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●2014年8月某日/大阪市内の秘境駅、木津川駅再訪。

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2013年1月、車窓から偶然見えたあまりの荒廃ぶりに衝撃を受け
あわてて途中下車した南海汐見橋線の無人駅、木津川駅。→LINK
大阪市都心にあるとは思えないその秘境感にいつか再訪しようと心に決めていた。
あれから1年半。今度はまともなカメラで再び訪れることができた。
当時と比べいろいろと変化していたので前回のコンデジ写真と見比べながら観ていこう。


photo:Canon eos7d 15-85mm
※本記事は訪問時のものです。現在の状況は異なっている可能性もあります。


前回この駅を訪れたのは雪が舞い散る真冬の日、凍えそうになりながら駅周辺を徘徊した。うってかわり今日の大阪はうだるような暑さ。まとわりつく都会特有の不快な湿気を振り払いながら始発駅を目指す。人並み溢れる大阪有数の繁華街、難波から地下鉄千日前線でわずか1駅。始発となる南海汐見橋駅に到着した。

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南海汐見橋駅構内の古い路線図1408kizugawast02.jpg


かつてひび割れ薄汚れていた汐見橋駅の外壁はこの一年ほどの間で塗り替えられたようで白い壁面が夏空にそびえどこか明るくさわやかな印象へと変化していた。とはいえ構内に張られている時代を感じさせるボロボロに朽ちた路線図だけはそのままの状態だ。


目的地まではわずか2駅。料金150円。出発までしばしホームで列車を待つ。
1年半前、無人の木津川駅で衝撃を受けた悲壮感溢れるあの光景はまぼろしだったのではないか。こんな天気の良い日は賑わっているのかもしれない。そんなことを考えているとようやく始発となる電車がホームへと滑り込んできた。冷房が効いた心地よい車内を見渡してもは自分の他に乗客の姿はまったく見当たらない。

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やがてドアが閉まると電車はゆっくりと動き始めた。いよいよここから旅が始まる。と思ったのもつかの間わずか数分で到着を告げるアナウンスとともにドアが開きこの旅の終わりを告げた。



1年半ぶりに南海木津川駅のホームへおりたった。真横を阪神高速が走る古びたホーム。もちろん無人駅だ。
他の車両から降りる人間もは誰一人として存在せずこの空間に立つのは自分一人。

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秘境駅木津川駅ホーム1408kizugawast05.jpg

草むした軌道を挟んで反対側には白い駅舎が立っている。あいかわらずレトロな雰囲気を醸し出す駅舎だ。
年末は木津川渡船巡りへ向かう途中車窓からこの光景を目撃しあわてて予定を変更、途中下車したのだった。

しかし何かが違う。
前回、レトロさはもちろんそれ以上に目を引いたのが悲壮感まで感じてしまうほど荒廃していた木津川駅だったものの今回はそこまでの悲壮感はむしろ感じない。いったいなぜだろう。
帰宅後、前回の写真を見比べその違和感の原因が判明した。外壁が再塗装され、さらに駅名看板が消滅していたのだ。特に文字が判読不可能なほど真っ赤にさび付いた駅名看板が取り外されたことが印象を劇的に変化させた一因だろう。
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線路を渡り無人駅へと足を踏み入れる。薄暗くひんやりしたコンクリート造りの駅舎内には相変わらず動いているのかどうかわからない古びた自動改札機が。おそるおそる切符を差し込むと時間が止まったかのような駅の雰囲気に似合わぬ早さで瞬時に作動、切符が吸い込まれると同時に扉がバタンと開き木津川駅前に放り出された。





木津川駅前に立つ。
駅舎から一歩足を踏み出すと駅前はいきなり未舗装の砂利道だ。今時林道なんかでもダートは貴重な存在だというのに都心でこの有り様とは。白い砂利が真夏の日差しを反射し強いコントラストを作り出す。砂利上に無造作に散らばる黒いマットは電車に乗る前に靴の埃を拭き取ってくれという意味なのだろうか。
駅舎横に目を向ければ繁殖する植物に飲み込まれつつある数台の自転車が放置されている。
決して郊外の田舎駅ではなく賑わう大阪難波からわずかの距離に存在しているとはとても思えない光景と静けさがとても魅力的だ。まさに都心の秘境駅。

