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●2023年6月某日/温見峠と冠山峠。県境を越える2つの国道。

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岐阜県と福井県。
急峻な山々が行く手を阻み直接行き来できる車道はわずかしか存在しない。
そんな両県を細々と繋ぐ数少ない二本の国道がある。
「酷道」とも証されるその道はそれぞれ冠山峠と温見峠、2つの峠を越えている。
緯度、標高もほぼ同じ、双子のような峠のひとつ国道417号冠山峠越えを数年前に行った。
それに匹敵する難路と言われているのが東側の国道157号温見峠(ぬくみとうげ)ルート。
あまりに有名な国道であるが数多の通行止めに阻まれ
全線走破するチャンスがなかったが2023年ようやく挑戦することができた。
すると時を同じくして前回走破した冠山峠が通行止め。
帰路に使用しようと考えていたのだがうまくはいかないものだ。
温見峠ルート沿線には無人となったいくつかの集落が点在しており
これらを訪ね歩きながらついでに訪れた福井県の面谷鉱山とまとめて掲載。


※本記事は訪問時のものです。現在の状況は異なっている可能性もあります。

冠山峠温見峠地図2306gifunukumipassmap.jpg


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国道157号、岐阜県本巣市北の果て。青空と緑、そして対向車の姿もまったく見当たらない広大な車線。気分も高揚する素晴らしい出だし。「温見峠」と書かれた看板も真新しく、天候の良さも相まってか、峠までこのような道が続くと錯覚してしまうかのような光景。とはいえいつものことでそんなにうまく事は運ばない。わかって来ているのだが。



最後の集落を通過すると両側から山が迫り、ありとあらゆる警告が書かれた様々な看板とゲートが現れた。ゲートは開かれており、ここから温見峠越えがスタート、道幅は一気に狭まり、断崖上に作られた狭隘な道が続く。

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密集する木々の合間から眼下に太陽を反射する根尾西谷川がちらりと見える。視界が開けた広いスペースがあったため、車を停め渓谷を覗くと澄み切った清流が流れていた。

根尾西谷川2306nukumipass0103.jpg
根尾西谷川2306nukumipass0105.jpg
根尾西谷川2306nukumipass0104.jpg

真新しい路面や張り直したばかりの法面も多く、災害で崩れる度に工事が行われているのだろう。通行止めの多さも納得の国道。
このような道が峠まで延々と続くのかと思うと先が思いやられる。と考えながら車を走らせていると意外なことに根尾堰堤を越え渓谷地帯を脱すると谷間が広がり、国道157号は落ち着きを取り戻した。確かに国道らしからぬ道ではあるが先ほどに比べると荒れてもおらず、よくある山道。

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後ほど調べると、先ほどの狭隘な区間は根尾西谷川が蛇行し深い渓谷を形作っているため、沿線で等高線の間隔が最も狭まる箇所だった。逆に根尾堰堤から北側は等高線も緩み、川幅も広がるため余裕のある道路敷設が可能になったのか。

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国道は切通を作り、根尾西谷川に沿って北上を続ける。谷間が広がり、傾斜がゆるやかになったこのあたりの沿線には黒津、大河原と呼ばれる集落跡や廃校が残されている。



下記写真、一見ただの森にしか見えないが、杉に覆われた樹冠の下には10棟程の民家が点在している。これらは大河原と呼ばれる集落の跡地。国道から見た感じでは、木々の合間に見え隠れする建物はいずれもこぎれいでいわゆる「廃村」には見えない。

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温見峠廃村大河原集落跡ドローン空撮2306gifunukumipassd01.jpg

現在の大河原集落は完全に森に覆われており、紀伊半島の廃村の例に漏れず、ここでも離村時に植林がなされたのだろう。集落の横を流れる根尾西谷川右岸から下流にかけ続く平坦な箇所は耕作地だったようだ。これから越える温見峠はまだまだ先、写真奥の稜線鞍部のあたり。

根尾西谷川2306nukumipass0110.jpg

根尾西谷川は源流が近付いたはずなのに川幅は広く水量は豊富。時折現れる路肩に停められている車は、おそらく釣り人のものだろう。

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ここまでは比較的勾配がゆるやかな道中だったが、最後の集落、大河原集落跡を過ぎると国道157号は峠を目指しひたすら登りとなる。
ところで当サイトに登場する道はこのような道ばかりなので「難路、狭路が好きなのですね」と言われることがあるが、決してそんな訳ではなく、難路をバイパスできる楽な道があればそちらを選択したい怠け者人間。たまたま訪れたいマニアックな探索ポイントがあるのが奥地ばかりなのだ。



道中、路上を川が流れる「洗い流し」を何カ所か通過、窓を全開にしていたため、飛び散る冷たい水しぶきが心地よい。流れ込む沢で冷水に手を浸し休憩。

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次第に空の面積が広がり、雲が近付いてきた。やがて道路片側に路駐された車が目につき始めた。山中での路駐は駐車場が少ない著名な山の登山口でよく目にする光景、ということは峠も間近。

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到着した1,020mの温見峠は峠手前から路駐された登山者の車、バイクで埋め尽くされていた。混雑のため、滞在時間もわずか、そのためかあまり達成感は感じられず。数年前、写真すら撮らなかった冠山峠とまったく同じ状態。

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岐阜福井国道157号温見峠ドローン空撮2306gifunukumipassd02.jpg

分水嶺を越え岐阜県から福井県へ。峠から少し下った場所にスペースがあったため休憩。
夏を思わせる積雲。その下に広がる福井県側は原生林が密集する谷間が広がる雄大な光景。温見峠を越えた国道157号線は九十九折りを繰り返し山を下っていく。

