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●2015年5月某日/GWは西へ。中国地方徘徊記.02

  • 2015/05/30 22:39
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今年のGWは山口県方面に決定、西へ向かった二日目の徘徊録。
5月某日、午前8時。現在地は日本海に面する山口県長門市。
起き上がると外は予想通り叩き付けるような土砂降りの雨。
快晴の昨日、予定を大きく変更し角島大橋、向津具半島を始めとする
美しい海の景色を堪能しておいて正解だった。
雨の本日は炭鉱跡など怪しい場所を巡ることにしよう。


[前回の記事]
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山口県北部。
雨に煙る里山の風景。新緑の森や田園を初めとする里山風景をひきたてているのが点在する民家。山陰地方では伝統的な赤茶色の石州瓦の家々が統一感ある美しい光景を作り出す。最近は重量や費用の問題か瓦自体を使わない民家がほとんど、このような集落の統一感ある風景は住民達が自主的に作りだしているのだろうか。ぜひ残しておいてほしい風景だ。



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別府弁天池。
本日訪れた唯一の観光地。山口県でいつか訪れたかった場所のひとつ。地下深くから湧き上がる湧水が不思議な青さを作り出すという。秋芳洞や秋吉台に代表される名所はあまりにも有名だがすぐ脇にあるこの池はマイナーなのか、あるいは雨のせいなのか、GWというのに駐車場には車の姿はなく閑散としている。

降りしきる雨の中、森の中を歩いて行くとやがてこぢんまりとした池が姿を現した。天候も悪いのであまり期待せずのぞき込むと水面は確かに青く透き通っている。雨粒が作り出す波紋が広がる水面は角度、方角によって少しづつ色彩が変わる。とても不思議なこの池、晴れた日にはどのような姿を見せるのだろうか。


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美祢市別府弁天池1505gw0204.jpg
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この弁天池を取り囲むように生い茂る森の雰囲気も良い。規模は小さいものの、雨に塗れた樹木は苔むし歴史を感じさせる。それにしてもこの森、カエルだらけだ。足音に驚いたのか草むらから次々に飛び出してくる黒いカエル達を踏まないように慎重に散策。





山口県と言えばかつての産炭地。豊富な埋蔵量を誇る炭田が地下に広がるこの周辺には無煙炭を採掘するための炭鉱がいくつか存在した。
そのうちのひとつ、美祢市にかつてあった宇部興産山陽無煙鉱業所跡を訪れた。この炭鉱、閉山したのは40年ほど前のことだが現在でもホッパーやシックナー、斜坑坑口など数多くの遺構が残されている。しかもその多くは道路沿いに点在するため敷地外からも間近に見ることもできるという優れた立地。雨に濡れ黒ずんだコンクリートなどの遺構にかつて北海道の産炭地跡を巡った日々を思い出す。

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それら炭鉱跡からボタ山方面へ入った所にある小さな変電所跡。谷間にある赤煉瓦造りの建物は緑で覆われ背景の森に溶け込んでいる。

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実はここに行き着く際、道を間違えとんでもない狭小路地へ入り込んでしまった。産廃のような大量のゴミが道の両側、あるいは道路上に散乱する恐ろしく狭い道。両サイドから迫り来るがれきとの車体との隙間は2センチも満たなかったのではないか。車体をすらなかったのが奇跡とも言える。この隙間を数百メートルに渡ってバックで戻るのはあまりにも無謀、こうなったらこの先転回スペースが現れることを期待しさらに奥へ進むしかない。犬に至近距離で吠えられながらなんとか見つけたわずかなスペースで草木に車体をこすりながらわずかづつ転回をくり返すこと5回、ようやくのことでこのゴミの道から脱出することができたのだった・・・。普段、林道探索で狭路には慣れているとはいえそれでもめったにできない経験だった。




