●2015年6月某日/リニア建設予定地を訪ねる〜岐阜県中津川編〜
- 2015/07/14 23:11
- Category: 自由研究

散々な結果に終わった2015年6月某日の岐阜県中津川市リニア予定地徘徊。
あれから一週間、探索をやり直すべく再度中津川市の苗木城を訪れた。
前回は城廻りがメインとなってしまったため今回こそ焦点はリニア建設予定地だ。
※JR東海のプレスリリース資料などから読み取った勝手な自由研究なので資料的価値はありません。
[リニア予定地長野県大鹿村編]
[リニア予定地愛知県名古屋市編]
[リニア建設予定地:岐阜県中津川編]
[リニア建設予定地:岐阜県中津川編2回目]
[リニア建設予定地:山梨県早川町/山梨駅編]
[リニア建設予定地:長野県飯田市/長野県駅編]
[リニア建設予定地:山梨県/早川橋梁接近編]
[リニア建設予定地:静岡県静岡市:前編]
[リニア建設予定地:静岡県静岡市:後編]

とりあえず今回の徘徊予定地全体図【下記】。品川名古屋間、全行程の9割近くをトンネルが占めるリニア中央新幹線が中津川付近で顔を出す数少ないポイント、それが岐阜県駅予定地、および第一、第二木曽川橋梁である。その第二木曽川橋梁を俯瞰する絶好のポイントが木曽川のほとりに建つかつての苗木城天守台。


岐阜県中津川市苗木城跡。
初夏の木々、木漏れ日が落ちる苔むした巨石。広がる城跡の光景は一週間前と変化がない。唯一の違いは人気のなさ。一週間前、この場所で偶然開催されていたウォーキングイベントに巻き込まれほとんど写真も撮ることができずと散々な目にあった喧噪が嘘のように今朝の苗木城は静まりかえっていた。


大勢の参加者が絶壁から溢れ落ちてしまいそうだった狭い山頂も人の気配はなく時折数組の家族連れが訪れる程度、鳥のさえずりが響くのどかな雰囲気に包まれていた。巨石の上に作られた天守台から再び風景を俯瞰する。恵那山、広大な中津川の台地、そして眼下を流れる木曽川。
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この木曽川を渡河する橋は奥から玉蔵大橋、旧木曽川橋梁と続きこの場所に三つ目の橋、2027年開通予定のリニア中央新幹線第二木曽川橋梁が建設されることになる。JR東海がリリースした環境影響評価書を参考に適当に合成してみると完成後は下記のようなイメージになると思われる。

雄大な風景の中で、先週とのわずかな変化は橋梁予定地の河川敷で作業する一台の重機。橋梁測量のための下地作りでもしているのかと考えたもののおそらく砂利の採石だと思われる。それでは眼下に見える第二橋梁建設予定地へと向かってみることにする。
【A/下記写真】木曽川とリニア橋梁


城のふもとと木曽川の間を縫うように走る古びた道。
ウォーキングルートに指定された結果、あふれかえる人波に侵入をあきらめてた一週間前とはうってかわり本日は無人状態。ただでさえすれ違い不能なこの狭路、前回ならば行く手を塞ぐ人の群れにとても車を進めることはできなかったことだろう。通行人はもちろん対向車すら現れない静かな森の道を走らせていくと古びた橋梁が現れた。これが前回訪れることができなかった北恵那鉄道跡。



クモの巣と密生する植物に阻まれながら斜面を登ってみたものの、残念ながら軌道など当時を偲ばせるような痕跡は残されておらず、また鉄橋上部も夏草に覆われ近付くことはできなかった。次第に森に戻りつつあるこの軌道跡は次に訪れる集落内を通過後、木曽川を渡河する廃橋梁と繋がっている。

【B/下記】玉蔵大橋よりリニア木曽川橋梁予定地を望む


いったん集落を通り過ぎ玉蔵大橋から苗木城方面を振り返った光景。この小さな集落にトンネル出入り口および木曽川橋梁が建設されることになる。例によってリニア橋梁を合成してみる。やはり防音フードの存在感が小さな集落に威圧感を与えているようにもみえる。次はこの集落を歩いてみよう。

