄筋の古びた校舎が決まって現れる。リアス式のくぼみ部分に点在するこれらの集落、かつては陸の孤島と呼ばれてきたものの、近年開通した熊野尾鷲道よってアクセスが劇的に改善された。とはいえ途中の新鹿海岸で遊んだりと車は遅々として進まず気がつくと昼を回ってしまう。


国道311号は尾鷲沿岸では極端な姿を見せる。上記写真のバイパスのような広大な車線が続く、のもつかの間、突如車線が消滅し防潮堤と民家の隙間を抜ける、対向車が来たらお手上げの国道とは思えない道へと変化したりとある意味変化に富んだ道路だ。
一方山に目を向ければ芽吹いたばかりの新緑に覆われた光景が続く。
そんな山に向かって伸びる道路を走っていると、まるでふかふかとした森の懐に飛び込んでいくような錯覚を覚えてしまう。秋の紅葉にはあまり興味がわかないが清涼感溢れるこの季節がとても好きだ。
やっとのことで目的地の神社が近付いてきた。暑さの中、高台の駐車場から急登を延々と往復する気にはならないので出発前、空撮写真で近道のあたりをつけておいたのだが果たして存在しているのだろうか。

阿古師神社、無事本殿に到着することができた。
神社巡りの詳細はこちらで→【LINK】

神社の目の前は予想通り高い透明度の二木島湾が広がっていた。白砂の海底を泳ぐ魚。初夏の日差しが降り注ぐ静かな鳥居。振り返ればうっそうとした原生林に覆われた薄暗い本殿。まさに聖地。
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こちらも半年ぶりに訪れた海沿いの某集落。その最も奥に廃校が残されている。年末にこの漁村を訪ねたのは紀伊半島でも冠雪を観測した冷たく凍えそうな朝だった。
一転して初夏。暑い。急斜面に民家が張り付く集落に作られた急傾斜の石段のを一歩一歩登っていくと汗が噴き出していく。

最後の古びた石段を上り開け放たれたままの門を抜けると校庭が現れた。半年前の早朝、白い息を吐き登った先に広がっていた霜にびっしりと覆われ凍りついた校庭は、眩いばかりの緑の芝に覆われている。木漏れ日が緑の校庭に降り注ぐさわやかな光景に思わず暑さを忘れてしまう。
静まりかえった山の上の校庭へ村人達の声が風に乗って届いてくる。見下ろしてみると遙か眼下に見える漁港は干物をつくる地元の人々で賑やかだ。



崩れ落ちそうな廃校の建物は半年前と何も変わることなく季節だけが巡っていく。以前校庭で出会った地元の方と話したところここは正確には廃校ではなく休校なのだそうだ。
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海山川を巡ってきた今回の徘徊もこの廃校で時間切れ。さらに予定していた尾鷲郊外の廃校や古びた漁村巡りはかなわず。結局、予定していた場所の半分ほどしか訪れることができなかった。続々と高速道路が開通していくとは言え紀伊半島はまだまだ広い。
[了]
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