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●2022年4月某日/酷道の果て。425号最深部、東ノ川集落跡へ。

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山々が連なる紀伊半島。
その最深部を流れる東ノ川沿いに廃校を有する宮ノ平集落、
いわゆる東ノ川集落跡がある。
ここを紹介するサイトはWeb黎明期の頃からいくつかあり
あまりにも有名な「廃村」であるが今まで訪れることはなかった。
廃校に関しては既に破壊されつくされており正直、魅力を感じないこと、
そして、最も大きな理由が唯一のアクセス路となる国道の度重なる通行止め。
集落跡へは山中を曲がりくねる国道425号をひたすら走り続ける必要がある。
それだけならば良いのだが、大雨や台風によって度々国道が寸断されるため
運良くタイミングが合わないと訪れることができないのだ。
そして最近長らく閉鎖されていた尾鷲ルートの通行止がようやく解除されたと知り
東ノ川集落跡と廃校目指し長い道のりに足を踏み入れた。
書いてみたら現地へのダラダラとした行程の話ばかりとなってしまった。


photo:Canon eos7d 15-85mm
※本記事は訪問時のものです。現在の状況は異なっている可能性もあります。


広大な紀伊半島。そのほとんどは急峻な山塊に覆われている。国道168号・169号は近年、高架を贅沢に使用した高規格路に整備されたため南北移動は割と楽、ところが東西移動となるとその交通網は貧弱につきる。

紀伊半島国道425号線地図2204route425map.jpg

地図上を東西に敷かれた線、これが悪名?高い国道425号線。曲がりくねる様から想像できるように国道とは名ばかりの狭路、悪路が続く道として、いわゆる「酷道」とも証されている。破線部分は過去何度か走破済み、一方で尾鷲〜下北山間は部分的に走ったことはあるが、幾多の通行止めに阻まれ未だ全線走破の経験はない。
目的地は425号沿いの山中にあるため、未走区間を経験する良い機会でもあり、また通行止めが解除されたとの情報もあり、過去下北山方面から目指したものの撤退を余儀なくされた集落跡を今回は東側、三重県尾鷲方面から目指す。

国道425号線マークlogo.png
紀伊半島の山々が蛍光色の黄緑に膨れ上がる新緑の時期。尾鷲市街のコンビニで食料を買い込むと425号の看板に導かれ、紀伊山地の深い山へと消える頼りなさげな国道へ車を進めた。

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目的地の集落跡までは一本道がひたすら続くため迷いようがないルートだが、先程のコンビニ駐車場でふと思い立ってカーナビ目的地を下北山村に設定してみると数秒迷った末、425号ルートが選択された。
免許取り立てのドライバーが、カーナビの気まぐれでこのルートに誘導されてしまったら、と心配になる。廃村や悪路に興味のない方は距離的には遠回りにはなるが熊野方面まで迂回するルートがおすすめ。

国道425号坂下トンネル2205route4250102.jpg
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賑わっていた尾鷲市街から一変、宅地を抜けた425号はスタートからわずか数分で人気のない山道となった。前日まで大雨が続いた影響か、豊富な雨水を吸い込んだ紀伊半島の山々は湛水能力が飽和し、斜面の至るところから水を吐き出している。
国道と平行して流れる川は雨上がりだというのに濁ることもなく透明度の高い清流となって流れている。この川はやがて清流で有名な銚子川と合流し熊野灘へ注ぐ。

クチスボダム2205route4250106.jpg
クチスボダム2205route4250105.jpg
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三重、奈良、和歌山。
紀伊半島各所に点在する廃校、廃村、秘境集落を探索する5年計画を立ててからはや8年。→LINK
半島の広大さと山深さによっていまだ達成できておらず。その中でも今回の目的地、東ノ川は唯一のアクセス路である425号とサンギリ林道線が相次ぐ災害通行止めによって寸断、特に尾鷲〜下北山間の通行止め期間は長期に及び、長らく続いた通行止めが解除されたのは最近のこと。



