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●2023年秋某日/崖上の寺。雨中の廃村徘徊。

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滋賀県と言えば無数の廃村となった集落が残されていることで有名だが
それらを訪れたのははるか以前、麓にまだ廃校校舎が残されていた頃の一度だけ。
普段は山中や地の果てに存在する秘境廃校をメインにしているため、
廃村には疎く特に滋賀県の廃村は既に多くの方が調査されておりその足元にも及ばない。
今回は滋賀方面に予定がありそのついで行った徘徊。
当日の思いつきだったため、先駆者のサイトを参考にしながら回ったものの
行き当たりばったりの徘徊となり当然のことながら時間切れ。
計画性に加え時間もなく、結果到達できた目的地は4箇所程度にとどまった。


※本記事は訪問時のものです。現在の状況は異なっている可能性もあります。

予定が終了、滋賀と言えば廃村である。見上げる山塊には数多くの無人となった集落が眠っている。
うまい具合に雨もあがり雨上がりの霧との組み合わせが見られそうだ。

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山裾を流れる霧の中から現れた寺。どこか幽玄的なものを感じさせられる光景。
境内の先には抜けた空間が広がり、天候さえよければ見晴らしのよい寺に見える。しかしそのまま歩いて行くと空中に飛び出してしまう。谷底を挟んだ対岸の斜面から現在地を見ると寺は断崖の際に建っていることがわかる。

 霊仙入谷集落了眼寺の崩落現場2310shigaabandonedvillage0103.jpg
霊仙入谷集落了眼寺の崩落現場2310shigaabandonedvillage0504.jpg
霊仙入谷集落了眼寺の崩落現場2310shigaabandonedvillage0501.jpg


崖から飛び出した本堂の一部、それを支える柱。一見、懸造り様式で設計された寺にも見えるが、もちろん当初からこの状態だった訳ではない。かつて本堂から左手の山手にかけては石垣張りとなっていた。おそらく豪雨によって石垣が崩落、かろうじて残った本殿も風前の灯火となっている。

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それでも応急処置が行われた形跡があり、頼りなさげな数本の柱によって本殿ごと支えられている。よく見ると屋根を支える柱を延長、崖の中腹を掘り下げ基礎となる簡易的な土台を設置したようだ。この柱が屋根どころか膨大な重量を持つ本堂全体を支える構造となっている。

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本殿正面側は地盤が深くえぐられたことで、床のコンクリは空中に突き出した雪庇のような状態となった。こちらを支えているのがさらに細い数本のパイプであり、そのまま進むと空中に飛び出す数m前に手前で自重によってコンクリごと崩れ落ちてしまいそうだ。

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一応境界線を主張する頼りないトラロープが張られてはいるが、側面から見るとロープのかなり手前の地下から既にえぐられているため近付かない方が良い。
手前にもかつては寺務所のような建物があったようだが、こちらも地面ごと崩落し建物は跡形もない。土砂は下の車道をも埋め尽くしたのだろう、道の擁壁には修復された形跡がある。

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崩壊寸前の寺があるのは滋賀県山中の無人となった集落一角。
ここに至るには急勾配の坂を登り続ける必要がある。森に覆われた薄暗い坂入口にはgooglemapにも丁寧に名所のような表記がなされている場所があり、道の両側に小屋が立ち並んでいる。

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霊仙入谷集落車庫群2310shigaabandonedvillage0301.jpg
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雨に濡れ黒ずんだ小屋。屋根の多くは緑の苔で覆われている。苔は昨夜から降り続いた雨水をたっぷり含み膨れ上がっている。
ここに至る道中、各所で民家も畑もない道路際に古びた小屋が建ち並ぶ光景を目にした。自宅から離れてはいるものの、荷物の積み込みが容易な道路沿いに自分用作業用小屋を接地する方法は土地が痩せた他の山岳集落でも見ることができる。この車庫群も寺を有する集落の住人のための物置小屋として使用されていたようだ。

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小屋群から集落へと繋がる細道には滑り止めの深い溝が刻まれ勾配の険しさを物語っている。
両側には古びた民家が斜面に密集、立派な土蔵も幾棟か目にした。最盛期には現在の倍近い戸数の民家が建っていたようだ。

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上へと歩き続けるとそれほど古くはない家、森に飲まれた家、倒壊した家、様々な状態の民家が混在していた。それら民家の合間からは石垣が顔を覗かせている。傾斜集落の家とわずかな耕作地は緻密に組まれた石垣によって支えられてきた。遙か昔から住人が代代行ってきたメンテナンスも担い手を失いやがて崩壊していく。

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寺では崩落を食い止めようと努力した様々な痕跡が見られるが、あくまで手作り的な応急処置。このままでは豪雨の度、もろそうな地盤は削られ続け、長い歴史を持つ寺も倒壊するだろう。寺を守るためには地盤全体を固定する大がかりな土木工事が必要となるが、無人集落にはどのように予算が投入されるのだろうか。 



川沿いの小道を遡りさらに山中の廃村へと向かう。反対側からはもう少しまともな山道もあったのだが、距離を優先に考え極細の山道を走り次の目的地へと到着。幸いなことに対向車も現れず。森の奥に無人となった民家が密集している。あまりにも有名な廃村。 

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滋賀県の廃村男鬼集落跡2310shigaabandonedvillage0401.jpg

ここでは大型トタン屋根の民家がほとんど。このような屋根の下には立派な茅葺きが封印されている。トタンをかぶせることによってメンテナンス困難な茅葺き屋根の寿命を伸ばすことができる簡易リフォームであり、田舎でよく見る。
それにしても道の両側に建ついずれの民家も雨戸が開け放たれ家具や調度品が並べられた状態となっており不思議でもある。

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滋賀県のイメージは一般的に琵琶湖の存在感のため「平面的」な印象が強いが、周囲は山々に囲まれており森の中には例の発電所跡や茅葺き廃村などが隠されている。またその地形故、緯度や標高の割に冬期には豪雪に見舞われることも多く、生活困難を理由に離村者が相次ぎ無人化、廃村となっていった。



午後、近隣山中に残る無人系の集落を訪れてはみたものの、住人が離村して間もないのかいずれも定期的なメンテナンスも行われている気配もあった。自分の中の勝手な定義では「廃村」とは完全に放棄され朽ち果てた集落を指す。午後に訪れた集落は廃村と言うよりも無人集落に近いため掲載はしていない。

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最後に少し離れた集落にあるいつもの医院跡に立ち寄る。谷底の傾斜集落の石垣上に古びた医院の跡が残されている。まるで城郭を思わせる壮大な石垣と大木。
山を離れ平野に下ると雲と霧が切れ日が差し込み始めた。見つけたコンビニで遅い昼飯を購入。青空の下、原色きらめくオレンジ色のコンビニ看板、近代的な店内。彩度の低い幻想のような不思議な時間は終了し、現実に引き戻された。

[了]

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