1978年に廃線となった橋梁橋、さきほど訪れた廃線はこの場所へと繋がっている。そのたもとにひっそりと佇む廃屋。汚れたガラス越しに内部をのぞき込むと埃をかぶった船の時刻表が残る。帰宅後調べるとこの場所、かつて運行されていた恵那峡下りの観光船乗船場受付跡なのだという。その廃屋裏手に木曽川川辺へと下りる道がある。木々に覆われた急斜面の道を下っていくと水面に出た。
このC地点、川原は存在せず斜面が直接川に落ち込んでいるためかつて観光船が横付けされていた場所ではなかろうか。振り返ると錆び付いた木曽川橋梁の廃線跡。一方反対側には間もなくリニア橋梁の建設が始まり50年の時を経て新旧二つの鉄道橋がそろうことになる。ところでリニアって鉄道だったかな?
【C/下記】船着き場跡からの合成図

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集落を東西に並行して走る二本の細道。城跡へと続く川側の道を外れ山側へとつながるもう一つの道へ足を踏み入れる。
少し気の早い蝉の鳴き声に包まれ緩やかなカーブを描くこの道も北恵那鉄道の一部。現在は舗装され当時の面影は何もないため言われて初めて気がつく程度。




道路脇にあった古びた石段を登り現れた神社に参拝。
さてリニアはどのあたりを通過するのだろうか。環境評価書にあった計画図と地形図、さらに現地空撮を合成すると下記のような図が浮かび上がった。道とリニアが交差する場所はこの神社から100mほど東へと移動したあたり。

【E/下記】神社前からの合成図
というわけで神社前の廃線上から東側を振り返ってみる。適当に合成してみると木々の向こうから巨大な土管の筒のような橋が飛び出てくることがわかる。

【D/下記】トンネル出入り口からの合成図
リニア予定地ほぼ真下と思われる地点。前回も書いたがリニアの高架は防音フードの存在感が圧倒的だ。軽トラが停められている道がかつての線路跡、恵那峡口駅のホームもこのあたりにあったという。鉄道がこの場所から消滅して50年あまり。真上を交差する形で再び集落に鉄道が戻ってくることになる。とはいえリニアはもちろん停車することはなく頭上を轟音と共に通過するのみ。

緑が美しいこの集落を徘徊していると近所に住む方と話す機会があった。しばらく言葉を交すうち、やはり気になったのは集落の頭上を通過するリニアの存在。降って湧いたかのようなこの計画をどのように思っているのだろうと質問してみると橋梁自体の存在感や騒音はあまり気にせずむしろ工事を心配している口調だった。確かに工事が始まれば10年近くにわたりひっきりなしに車両が出入りすることになるだろう。同じ声は長野県大鹿村でも聞いた。

リニア中央新幹線 岐阜県駅予定地編〜中津川市〜
リニア中央新幹線岐阜県駅予定、中津川市千旦林坂本。
先ほどの木曽川橋梁予定地から南西へ5kmほど離れた場所、JR中央本線、美乃坂本駅の駅舎が建つ。リニア岐阜県駅が建設されるとJR東海から発表された場所となる。
リニアの駅が建設されるというからには発展した場所なのだろうという予想を覆す小さな駅舎。数台の客待ちタクシーが時間を持て余すかのように停車する駅前は商店と学校、わずかな民家、残りは田んぼが広がるのどかな場所だった。
改めて地図上で確かめるとこの場所、中央本線中津川駅よりも西隣の恵那駅の方が近い。とはいえ行政区としては一応中津川市となるので新しくできるリニア駅名は「新中津川駅」あたりに落ち着くのだろうか・・・

この場所を訪れるまでトンネルから抜け出したリニア線はしばらくの間JR中央本線と平行するため、当然新駅も美乃坂本駅にぴたりと設置し建設されるものだと思い込んでいた。ところが実際に現地で地図と照らしてみると中央本線と完全に平行しているわけではなくわずかに角度を持ち接触する程度、さらに二つの駅舎同士も意外に離れている。【下記合成参照】 新駅との間には当然連絡路などが設置されることになるのだろうがそれでも距離があるため美乃坂本駅自体の移動も考えられているのかもしれない。