対向車の現れない山中の道。かつてはこのような場所にも林業や耕作で生計を立てる小集落が点在していた。しかし現在、425号尾鷲〜下北山区間沿線に生活の気配は一切感じられない。

紀伊半島国道425号2205route425020401.jpg
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国道は次第に高度をあげていく。ほとんどの区間が生い茂る木々に覆われているが、この場所は崩落によって視界が開け紀伊山地の山々を見渡すことができた。荒々しく崩れた路肩は最近工事が行われたようで真新しい施工がなされている。



今回、酷道とも証される425号の東側、尾鷲〜下北山区間を初めて走ったが時折路面に小さな落石が散らばっている程度。ハードな行程を予想していただけに、過去何度か走破済みの牛廻越方面含め、これが有名な「酷道」なのかと正直拍子抜けしてしまった。もちろん路肩の踏み抜きや対向車への注意は常に必要だし、国道として見れば最低ランクに入るのだろうだが、「最悪の国道」と言うキャッチフレーズは少しおおげさかな。

今回感じた425号の意外な手入れの良さは沿線にあるダムの管理道として存在意義が見いだされているためなのだろうか。居住者はほぼ皆無、また尾鷲道が開通したことで存在価値は下がる一方の今、ダム管理者か物好きくらいしか足を踏み入れることもない山中の道路を維持管理を続ける努力には頭が下がる。

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奈良県のイメージ2205route4250108.jpg

崖の縁に立ち見下ろすと植林と自然林がまだらに入り交じる緑の合間に、これまで走ってきたルートが遙か眼下に見えた。峠の八幡トンネルを抜けしばらく下ると三重県から奈良県へ入る。

「奈良県」というキーワードから一般の方がイメージされるのは奈良の大仏や法隆寺などの寺社仏閣の姿ではなかろうか。しかしそれらはほんの一画に過ぎない。過去徘徊で何度も紹介したように奈良県の実態は上記写真のような広大な森林に覆われた山岳県なのだ。

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峠を越えた425号は延々と山を下っていく。その道中現れた滝。当初、先を急ぐため立ち寄るつもりもなかったが、木々の合間からちらりと見えた迫力ある瀑布に車を停めた。

国道425号奈良県隠れ滝2205route4250111.jpg

国道からは直接視認できないためか「隠れ滝」と名付けられた滝口からは前日までの大雨で飽和した水を一気に吐き出していた。落差105m、地響きを立てる水は風に乗って滝壺周辺に舞い散っていく。風向きによってレンズはあっという間に水滴に覆われまともな写真はなにひとつなし。 

国道425号隠れ滝2205route425020405.jpg
国道425号隠れ滝2205route425020404.jpg

もちろん服もずぶぬれ、それでも今日は夏を思わせる気温だったため涼むことができた。この滝、おそらく普段はここまでの水量はないのだろうが、隠れ滝という物静かで秘めやかな名称とは裏腹に迫力ある姿を見せていた。



国道は渓流沿いに下り続けており、まもなく坂本ダム湖のバックウォーターに達するはず。カーナビ地図上では既にダム湖を示す青いカラーリングがなされているが茶褐色の地面が続き一向に湖面は現れない。

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ようやく現れた湖面の水位は低く、緑色の山と対称的な茶褐色の帯がどこまでも続く。
そして再び滝。不動滝と名付けられた滝が注ぐ谷間を425号は古びた橋で渡る。

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国道425号不動滝2205route4250114.jpg

荒野を思わせる枯れた台地に緑の斜面から白い水が注がれている。先程見た隠れ滝と比べると非常に存在感がある。橋から間近に滝を望むこのような場所ならば景勝地として名をはせそうな立地だが、ここは国道425号、観光客どころか通過する車もはいるはずもない。

奈良県坂本ダム国道425号不動滝ドローン空撮2205route425drone02.jpg
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あれだけ雨が降ったにもかかわらずダム湖の水位は低く橋脚の高さだけがひたすら目立つ。橋脚上部には水の痕跡がわずかにあるが、あの位置まで貯水された姿も見てみたい。満水となったダム湖に直接注ぐと不動滝の高さは今の半分程度になるのだろうか。



