●2015年7月某日/山上の絶景、大鹿村天空の池にて
- 2015/08/21 23:30
- Category: マニアックスポット

長野県大鹿村。当ブログに何度も登場する秘境の村。
着工が迫ったリニア中央新幹線予定地の再調査を行うべく
google空撮で大鹿村上空をさまよっていると「天空の池」なる文字が山中に現れた。
気になったので地図を拡大してみると大鹿村高所の斜面にある小さな池のことを指すらしい。
これが知名度の高い場所ならばわざわざ訪れようとも思わないが
「天空の池」で検索をかけても表示されるサイトはわずか3件ほど(2015年4月現在)、
さらにそのアクセスの困難さを知りがぜん興味がわいてきた。
それから数ヶ月、念願かなってようやく訪れる事ができた。
ハードな道のりを超えた先にあったのはその名にふさわしい高所の池だった。
photo:Canon eos7d 15-85mm
[天空の池 〜秋編〜]
[天空の池〜早朝編〜]
[天空の池〜深夜編〜]
深い山々が続く長野県南部。その中でも山に囲まれた秘境とも言える小さな村が大鹿村。
その中心部からさらに分け入った山中にある黒川牧場奥地に天空の池はあるという。
牧場と言っても自分たちが思い浮かべるなだらかな牧場ではなく、急峻な山の斜面に作られたもの。牧場最上段にある池までは急傾斜のダート道を登り切る必要があり、それなりの覚悟が必要になりそうな行程。

当日。黒川牧場入口。大鹿村中心部まで到着するのに数時間、さらにそこから曲がりくねった林道中峰黒川線をひたすら登り続けようやく到着した。
既に標高は1700m越、まさに山岳牧場。この黒川牧場、実は10年ほど前一度だけ訪れた事がある。その際、小さな丸い池を見た記憶があるもののgoogle空撮で見たような場所ではなく牧場入口付近だったはず。
山側には林道から分岐する細い道。ここが天空の池への入り口となる場所。以前訪れた際はゲートによって封鎖され通行止めとなっていたが幸いにも今日は全開だったためそのまま車で乗り入れる事ができた。
●
入口のゲート通過と同時に余韻もなくいきなり急傾斜ダートが始まった。砂利の路面は石が散らばる締まりがない状態のため四駆でも時折タイヤをとられてしまう。ガードレールも途中で消え、道から外れないよう慎重に運転して行く。
少し上ったあたりにわずかなスペースがあったので一旦車を停め眼下を俯瞰する。遥か下に見える丸い池。先程のゲートの辺り。どうやらこれが以前見た記憶のある池のようだ。

手元の地図を見ると池はまだ遠く、半分も進んでいない。
もちろん看板などなく、あらかじめ航空写真で池の位置を調べておくなど、予備知識がなければ進むことを躊躇してしまったかもしれない。傾斜はさらに増し、まだ登るか!と思いながらヘアピンカーブが連続するダート道を土ぼこりを巻き上げ登り続ける。


再び車を停め上を見上げればダート道はつづら折りを作り空へと消えている。目的地はまだまだ先、上部の草原を乗り越えた遥か上。四駆とはいえ果たして登りきることができるのだろうか。次第に自信も失われて行く。
●
さらに傾斜を増すダート道をアクセルをベタ踏みにしながらひたすら登り続けた。エンジンはうなりをあげ乾いた土ぼこりがもうもうと立ちこめる。
砂利のカーブを曲がりきると突如傾斜が緩やかになり、開けた平坦な草原が広がった。ひたすら続いた登り坂もどうやらこれで終わりのようだ。ほっとしながらスピードを緩め、視線をさまよわせると緑の草原に鮮やかな青い色。エンジンを切り埃まみれとなった車から降りた。
●
夏空と白い積雲を映し出す青く小さな湖面が天空の池か。
池自体は非常に小さいもののその名の通り遥か高所にあり、彼方にそびえる中央アルプスがほぼ同じ高さに見える。池の周辺は湿地が続く池塘のような場所となっている。

地形図によれば天空の池の標高は2000mを超えているようだ。最近は「天空の○○」といったキーワードが流行、中には名前負けしているような物件もあるがこの池はその名に恥じぬ立地。
なだらかな草原の一角には一台のバイクが停められているものの、池周辺には人の気配はなく辺りは静けさに包まれている。
ダート道は池の畔からさらに奥へと続いている。もう一踏ん張りすれば車で進む事ができそうだが、今回は池訪問が目的だったのでこの辺でやめておこう。
●
2015年4月に「大鹿村 天空の池」で検索すると引っかかったサイトはわずか3件ほど。その際、拝見した方の池の写真を参考にぜひやってみたい事があった。それは天空の池と車との記念写真。池の畔に車を停め対岸から撮ってみると草原、空、池、そして水面に映る我が車、まるで自動車のコマーシャルのようなおもしろい写真が撮れた。



西側に位置する中央アルプス上空でふくれあがる積雲が小さな湖面に映し出されている。わずかに風が吹き抜けるため水鏡のような静かな湖面を見られなかったがそれでも苦労して訪れた甲斐があったというもの。
●
夏雲の白、空と池の青、そして草原の緑による鮮やかな色彩の組み合わせが見られるのもこの期間だけ。標高2000mの高所では短い夏は瞬く間に過ぎ去り、緑の草原は冬の装いへと変化して行くことだろう。

残念なのが池の真横に立つ真新しい案内看板。おそらく自治体が親切心で設置したものだろうがどうしても写真に写り込んでしまう。写真の多くはぎりぎりのラインでトリミングして撮ったものだ。案内看板が不要だとは決して思わないが、あとわずか場所を移動し、美しい光景を邪魔しない場所へと配慮したらどうだろうか、と考えてしまった。
●
池を後にし村中心部へ下っていく途中、ガソリンが予想が以上に減っている事に気がついた。山岳地帯や林道を走る際、余裕を持って入れておくのがいつも習慣。今回も出かける直前入れてきたはずが池へ続く急傾斜を走り続け燃料を予想以上に消費したのか目盛りのほとんど消えかかっていた。
悪い事に本日は日曜日、ここ大鹿村に限らず休日に営業している田舎のガソリンスタンドはきわめてまれ。案の定時折現れるガソリンスタンドはどこも定休日、タンクの残量がみるみる減っていく中、胃を痛くしながら山道を走り続け、天空の池に出会えた喜びはいつの間にかすっかり消し飛んでしまった。
そして奇跡的に「営業中」と書かれた看板が立てられた家族経営の小さなスタンドに出会えた際は、思わず歓喜の声をあげてしまった。いやあ本当に助かりましたよと、スタンドの親父としばらく立ち話。次回訪れる際はこのスタンドを覚えておこうと地図にメモし長野県を後にした。
●
天空の池に魅了された自分はその後も季節を変え何度もこの場所を訪れることになった。
[了]
スポンサーサイト