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●2016年5月某日/能登半島GW徘徊記.01

  • 2016/06/23 23:27
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日本海に突き出た石川県能登半島。
かつて何度も訪れたひなびた光景が魅力な秘境の地。
最後にこの半島を訪れたのは日本一周を行った2003年が最後、
あれから13年、能登はいったいどのように変化したのだろう。
2016年ゴールデンウィークは能登半島にあるベタな観光地からマニアックスポットまで
例のごとく節約のためキャンプ場を利用しながら駆け足で巡ることになった。

photo:Canon eos7d 15-85mm

能登半島ツーリングコース地図1605gwmap.jpg


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能登半島の中間地点、七尾湾に浮かぶ能登島の片隅にあるキャンプ場で夜が明けた。
明け方まで降り続いた豪雨は上がり快晴の朝。木々からポタポタと落ちてくる水滴に服を濡らしながら朝日が射し込む森を歩く。


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雰囲気の良いロケーションに炭火を起こし食材でも焼き始めたいもの。とはいえ今回はキャンプ場でのんびりとしてはいられない。
一見のどかに思えるこの能登島、事前に得た情報によれば連休ともなれば島内に建つ水族館目当ての観光客が殺到、島と本土を繋げる橋は渋滞に見舞われるらしい。今年のGWは昨年の半分程度の日数しか確保できなかったため散策を切り上げ渋滞を回避すべく早朝のうちに能登島を脱出した。
では限られた時間の中で奥能登めぐりに出発。

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穴水を経て能登町の国道を走っていると道路沿いに現れる渋い木造二階建ての建物。その正体は現役の郵便局、三波簡易郵便局。この建物と初めて出会ったのは13年前の2003年、能登沿岸を走行中、廃校を思わせる外観に思わず車を停め写真を撮った事を思い出す。

その数年後、街角で偶然見かけたポスターに驚かされた。郵政民営化を告知するポスターの舞台となっていたのがまさに三波簡易郵便局だったのだ。2007年頃のこと。そのレトロな外観が話題を呼び同時期、CMにも使われたらしい。

能登三波簡易郵便局1605gw0106.jpg
能登三波簡易郵便局1605gw0107.jpg


海際ぎりぎりに建つその立地も魅力。昨夜大雨を降らせた低気圧が東海上で猛発達、一時的な冬型の気圧配置となったことで強風が吹き付け内海とは思えないほど荒れる七尾湾。岸壁から巻き上げられた波しぶきが風に乗って国道にまで吹き付ける。

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能登三波簡易郵便局1605gw0110.jpg
能登三波簡易郵便局1605gw0109.jpg
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この郵便局、帰宅後検索してみるとジオラマまで販売されており思わず手に入れたくなってしまった。


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幼少期、自宅物置に全国の観光名所が掲載された20巻近い大判写真集が埃をかぶったまま積み上げられていた。今思い返せば昭和の雰囲気満点の古くさい写真集。ずっしりと重い本を引っ張り出してはまだ行った事のない全国の名所に思いを馳せていた。なぜか民族学的な写真が多くなまはげに代表される地方の祭りの写真におびえながらも恐いもの見たさに暗がりでページをめくった。
覚えているのが能登編に登場する鬼の面をかぶった男達が太鼓を叩きながら踊る写真。夜間、炎をバックにスローシャッターで撮った御陣乗太鼓と思われる鬼気迫る写真は子ども心に恐怖を覚えたもの。そして同じページに掲載されていたのが海に浮かぶ不思議な岩の写真だった。キャプションには軍艦のような外観から軍艦島と呼ばれていると書かれまあ確かにその通りだと妙に納得した事を記憶している。
そんな昭和からのベタな観光スポット見附島、通称軍艦島。

見附島、通称軍艦島1605gw0115.jpg

2016年現在、軍艦島というキーワードで多くの日本人が思い浮かべる島は長崎県沖合に浮かぶ廃墟となった炭坑の島ではないだろうか。試しに画像検索を行うと表示される上位数百件すべてが長崎県のもの。

振り返ると自分がネットに触れることのできる身分になった2000年頃、軍艦島で検索すると長崎の軍艦島(端島)を紹介するサイトはごくわずか、表示される写真やサイトのほとんどが能登半島にあるこちらの見附島だった。しかしその後の廃墟ブーム、観光化、世界遺産化によって一部の人間にしか知られていなかった長崎県軍艦島の知名度は爆発、現在その立場は完全に逆転しweb上に無数にある長崎県軍艦島と比べ、昭和からの名所である能登の軍艦島はほとんど見当たらず・・・。

下記写真は以前撮影した長崎県の軍艦島。
当時何度か上陸したものの観光化されてからは興味が失せてしまった。

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見附島、通称軍艦島。1605gw0114.jpg


本日の能登半島、雨予報が嘘のように晴れ渡ったものの相変わらず強い風に翻弄されながら海岸までやってきた。周囲の観光客も看板や立木に捕まり体を必死に支えながら軍艦島を写真に収めている。
改めて島を眺めると確かに商船よりは重厚感ある軍艦に見える。昔から気になっていたが船体が下に広がった形状から推測するにモデルになったのは昭和の日本海軍というよりは日清、日露戦争の頃の旧型戦艦ではなかろうか。
風に飛ばされる波しぶき、島に叩き付ける波。まるで軍艦が全速航行を行っているかのように見えた。