さて変電所。最近もいくつかの発電所、変電所跡を巡ったがどこも例外なく発電機器は撤去されガランとした空間が広がるだけだった。この場所も機器はすべて撤去されているのだろうと思いながらのぞき込む。広い空間には予想通り何もなく閉鎖後しばらくの間、近所の物置代わりに使われていたのか数台の廃バイクが埃をかぶって放置されているだけ。
それにしてもこの部屋、どのように撮っても水平にならない。建物自体が歪んでいるのだろうかと首を傾げながら移動した奥の部屋には変圧器などの設備が当時の姿のまま残されていた。壁面に張られた操業時の送電図もそのまま。完全に放置状態だったこの場所、こんな物まで残されているとはなかなか貴重だと思うのだが・・・


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鉱山、炭鉱あるところに山神社あり。この地区にもやはりあった。危険な坑道作業に従事する鉱員の信仰を集め催しの場ともなってきた山神社、しかし閉山によって人々が去った町では次第に朽ち果て廃墟となった姿を全国で目にしてきた。
道路脇に草に覆われた入口を見つけ、雨で滑る急な石段を慎重に上っていく。この石段の踏みスペース、風化し丸く削られてる上に非常に狭い。当時の足のサイズに合わせ作られたのか、ここを下る帰路が思いやられる。長く続く石段を登り切り鳥居をくぐると木々に覆われた空間がぽっかりと広がっていた。この場所が本殿跡だと思われる。雨が降り注ぐこの空間の奥に置かれた小さな社は半ば倒壊していた。この神社もやがて人々の記憶から遠ざかっていくのだろう。

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山神社の近くにあった工場。こちらも操業している気配はない。壁面には大理石工業と書かれているので後に調べてみるとこの場所、大理石採掘の以前は藤浪坑と呼ばれる採炭場だったとのこと。工場正門跡に残る古びた平屋の守衛室、良い感じなので道路から撮っておいた。さきほどの変電所跡と同じく草に覆われているがよく見ればトイレのよう。それにして意匠などなかなか凝った造りの建物だった。


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石炭の産地、山口県美祢。ところが東側へ移動すると今度はセメント工場の煙突や山を削った採石場が目立つようになる。雨にしっとりと濡れる森に突如現れる生々しい白い崖、これらセメント工場や採石場の外観に惹かれの10数年ほど前、写真を撮りにこの街を訪れたことがあるよう美祢市は石灰石の産地でもある。先ほど訪れた別府弁天池の青さも石灰作用に起因するという。
この石灰石はセメントの原料としての採石業、そしてカルスト台地、秋吉台に代表される観光業、この二つの効果を地元にもたらしている。


このように様々な太古の地質が入り交じる美祢周辺、当然化石も産出する。そんなわけで寄ってみたマニアックな化石館、入館料わずか100円。入館料の安さに比例し古びた建物だったものの子どもの頃、化石に凝っていた時期があったのでつい展示品に引き込まれてしまった。アンモナイトを眺めていると当時一生懸命覚えたカルカロドンメガロドン、アムシオペクテンプレシグニスなどこの年齢になるととても覚えられないような古代の学名を思い出してしまう。張り紙には化石発掘○○○円と書かれていた。帰路通過した福井県でも同じような看板を見たが今や化石発掘にも金が必要な時代なのか。子ども時代、近所の地層を掘りまくり新生代の貝や鮫の歯を集めていたものだが・・・




本州西の果てで過ごした二日間。訪問したい予定箇所はまだまだ残るが帰路の混雑も考えそろそろ東へと進路変更せねば。

ひなびた国道、県道を繋ぎ山口県山中を東へ東へと移動していく。東西へ抜ける主要道が少ない中国山地は移動にとにかく時間がかかる。霧に包まれる人里離れたいくつもの峠を越え赤煉瓦の家、黄色いガードレールが消えた頃、山口県を抜けだし隣の広島県へ入った。
その後もしばらく中国自動車道に平行する田舎道を走り続けたものの、山里に現れたインターに誘惑されうかつにも高速道路に乗ってしまった。本日もGW渋滞が発生している海沿いの山陽道とは対称的に中国道は相変わらずがらがら、気楽にのんびりと走り続け夕方広島市へと入った。
明日は瀬戸内海方面へ向かう予定。

[続く]
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