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●2016年5月某日/リニア建設予定地を訪ねる〜静岡工区編〜

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長野、静岡、山梨、三県にまたがる赤石山脈(南アルプス)。
日本第二の高峰、北岳を有する山脈とはいえ華やかな北アルプスと比べいささか地味な存在だ。
登山客で賑わっていた富士山や三位の穂高岳に比べ、閑散としていた北岳山頂が印象に残っている。
そんなマニアックな登山者を惹き付ける南アルプスに降って湧いたリニア中央新幹線計画。
Cルートに決定したリニアは南アルプス直下を貫通するトンネルによって駆け抜けていく。
いつものように建設予定地を訪れようと思ったもののリニア静岡工区へと
繋がる唯一のアクセス路、林道東俣線は一般車両通行止め。
往復50kmを越える山道をどのように走破していくか。
二軒小屋経由で静岡県最深部のリニア静岡工区を目指した今回は
過去8回のリニア予定地訪問の中で最も過酷な探索となった。


※JR東海のプレスリリース資料などから読み取った勝手な自由研究なので資料的価値はありません。

リニア予定地長野県大鹿村編
リニア予定地愛知県名古屋市編
リニア建設予定地:岐阜県中津川編
リニア建設予定地:岐阜県中津川編2回目
リニア建設予定地:山梨県早川町/山梨駅編
リニア建設予定地:長野県飯田市/長野県駅編
リニア建設予定地:山梨県/早川橋梁接近編


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本坑、先進坑、斜坑(非常口)、水抜き坑、残土運搬トンネルなど様々な地中建造物が大井川や支流直下を交差し建設されるリニア静岡工区は非常に複雑だ。今回探索を行うにあたり資料や報道を散々読んでようやく工事の全容が判明した。立体的な視野を持たねば全容は見えてこないと現状の計画案をとりあえず適当に絵にしてみた。南アルプストンネル予定地周辺の地下には既に各電力会社が敷設した導水管が存在しているためややこしい。


リニア静岡工区南アルプストンネル地図1605shizumap1.jpg


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リニア中央新幹線は長野、山梨両県へ割り込むように突き出た静岡県北端部の地下深くを南アルプストンネルとして横切るため静岡工区は人里離れた県最深部の山の中。予定地近くに建つ山小屋、二軒小屋までは林道東俣線と呼ばれる一本道が大井川に沿って延々と続いている。ところが東俣林道は一般車両通行禁止、ゲートで厳重に封鎖されている。

さらに南アルプス南部の特殊性、それは山の大部分は一企業の私有地となっていること。静岡県側から南アルプスを目指す登山者は企業が経営する各山小屋を予約後、送迎という名目で東俣林道を走るマイクロバスに乗車し登山口を目指す事になる。あまりにも手間がかかる行程ゆえ、北、中、南ア含め多くの山に登った自分も南アルプス南部だけはつい敬遠してしまい未だ足を踏み入れた事のない地帯。


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唯一の例外が徒歩。とはいえ全長約27kmに及ぶ林道を約片道5,6時間かけて歩くのも気が進まない。もちろん帰路も同じ道を戻ってくるため行程は往復54kmに及ぶ。
そんなとき偶然他の手段を知った。それは自転車での走破。東俣林道上の自転車往来は黙認されているようで実際に走破した方のブログなどがいくつも見つかった。自転車と言っても悪路が続く未舗装ダート林道のためMTB(マウンテンバイク)がメイン。とはいえ自分は10数年前MTBで数百キロを走ったのを最後に自転車からは遠ざかっている。そんな素人が上り坂が続くダート道を走り、再び戻ってくることができるのだろうか。


林道東俣線二軒小屋自転車ツーリング1605map06.jpg


●畑薙第一ダム
早朝5時。静岡県大井川の上流、畑薙第一ダムで夜が明けた。曲がりくねった漆黒の山道を走り続け到着したのは深夜1時。ここに至る途中、ダム湖畔に古びた民家が立ち並ぶ井川集落を通過した。この井川集落、かつて中央高速道路のインター候補地として名前が挙がったこともある場所。結局中央道は技術的困難を理由に南アルプス貫通を断念、現在の諏訪ルートへと迂回することで計画は立ち消えとなった。それから60年余、車ではなくリニアが南アルプスを突き抜ける事になる。


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南北に延びる山岳地帯、南アルプスを諏訪方面へ迂回する中央自動車道。かつて東西を最短距離で繋ぐため南アルプストンネルルートとして計画されたことがあった。しかし当時の技術では南アルプストンネルの貫通は不可能と判断され現在のような諏訪方面へ大きく迂回するルートで建設された。[地図参照]
当初計画されていた中央道の幻の南アルプスルート、まもなく着工するリニア中央新幹線のルートと驚くほど似通っていることがわかる。

