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●2023年秋某日/生まれる橋「河内川橋」、忘れ去られる橋、新旧の2つの橋を見る。


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対称的な2つの橋を見た。
最新工法で建設される巨大アーチ橋、河内川橋。
谷底で錆つき人知れず朽ち果てる吊り橋。
生まれる橋と忘れ去られる橋、新旧の橋を徘徊記録。
ちなみに2つの橋の関連性はまったくない。
夜、河内川橋、翌日には旧橋に達したため24時間以内に
両橋を目の当たりにすることとなり対称的な姿が強い印象を残したため。


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※本記事は訪問時のものです。現在の状況は異なっている可能性もあります。

秋空にそびえる曲線を描いた巨大構造物。神奈川県の山間部、新東名高速道路、河内川橋の建設現場は今まさにアーチ橋が繋がろうとしていた。2023年秋某日、工事は佳境を迎えている。

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張出し架設工法によって両岸からじわじわと空中へと伸びていく橋桁。先端にぶら下がる四角い箱の中で次のアーチ部材が作られており、せり出した部材同士はまもなく支間中央で触れあい、閉合、橋は繋がることとなる。
最終的には下記のような形状の橋ができる。また適当な絵を描いてみた。[下記]
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上り下り車線に分けられた2つのアーチ橋、河内川橋。川面からの高さは約125m。
閉合してしまえば自重で支え合い安定感のあるアーチ橋も、建設中の現在は曲芸のような絶妙なバランスで保たれている。現在の不安感ある光景も接続後「橋」となってしまえば二度と見ることができない。

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河内川橋建設現場のある秦野〜御殿場工区は新東名で最後まで残った区間でもある。新東名は計画から50年、着工から30年近い年月をかけ建設が進み残すところあと25kmあまり。
自分は新東名建設初期の頃から現場を追っており、15年以上前には「東西に伸びる新東名建設現場を何工程にも分けて巡る」という酔狂な試みを行ったこともある。その際に橋桁だけが建っていたいずれの工区もすでに開通、現在は時速120kmで車が走り抜けている。



河内川橋建設現場での見所は張出し架設以外にもある。それは橋脚足元の山裾に横たわる巨大な仮設インクライン。

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インクラインとは斜めに接地された作業用大型エレベーター。ダム建設現場など、作業現場への取付道路接地が困難な山岳部では見かけることもあるがここまで大規模なものは珍しい。
インクラインの脇にある懸け造りを思わせる緻密な鉄骨組み上げも見事。こちらは足場となる仮設構台であり完成後はもちろん全て撤去される。イラストの赤い部分がインクラインと仮設構台。[下記]
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インクラインが接地されているのは"河内川左岸。一方対岸の右岸斜面にはインクラインの代わりに斜面上の現場と地上を繋がる工事用トンネルが掘られており、地形故の工事の困難さを物語る。

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実際、丹沢山地を酒匂川と河内川が削り取った周辺は東西交通の難所でもあり、初代東名高速道路も、この谷間を越えるために酒匂川橋の建設を余儀なくされた。それから50年あまり、旧東名に平行して建設された新東名は用地買収を容易にするためか、その多くが山岳部に建設され、また速度維持と渋滞解消のためカーブとアップダウンを減らすべく、高高度の橋と長大トンネルが連続する。そのため難工事区間が続出、特に高松トンネルを有する神奈川工区においては、開通が計画から4年遅れと大きく遅延することとなった。

それにしても河内川橋建設現場はとある橋の現場と瓜二つにみえる。それは山梨県の早川町の山間部で人知れず建設中のリニア中央新幹線早川橋梁。橋の形状、現場への取付道路、インクラインの設置等含めどこか似ていないだろうか。
→[LINK



一旦谷底から離れ河内川左岸の車道へと入る。山裾に刻まれた急勾配の山道を車で登り続けるとやがて木々が途絶え視界が開けた。斜面に整地された茶畑が広がる点在する明るくのどかな光景。その背後に無数のクレーンが見える。