その中央本線の線路とリニア新駅予定地に挟まれたわずかな空間にある4階建ての白い建物。
ツタが絡まり錆びついた看板、崩れかけた中津川グランドホテルの文字がなんとか読み取れる。その外観からは営業しているようには思えないホテル。とはいえこの建物、高層建造物がまったく存在しない予定地周辺ではそれなりに目立つ存在のため、どの方角、あるいはかなり離れた場所からもリニア新駅の位置を掴みやすい。もしこの場所を訪れてみようという物好きな方がいらっしゃればこの建物を目印に周辺散策を行うと便利だと思われる。
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ではこの白い建物、中津川グランドホテルを起点にリニア岐阜県駅周囲を徘徊してみよう。
まず新駅予定地から最も離れた北西のB地点から岐阜県駅の駅舎全体像を眺めてみる。植えられたばかりの稲、水が張られた田んぼが美しい。遠くに見える山は恵那山だろうか。
この場所に高さ20〜30mという橋脚が建設されると風景は一変。リニア岐阜県駅(仮称新中津川)、環境影響評価書によれば橋梁は三階建て、鉄道に関する知識は皆無なのでなぜこれだけの高さが必要なのか理解できずJRのサイトを調べてみると最上段はこの奥の丘陵地に計画されている中部車両基地(工場)回送線を設置するため。なのだそうだ。
【B/下記】北西側からリニア岐阜県駅を望む


【D/下記】東側からリニア岐阜県駅を望む
森に覆われた丘陵を背にし農家らしき大きな民家が点在するいかにも里山といった光景。本線はこの丘陵斜面のトンネルに吸い込まれていく。分岐したもう一方の路線は斜面を登り上部に建設される車両基地へと繋がっている。

【E/下記】県道410号線の道路上から駅方向を見た光景。
奥に見えるのが先ほど書いたホテルらしき建物。路面がわずかに波打っている部分が千旦林川支流を渡る小さな橋。リニア高架は手前を流れるこの千旦林川支流に重なる形で考査すると思われる。

予定地周囲をぐるりと一周、再びスタート地点の美乃坂本駅へと戻ってきた。
車を停め駅前を徘徊。初夏の昼下がり、静まりかえる駅前通り。レトロな商店では買ったばかりのアイスをかじる子供の姿。コンビニではなく商店で子供が買い物をする光景はひさしぶりに見た気がする。リニアを思い起こさせるものといえばJA壁面に掲げれられていた開通を告知する看板くらい。
2015年6月現在、あまりにものどかなこの駅前、今後12年間でどのように変貌していくのだろう。JR東海自体にとってリニアはあくまで東京名古屋のバイパス路、途中の駅舎に力を入れるつもりはなく、あくまで簡素な外観にこだわっている。このため岐阜県駅の駅前は急激に発展、というよりは田舎の新幹線駅のように駐車場とルートインに代表されるビジネスホテルがぽつぽつと建つといった程度ではないだろうか。
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美乃坂本周辺で目につくのは巨石。
あぜ道、路地の角に丸く風化した花崗岩の塊が鎮座する。先ほど苗木城で見たサイズには及ばないがそれでも直径1mほど。地元の人にとっては当たり前なのだろうがよそ者の自分にとっては非常に不思議な光景。
新駅ができると駅前には判で押したかのように意味不明なモニュメントや謎の彫刻が設置されるこの国、リニア岐阜新駅開業の暁には駅前広場に地元を象徴する巨大な花崗岩でも設置したらどうだろうかとくだらない妄想に浸ってしまった。
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リニア中央新幹線 中部車両基地予定地編〜中津川市〜
前回と違い順調に徘徊が終わったついでに近隣に建設が予定されている中部車両基地予定地も見学してみることにした。とはいえ本日訪れるつもりもなかったので下調べはほとんど行っておらず適当です。車両基地は岐阜県駅予定地から北西に張り出す丘陵地の台地上に建設される。計画書にあった図面と現地空撮を合成してみるとあまりに広大な敷地。【下記合成参照】

仮称岐阜県駅(新中津川駅)から分岐する引き込み線予定地沿いに坂道を上りきると台地上に出た。水が張られた水田が広がっていた新駅周辺の平地とは対照的に台地上は森や果樹園、養鶏場となっている。

畑や森が広がる台地上の道を奥へと車を進めると現れたのは工業団地のように整地された一角。とはいえテナントもほとんど誘致できなかったのかその多くが更地のままでどこか荒れ果てた感じもする。存在する最も大きな施設は農業研究所と書かれた県が運営していると思われる建物。資料を見るとこの研究所、リニア車両基地と重なるため移転を余儀なくされる。
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千旦林丘陵をくまなく回ってみたものの測量や工事開始の気配は一切感じとることはできなかった。開業まで残りわずか12年、この状態から広大な山林を切り開き65haに及ぶ車両基地を作りあげなければない。果たして間に合うものなだろうかという素人的思考が思わず浮かんでしまった。
2015年現在、中津川近辺のリニア予定地はどの場所もまるで嵐の前の静けさのように静まり返っていた。次回この場所を訪れた際、何かしらの変化を感じることはできるだろうか。
[了]
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