ついに目的地へと至る怪しげな分岐点へ到着。ここに至るまで出会った対向車は2台、バイク数台。廃屋数棟。唯一人の気配を感じる民家一棟。
国道を離れダム湖沿いに続く県道へと入る。425号線を走ることなのか、それとも東ノ川を訪れることなのか、目的が曖昧のまま行程を消化してきたがもう迷うこと無く進むだけ。
しかし県道に入ると安定していた行程が一変、路面は荒れ始めた。前日までの大雨が作ったいくつもの深い水たまり、久しく車の通行がないのか路面には木の枝や落石が散乱、その都度車を停めそれらを撤去する必要がある。

県道228線廃吊り橋2205route4250116.jpg

数キロの行程を地道に進みカーブを曲がった瞬間、生い茂る木々の合間から白い建物が眼に入った。
廃校となった小中学校学校跡。尾鷲から約25km、大型建物の見あたらない大自然の中を延々と走ってきたためインパクトを感じる。

廃校奈良県上北山村立東ノ川小中学校2205route4250201.jpg
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入りはしなかったがネットで見る限り内部も落書きなどで荒らされていることでも有名な廃校。見るからに荒廃した雰囲気を醸し出しており、人為的がどうかは不明だが窓ガラスも全て割れている。
今日が新緑に包まれ涼しい風が吹き抜ける爽やかな季節で良かった。訪問日が木々が枯れ果てた真冬の曇天の日ならば悲壮感を感じていたことだろう。



西向きに建つ校舎は斜面を利用しているため、手前の校庭から入口まで急階段を登る必要がある。また入口から縦に伸びるラインなど外観の意匠も凝った印象を受けた。それにしてもこのような奥地にこれだけの規模の校舎が建設されたことに驚かされる。
廃校から少し奥へ遡った場所に目的地の集落跡がある。車を停め徒歩で向かう。

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山々が連なる紀伊半島最深部の谷底、ダム湖と斜面に挟まれたわずかな平地に無人の建物がひしめき合っている。見渡す限り他の集落や人工物の姿は一切眼に入らない。

廃村東ノ川ドローン空撮2204higashinokawadorone033.jpg

数多くの秘境集落や廃校を巡ってきたが、秘境集落の宝庫、紀伊半島においてもここまで隔絶された立地はなかなか見られないだろう。
かつて飛沫を上げる渓流が続いていた東ノ川、しかし現在は坂本ダムの貯水池となりよどんだ水をたたえている。当時東ノ川沿いにはいくつもの小集落があった。ここはその中にひとつ宮ノ平集落跡。



宮ノ平は簡易郵便局があったことでよく知られた集落だった。そのため先述したように様々な方のサイトで語り尽くされているため適当な写真を羅列。

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道に沿って平屋が並ぶ集落中央に建つ3階建ての建物。森林組合の建物のようだが、ガラス窓越しに中を覗くと選挙グッズが散乱しており、地域の公民館として利用されてきたのだろか。

東ノ川集落跡ドローン空撮2205route425drone04.jpg
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紀伊半島で見る廃村は、茅葺き屋根に代表される築100年以上を経て朽ち果て倒壊しているものも多く、その歴史を思わせるのものが多い。しかし宮ノ平集落は「廃村」というイメージの割に、他の地域で見る廃村に比較して建築様式など心なしか少し新しさも感じる。



そう、集落が作られたのはそれほど古いことではなく、1960年代の坂本ダム建設事業がきっかけだった。大台ヶ原に端を発する急峻な東ノ川は古くから電源開発の対象となり、ダム湖湛水によって東ノ川沿いに点在する集落が水没することが予想された。宮ノ平はそれらを集約、高台に移転させる代替地として与えられたものだ。
学校校舎、三階建ての建物。山中の集落規模にそぐわぬ大型建造物はダム水没の補償案件として必要以上に豪華に建てられたのかもしれない。