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しばらく農道を歩き橋を見下ろすポイントに到着、先ほどまでの谷底とは違ったアングルで工事を観察することができる。
手前の斜面に点在する民家と比較すると橋の規模がわかる。先端にぶら下がる四角い「箱」の中で次にせり出すアーチ部材が作られているが、箱自体も巨大で民家がすっぽりと収まりそうなサイズ。

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よく見ると上記写真の橋脚足元に右岸斜面現場へと続く工事用トンネル坑口が見える。工事用とはいいながらトラックも通ることができるかなりの大きさ。

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秋の日暮れは早い。吹き付ける寒風にさらされながら茶畑の農道をとぼとぼと歩く。最後のカーブを曲がると眼下に工区を俯瞰するポイントがある。
枯れ枝、電柱のシルエット、消えゆく道。その先の橋上に所狭しと接地された赤白の無数のクレーン、その先端に赤い航空障害灯が点滅を始めた。

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季節は進み冬の某日。夜の橋はまた雰囲気を変える。
谷底に広がる河原に立ち河内川橋を見上げる。やがて冬の星を背景に暗闇から橋が浮かび上がった。前回と比較すると工事は少しずつ進捗しているように見える。
夜空で点滅をくり返す航空障害灯。足元に目をやると滞留した川面に反射する航空障害灯は同じように点滅をくり返していた。

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河内川橋建設現場夜景2311kawachigawabridge0303.jpg
河内川橋建設現場夜景2311kawachigawabridge0304.jpg

伸び続けるアーチ、地下深くまで打ち込まれ膨大な重量を支えている太い橋脚、両サイドのタワークレーン。煌々と輝くライトに照らし出される建造物は曲線故かオブジェ的なものを思わせ、夜の風景も相まって近未来的なイメージを作り出す。

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新東名神奈川区間全線開通は2027年予定。法定速度も緩められている新東名においては橋長771mの橋ならばわずかな時間で通過してしまう。高台を前提に作られている高速道路では橋の存在には意外に気づきづらいもの。これだけ苦労して架橋したアーチ橋だが、走行中この橋の高さと偉大さに気がつくドライバーはいるのだろうか。



15時間後・・・。
水位が低下し泥のような川底が露わになった川。その両岸を跨ぐ古びた橋がある。よく見るとケーブルが曲線を描いており橋は吊り橋であることがわかる。地図上では「通行止め」となっているがその実態は完全な廃橋。

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十津川村風屋ダムの川津大橋2401kawatsuoohashi02.jpg

曇天の空、静まりかえる無人空間、渇水によって干上がり露出した泥、そして朽ち果てた橋。彩度の低い空間。わずか半日ほど間前、煌々と照らし出され未来感あふれていた昨夜の河内川橋とはすべてが対称的な光景だった。

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膨大なコンクリートが使用された重量感溢れる河内川橋、こちらは簡素化された吊り橋であり等目には人道のように見えるが、6.0t制限と書かれた標識が物語るようかつては車の通行も可能だった。
床板は板敷きとなっており、ここを車が通行していたとは驚かされる。現在ではその板も割れ、隙間から眼下の泥が透けて見える。



橋は地図上「通行止め」扱いだがその実態は完全な廃橋。迂回用の橋があるため、今後修理がなされることも復活することもないだろう。この先の林道も通行止めとなっており滞在時間中、一台の車も通過することは無かった。

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十津川村風屋ダムの川津大橋2401kawatsuoohashi04.jpg

橋の主塔周辺は絡みつくツタに浸食されつつあり、これが夏場ならば旺盛な緑によって視界のほとんどは塞がれていただろう。
ツタの合間から見た銘板には1960年と刻まれていた。施工者は電源開発とあるため、下流の施設建設に伴う代替路としてこの吊り橋が用意されたことが読み取れる。

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繋がろうとしている河内川橋、忘れ去れた廃吊り橋。両者とも当時最先端の技術力、土木力で作られたもの。しかし一方は経年劣化によって朽ち果てていく。過去と未来が交錯した橋の光景だった。

[了]
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