●2016年8月某日/地の果て青森竜飛崎再び.02〜夏の竜飛崎着〜
- 2016/09/27 23:32
- Category: 旅

二日目は山形県鳥海山にあるキャンプ場で夜が明けた。
今日は青森県の果て竜飛崎を目指し走り続ける事になる。
涼しい早朝の鳥海山中腹から猛暑に包まれる下界へと下りた。
[前回の記事]
photo:Canon eos7d 15-85mm

山形、秋田、青森。朝から日本海沿いをひたすら北上、青森県深浦町のあたりで幹線道路を外れ山側の森へと入り曲がりくねった薄暗い山道を登っていくと突如視界が開け広大な丘陵と風力発電機が現れる。出発前面白い場所はなかろうかといつものようにストリートビューを駆使して見つけた場所。
人気のない高台にいくつもの風車が海風を浴びゆっくりと回り続けている雄大な光景。このような風力発電、10数年前はまだ珍しく旅の途中見つけると車を停めては写真を撮っていたものの近年急激に増殖、当たり前の風景になった。とはいえ採算のほどは不明。




五能線、驫木駅。
一年前と同じ場所、同じ時間。木造の無人駅は変わる事無く海際に佇んでいた。このロケーションと簡素な無人駅舎が作り出す「何もなさ」が人気を呼びポスターはじめロケ地に選ばれる事も多い駅。
知名度が上がると地元自治体が訪れる観光客に気を使い、のぼりや看板を設置してたりと余計な演出をした結果、本来の良さが失われてしまう。そんな観光地をよく見かけるがこの駅はいつ訪れてもいい意味でほったらかし感がある。



いよいよ津軽半島の付け根が近づいてきた。竜飛崎まであとわずか。
竜飛崎へ向かう快走路、いつもの広域農道へ入る。はずがあろうことか地元車の流れにまかせ漠然と走っているうち知らぬ間に建設されていたバイパスへ流入してしまった。入った瞬間間違いに気がついたものの時既に遅し。バイパスから降りるに降りられず広域農道入り口がみるみる遠ざかっていく。結局次の出口まで強制的に運ばれUターン、なんとか復帰することができた。
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どこまでも続く緑の世界。夏の東北の旅を印象づける広大な田園風景。緑、青、そして白い積雲が作り出す鮮やかな光景を眺める自分を、軽トラの運転手が不審そうに見つめながら通過していく。地元の方にとっては当たり前の風景もよそ者の自分にはとても新鮮でつい見入ってしまう。



16時30分。津軽半島最北端、竜飛崎に1年ぶりに到着。展望台に立つ。レーダーサイトの施設越しに津軽海峡を挟み北海道の姿もくっきりと望むことができる。本州最北端は隣の下北半島大間崎。とはいえ海際まで民家が立ち並ぶ平坦な大間崎に比べ断崖が続く竜飛崎の方が最果て感、秘境感は高い。
初めてこの岬を訪れたのは20年ほど前の冬のこと。運転免許もなかった当時、何を思ったかローカル線と路線バスを延々と乗り継ぎたどり着いた冬の竜飛崎は舞い散る雪と寒風が吹き荒れる鉛色の光景に包まれていた。そんな竜飛崎も盛夏の本日は鮮やかで平和な姿。


青函トンネル建設時、竜飛工区として長期にわたり本州側の前線基地となったこの周辺を宿舎が埋め尽くしていた記録映像を見たことがある。その全てが撤去され草原となった一画に残された斜坑人車。かつてトンネル建設工事において使用され青函トンネル記念館の屋外展示物として設置されているもののトンネル完成から28年、海風を浴び錆び付き朽ち果てていた。
この記念館、いつか訪れてみたいのだが今回も閉館時間ぎりぎりのところで間に合わず。
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高台から見下ろした竜飛崎西側の光景。
眼下の日本海側には昨年に引き続き今夜宿泊するシーサイドキャンプ場。傾いた西日が入り組んだ地形の立体感をより強調させ深みのある風景を作り出す。
高台から海際のキャンプ場へと下っていく一本道にぽつぽつと立ち並ぶ電柱のように、自然と人工物との組み合わせはなんだか妙に旅情をかき立てるもの。彼方に続く断崖の一本道に魅力を感じ夕日を浴びながら車で進んでみたものの、道は小さな集落で消滅していた。



西日を浴びながら坂道を下りキャンプ場へ到着。
断崖下のわずかなスペースに作られた秘境感あふれるすばらしい立地。もちろん周囲には何もない。昨年夏、初めてこのキャンプ場に宿泊、気に入ってしまい今回も再び泊まる事になった。テントを立てる気力もなく激安コテージに泊まる事になったので写真に写り込んでいるテントは全て他の方のものです。


キャンプ場の真横は日本海。海に触れようと降りた磯では青函トンネルからの湧水が勢いよく海へ流れ込んでいた。断崖下の遊歩道を岬へと歩いてみたものの崩れ落ちた岩によって途中から通行不能、引き返すはめになった。
やがて日本海に日が沈む。



コテージで夕飯の準備。とはいえ炭で火を起こすような豪華なキャンプ食は一切なく昼過ぎに今別のコンビニで買い込んでおいたカップラーメンを中心とした適当なものばかり。
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暑く長かった夏の一日も終わった。日が沈むとあたりは涼しさに包まれる。
心地よい海風を浴びながら星でも撮ろうかと外に出れば辺りを煌煌と照らしだす丸い月が夜空に浮かんでいた。レンズを開放にすれば手持ちでも撮れてしまえそうなほどの明るい夜。何枚か適当に撮ってはみたものの水平線を埋める漁船の明かりと相まって昨年のような星空を映し出す事はできなかった。




特にやることもなくなってしまったので深夜の竜飛崎を訪れてみることにした。
うまくいけば漆黒の闇から、漁り火や北海道の夜景を撮る事ができるかもしれない。静まり返る夜の竜飛崎駐車場には車中泊中らしき数台の車が停められていた。見上げると頭上の灯台からは一筋の光が音も無く数秒間隔で夜空を回転している。暗い坂道を登り奥にある展望台に到着。

ところが予想に反し夜の竜飛崎はまばゆい光に包まれていた。展望台を煌々と照らしだす強い光の正体は津軽海峡を監視する海上自衛隊のレーダーサイト。夜景撮影どころではなく撤収、明日は津軽半島の対岸、下北半島を徘徊予定。
[続く]
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