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建物はいずれも長屋を思わせる構造となっており、同時期にまとめて建てられたということがわかる。しかしダム完成からわずか数年で転出が相次ぎ、小中学校も休校に。その後も居住者はほぼ皆無という状態が長らく続き「廃村」となった。とはいっても現在も管理がなされているようで、廃校と比べ民家は荒らされておらず、我々が廃村にイメージする放棄され朽ち果てた集落とは違った印象を受けた。

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神社に参拝し集落を後、ダム湖沿いの県道はさらに奥地へと続く。念のため徒歩で先の様子を偵察するも路面状況はさらに悪化していたため、奥地へ進むのは諦め425号への合流地点へと引き返した。絶え間ない道路整備によって通行止めも現れず目的地まで到達できたことをありがたく思う。

廃村東ノ川宮ノ平集落跡ドローン空撮2205route425drone06.jpg

そういえば集落からの帰路、県道で1台の車とすれ違った。2時間前、落石や木の枝を撤去しながら車を進めたが、あのドライバーは苦労することなく集落跡へたどり着き、たいしたことはない道だなと感想を抱くのかも知れない。作業を自慢したい気持ちもあったが大きなお世話だろうし秘めておいた。先人の苦労を知らずに425号を走り、意外に楽だなとの感想を抱いた自分含め、お互い様なのだ。

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再び425号を西へ。そして尾鷲出発から5時間、45kmほどを走り下北山村の池原ダム堰堤上に到着し前半行程は終了。坂本ダムから425号に沿って延々と続いた池原ダム湖、谷間を埋める巨大な堰堤はその膨大な水を支えている。
掲載はしていないが、年末にも池原ダムを起点とする紀伊半島探索を行っており、その際以来。ここまで来ると交通量も増え、集落や商店、キャンプ場、また待望のコンビニ(24時間営業ではない)もあり、下北山村は小さな村ながらハードな行程の中で現れるオアシスのような場所だ、といつも感じる。

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過去通行止めに阻まれた国道425号線尾鷲〜下北山間区間をようやく走り抜けることができた。酷道とも証される悪路を覚悟して走り始めたが、実態は路面も悪くなく幅員もまあまあ、予想よりも走りやすかった。(牛廻越方面区間は何度か経験済み)

紀伊半島国道425号線地図2204route425map.jpg

とはいえ山道が延々と続く距離には辟易してしまう。また本日の走行箇所は全行程の1/3程度に過ぎず、一気に走破するには時間と忍耐力が必要だろう。国道425号はさらに西へと続くがそろそろ日暮れ、食料をコンビニで調達し、下北山村のどこかで今夜の車中泊ポイントでも探すか。

国道425号線マークlogo.png
翌朝は雨となった。車中泊していた車からもぞもぞと起き出すと十津川方面に向け国道425号西進を再開。

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霧に包まれる紀伊山地、昨日の晴天とはまた違った雰囲気だがそれはそれで趣があって悪くはない。いくつかの峠を越えながら対向車のまったく現れない雨の山道をひたすら西へ。時々425号を外れてみる。流れが美しい小さなダム。

奥里ダム2205route4250504.jpg
紀伊半島168号七色高架橋2205route4250506.jpg

近年改良が進む紀伊半島国道群。かつて大阪から熊野灘まで有した時間も劇的に改善されていく。急峻な地形を切り抜ける手段はトンネルか高架橋しかない。
山、霧、川。山水画を思わせる断崖に張り付く国道168号高架橋は紀伊半島を代表する土木の光景。近年、山肌に張り付く高速道路高架橋が続々と延伸されている中国の奥地を彷彿とさせる。

紀伊半島168号七色高架橋2205route4250507.jpg

ちなみに手前の黒ずんだ怪しい吊り橋は対岸にあった集落へと繋げるもの。集落は現在は廃村となっており、そんな新旧の光景も好きだ。



山中を走り続け十津川村あたりまで来ると天候が回復の兆しを見せ始めた。425号残り半分区間である牛廻超区間は過去何度か通行したことがあるのでそちらを残し、次の徘徊スポットへ向け進路を変更した。

[了]
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