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断崖沿いの道を下り続け、傾斜が緩むと久しぶりに建物が現れた。温見集落跡。温見川沿いの杉林の合間に民家らしき建物や小屋が散開している様子が国道から見える。こちらも先ほど同じく廃村とはいっても元住民の出入りがあるようで建物は手入れがなされているようにも見える。



自分の中での勝手な「廃村の定義」とは定住者がいないことはもちろんだが、人々からも忘れ去られ朽ちるに任せたままの集落跡を指す。岐阜県側から福井県側へと抜けた今回の温見峠越えにおいては黒津、大河原、温見、計三つの集落跡を通過したがいずれも、現在も元住民によって管理されている雰囲気があった。おそらく離村後も元住民が定期的なメンテナンスを行っていると思われる。

国道157号温見ストレート直線道路ドローン空撮2306gifunukumipassd04.jpg

温見集落跡から逆、北西側へと目を向けると不思議な道路が続いている。森や草原を突き抜けてまっすぐ伸びる直線道路。ここまで数時間、ひたすらくり返すワインディングが続いてきたため、このような真っ直ぐな道が現れたことが不思議に、そして美しく感じる。

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温見ストレート2306gifunukumipassd03.jpg
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直線道路周辺にはかつて周囲は整地された耕作地が広がっており、国道はその中心を抜けていた。現在は等間隔に植えられた杉が成長し並木道のような姿を見せていた。



この辺りが西へ4kmほど隔て国道471号と国道157号が最も接する地点。冠山峠と温見峠。酷道という俗称を有する国道が通過し、岐阜・福井を跨ぐ2つの峠はまるで双子のようにも見える。一方で冠山峠では現在直下に冠山峠トンネルが建設中であり、完成後は劇的に改善すると思われるがこちらはそのような浮ついた話は一切浮上せず。

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福井県側は森というより平地や草原が多く、視界も開けており走りやすい。さらに雲川ダムを越えた辺りから道幅は一気に広がり数時間ぶりに二車線道路へ。洞門やトンネルも整備され国道157号は一気に近代的な様相となった。

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熊河川に架かる旧道らしき古びた橋。その下を流れ込む冷水に浸かってしばらくの間川遊びにふけってしまった。



国道157号は福井県大野市に向けてまだ続くが目的であった温見峠越えは完了、結果振り返った感想としては、やっかいだなと感じたのはスタート直後、岐阜県側最後の集落から根尾堰堤までの区間。ここさえ突破してしまえば温見峠に向けて割と普通の山道となる。とはいえよく走る紀伊半島425号に比べ交通量は割とあるため、対向車への注意と待避場所の確認は常に必要だ。

冠山峠温見峠地図2306gifunukumipassmap.jpg

[面谷鉱山跡編]

そのまま157号で大野市街地へと下るのも芸がないので、九頭竜ダム湖方面へ大きくを変え山中に残された面谷鉱山跡を目指す。途中のキャンプ場脇で長らく一緒だった157号に別れを告げ、県道230号へと入り山道を延々と東へ、伊勢峠を越える。この沿線にも集落の跡が点在している。現在は跡形もないがこのようなマニアックな場所巡りをしていると目が肥え、地形や道の形状、あるいは石垣などから集落があった場所なのだなとなんとかく想像できるようになる。



九頭竜ダム湖。湖畔とぽかぽかと浮かぶ積雲。のどかな風景だが道はさらに悪化していくため、気を引き締める。それがここから入る鉱山へと続くダート林道。

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林道は渓流に沿って谷間を遡る。埃を巻き上げながらダート道を上り続けると谷間が広がり、赤茶けた荒々しい空間が広がった。砂防ダムが何段もの滝を作る川の左岸にはズリで形成された斜面。数年前ぶりの訪問となる場所。

福井県面谷鉱山ドローン空撮2307omodanimainefdorone.jpg
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ここは福井県の山中、かつて銅を採掘・精錬していた面谷鉱山跡。
城郭や曲輪を思わせる何層に渡って積み重なる石垣は、傾斜を利用し鉱石を選別する選鉱場と精製する精錬所跡。閉山後、建物は石垣や基礎を残して撤去され現在は荒涼とした荒れ地となっている。
足元にはカラミ煉瓦や錆び付いた金属片が散乱する遺跡のような場所。何度目かの訪問となるがその度に新たな発見がある。

福井県面谷鉱山ドローン空撮2306omodanimainedorone02.jpg

最上段にあるひときわ大きな煉瓦群は煙突基礎だったと思われる。銅の精錬においては排出される亜硫酸ガスが周囲の環境に深刻な影響を及ぼしていた。とはいえ環境問題は戦前においても決して放置されていた訳ではなく、煙害対策として煙突が作られたがガスは地面に滞留するため実際のところ余り効果がなく、周囲の谷間は現在に至っても草木も生えていない。このような光景は全国各地の鉱山跡で目にしてきた。
結局は煙突の高さを伸ばすか当時の対応策はなく、その結果、日立鉱山、佐賀関、四阪島のような見上げるような大煙突が作られた。

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九頭竜湖対岸では岐阜・福井を繋ぐルートのひとつ中部縦貫道の建設が進んでおりトンネルや橋梁の建設現場を見ることができる。冠山峠、温見峠に並ぶ、県境の難所、油坂峠はいずれ高速道路として供用されることを見越し壮大なS字型高架橋によって急勾配を克服した。こうして山岳高速道路がまたひとつ開通する。

[了]
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