都心の秘境駅木津川駅外観1408kizugawast10.jpg
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前回訪問の際にはまったく人の気配がなかったこの駅、今回普通に賑わっていたらどうしようと心配していたのも杞憂だった。真夏だとい言うのに蝉の音も響かず静まりかえっていた駅前にはあいかわらず人気は無い。

駅舎はアーチ部分を初めとする意匠へのこだわりも随所に見受けられ、かつては重要な駅だったであろうことを予想させる形状だ。それなのに今はなぜこんな有り様になってしまったのだろうか。それでも以前は錆びついていた駅前側の駅名看板が新品に取り替えられているところを見ると時折手入れはされているようだ。

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今度は逆に駅前へと目を向けてみよう。

通常都会の駅ならば改札を抜けた利用者の目の前に広がるのはターミナル、あるいは駅前商店街あたりだろう。

ところがこの木津川駅では改札から一歩出たるとまず目に飛びこんでくるものは覆い茂った草原と錆びた工場がそびえる下記の光景だ。この風景だけでもなかなか衝撃的な光景ともいえよう。しかし先ほどの駅舎と同じく昨年と感じた悲壮感と比べるとどこかさっぱりとした印象をぬぐえない。鮮やかな夏と枯れた冬、印象が大きく変わる二つの季節の違いはあるとは言え、最も大きな原因は下の写真を比べてみると一目瞭然。

【after】
秘境駅木津川駅の駅前1408kizugawast08.jpg
【before】
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前回訪れた際は、足の踏み場のないほど投棄されたラジカセや段ボール、家庭ゴミ袋などが散乱し立ち入ることすらできなかったこの駅前広場は見事に清掃されていた。用途不明の木造小屋だけはそのまま残されているものの目の前の木が切り倒されことによって開放感溢れる印象へと変わった。

【after】
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【before】
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また工場へ続く一本道も大きく変化してた。かつてはゴミや生い茂るセイタカアワダチソウをはじめとする雑草によってまるで獣道か廃道のようだった通路は行く手をふさぐゴミはもちろんのこと、植物も伐採された。さらにはアスファルトも敷き直され本来の機能である通路が確保されている。手を加えたことでここまで雰囲気が変わるのもだと驚かされる。

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しかしここまで気合いを入れて清掃されたというのに正直レベルを感じさせない壁面のグラフィティアートだけはなぜか消されずにこのままの状態なのが少し謎だ。壁面は工場私有地、つまり管轄外ということなのだろうか。


秘境駅木津川駅線路1408kizugawast13.jpg
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静まりかえった木津川駅前に突如甲高い音が鳴り響きはじめた。
北側にあった踏切の音。列車がまもなく到着するようだ。下り線は先ほど自分が降りたばかりだから、次にやってくるのはおそらく終点汐見橋駅行きの上り線だろう。

果たしてこんな駅に下りてくる人間はいるのだろうかと半ば興味を持って遠くから改札を見つめていると停車した車両から一人の男がホームへと降り立つのが見えた。この男、扉が開かずピンポーンと警報音を発する自動改札を無視し改札を飛び越えるとあっけにとられる自分を横目に奥の工場地帯へと走り去っていった。
きれいになったとはいえなんだかすごいところだ。


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その後、地下鉄四つ橋線で一気に梅田まで出ると恒例の北ヤード再開発を見学。
かつて立ち並んでいた建造物がすべて撤去された旧北ヤードの広大な土地は長雨の影響か至る所冠水していた。それにしてもわずか20分ほど前まで滞在していた木津川駅の秘境感がまるで白昼夢のような大都会。

[了]
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