能登半島山中、里山の外れ。新緑まぶしい森の中に残されている廃校となった木造校舎。
割れたガラス窓から覗き込むと教室跡には埃をかぶった様々な道具が散乱していた。

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かつて能登半島は北端の輪島市、東端の珠洲市共々、のと鉄道と呼ばれる路線によって結ばれていた。この鉄道は過疎化等による利用者減少によって2005年にその長い歴史を閉じ廃線となった。現在は鉄橋やトンネルをはじめとする当時の遺構を各所で目にする事ができる。

こちらは能登線を走っていたNT100形気動車。人目に触れる事のない奥まった築堤上にひっそりと停められている。近づくと塗装はひび割れ朽ち果てた廃車状態。車体の足下は繁殖する植物に半ば飲み込まれていた。

のと鉄道能登線NT100形気動車の廃車両1605gw0119.jpg
のと鉄道能登線NT100形気動車の廃車両1605gw0118.jpg
のと鉄道能登線NT100形気動車の廃車両1605gw0117.jpg
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車体全体を植物が包み込むのも時間の問題。それにしてもなぜこのような場所にたった一台の車両が放置されているのだろうか。再び自力で動き出すことはないだろう。



廃車見学後、能登線終着駅となる蛸島駅を訪れた。廃車体が放置された場所から西へしばらく進んだあたりの集落内にぽつんと建つ小さな駅舎。廃線となってから蛸島駅を訪れるのは初めて。

旧蛸島駅1605gw0121.jpg
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昔の写真がないものかとデータをひっくり返していると出てきたのは蛸島駅ホームでかつて撮った写真[下記]。

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データによれば撮影日は2003年晩秋。廃線になったのは2005年だからその2年前のことか。当時フィルム一眼レフとデジカメと併用していたためポジフィルムにさらに写真が残されているはずと探してみたが発見できず。乗客の姿もなく晩秋の枯れ果てた光景が続いていた当時の蛸島駅、一方本日はさわやかな初夏の雰囲気に包まれていた。




旧蛸島駅を出発、再び海岸線に沿っての能登半島一周を再開。岩場の印象が強い能登だが意外にも白砂の浜もあったりする。

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能登半島ツーリングコース地図1605gwmap.jpg



海に突き出た能登半島先端禄剛崎を経由、外海に出ると荒れる日本海が広がった。岸壁を叩き付ける大波、砕けた波しぶきが海際ぎりぎりに密集する古びた集落を白く覆っている。
そんなハードな光景が続く海際をひたすら西へ。このまま輪島まで海岸線を走る予定だったものの気がつくと時刻は午後4時。そろそろ今夜の宿泊地を目指さねば。

能登半島一周1605gw0124.jpg
能登半島一周1605gw0125.jpg
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ということで半島を一気にワープする山岳道路へと入る。
この道、能登半島中央部の山中に建設されたバイパスのような高規格道路。今回の旅において何度か利用したもののいつ走っても交通量はほぼ皆無、40キロほどの行程においてすれ違った対向車はわずか一台とまるで無人道路。田舎によくある広域農道のような採算度外視の道のおかげで能登空港付近にある宿泊地まであっという間に到着した。





能登旅二泊目。出発前、宿泊代を浮かすべくキャンプ場や車中泊も検討したものの安い宿泊施設を偶然見つけたので試しに泊まってみることにした。


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水が張られたばかりの田園広がる里山に建つ鉄筋二階建ての建物。
廃校となったこの小学校校舎が改装され格安で泊まる事ができる宿泊施設として生まれ変わった。階段を登った二階の長い廊下に面した教室が宿泊部屋となっている。内装は非常にきれいにリノベーションされているため、先日宿泊した三重県の廃校のような味はないものの当時の蔵書が残されていたので部屋に持ち込み深夜まで読みふけってしまった。

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午後6時。宿泊者への夕食造りが行われている旧給食室を改装した厨房から良い香りが漂ってきた。しかし自分は今夜も自炊。スーパーで買い込んだ食材をレンジで温める。普段は別にケチでもないが旅に出たとたん節約志向になってしまう癖は昔から変わらない。





やがてあたりは夜の帳に包まれた。水が張られた校舎周辺の水田から一面に響き渡るカエルの大合唱。水田に近づくと数百匹のカエルは人の気配に敏感に反応、一斉に鳴き止み周囲は静けさに包まれる。その場でじっと立ち止まる事数分、最初の一匹がおずおずと遠慮がちに鳴き始め危険がない事が確認されると他が一斉に追随、再び大合唱が響き渡る。それにしても最初に鳴いてみる度胸のあるカエルは一体どのようなやつなのだろうか。


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水田から見上げると廃校上空には一面の星空が広がっていた。
明日は本日途中で断念した能登半島外周路一周の続きでも行うか。

[続く]
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