一方でリニアも当初からすんなり現在のルートに決まったわけではない。当初長野県が要望していたのがリニアを北側へ大きく迂回させるAルート、通称諏訪ルートだ。すったもんだの末現在のルートに決定されたが、諏訪ルートから静岡ルートへ変更されたリニア、静岡ルートから諏訪ルートへと変更された中央道、まったく逆のパターンとなったのが興味深い。


リニア静岡工区ルート地図1607shizuokamap005.jpg

仮にこのルートで中央道が建設された場合の地図。南アルプスと交わるめためそのほとんどがトンネルとなるはずだった。勾配を克服するため緩いカーブが連続するルート。静岡県山中の秘境、井川地区から少し北寄りの地点には仮称井川インターが計画されていた。



山中や海辺に取り残されたような集落。そんな場所が自動車道通過による副産物としてインターチェンジが作られたことで恩恵を受けることがある。近年は山岳トンネル技術の発達で山を貫く自動車道が急増しており、走行中そんな場所を見かけることがある。近代的なインターが深い山中に突如できたことで一気に交通格差が解消された、四国、高知道の新宮インターが良い例だ。


さて当初の計画通り中央道が実現していたら井川地区はどのように発展を遂げたのだろうか。標高では引けを取らないものの、南アルプス南部が登山者で賑わう北アルプスとは対照的にいまいち人気を得られない理由は、なだらかで地味な様相と共にアクセスの不便さだと思われる。秘境駅ならぬ秘境インターチェンジ設置によって井川や椹島辺りは東京、名古屋などの都会から車で気軽に訪れることができる南アルプスへの登山基地、あるいは上高地のような避暑地として賑わったのかもしれない。増加する一方の車に夏場はマイカー規制がなされ・・・と勝手な妄想にふけってしまった。
とはいえ、諏訪方面の重要性は変わらずいずれは諏訪への分岐路が開設されたことだろう。

この幻の計画に関しては富士吉田線、あるいは計画を踏襲し着々と進行中の三遠南信道北部の一部にその名残を見ることができる。一方ほぼ同じ場所を通過するリニアだが地上に出ることはないため静岡県内に駅は作られない。




シュラフから抜け出し車中泊していた車から外に出ると早朝の冷たい冷気が体を包み込む。いかにも登山の朝と言った雰囲気を感じるのも久しぶりのこと。車に詰め込んでいた自転車を引っ張り出し、リュックに水食料を詰め込む。忘れてはならないのがリニア路全図や計画図、こいつがないとなんのためにここまで来たのかわからない。念のため携帯を見るとすでに圏外。



●林道東俣線起点/沼平ゲート
静けさに包まれた登山口沼平ゲート前。登山シーズンの夏場や連休は大混雑となる駐車場も今朝は数台の車が止められてるだけ。早朝のためかプレハブの監視所にも人の気配はない。とりあえず第一目標は約27km先に建つ山小屋、二軒小屋ロッジ。順調に進めばさらに奥地、西俣にある非常口建設現場も目指す予定。
通行止めからクマ出没とありとあらゆる警告看板が並ぶ厳重なゲート。この場所で一般車は通行止め。ゲート脇の隙間をすり抜け自転車で林道東俣線へと入った。数百メールほど進んだあたりで舗装路は終了、水たまりを避けながらダム湖畔の薄暗いダート道を慎重に運転していく。

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林道はしばらくの間ダム湖の水面に沿って進むため路面は多少荒れているもののアップダウンもほどんどなく非常に快適。久しぶりに乗るMTB、今のうちに悪路に慣れておこう。
かつての渓流、大井川も現在ではダム堰堤によって流れもなくよどんだ水を静かにをたたえている。そんなダム湖を渡る吊り橋は茶臼岳へのアプローチ。吊り橋脇には登山者のものなのか3台の自転車が置かれていた。 

畑薙大吊橋1605shizuoka0107.jpg
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出発から6kmほど、やがて両岸の幅が狭まり畑薙第一ダム湖は終了、畑薙橋で川を渡ると大井川右岸の断崖上につくられたダート道を登り続ける。この辺りから傾斜が始まり、先ほどまで真横にあった川辺は気がつくと谷底へ落ち込んでいた。早朝、日の光も当たらない深い谷底にそって林道は延々と奥に続く。


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しばらく進んで行くとリニア南アルプストンネルやそれに伴う斜坑などから排出された残土置き場の候補とされる場所が連続して現れる。上記写真の平坦な森もそのひとつ。一見木に覆われているように見えるがよく見えると裏手には空き地が広がっていた。これらの残土置き場予定地を詳しく見て回りたかったものの今回はとりあえず最深部の二軒小屋に無事にたどり着く事が第一目的なので横目で眺め駆け抜けた。
 


急峻な山々の間を蛇行し流れる大井川。人の手の入らない太古のままの姿を残す美しい河川、と書きたくなるものの実際のところ流れの大部分は人工的に管理されている。
植林伐採事業をはじめ江戸時代には既に人の手が入っていた大井川源流域。明治時になるとその豊富な水量が注目を集め急峻な傾斜を利用する水力発電所が次々に建設された。本流、支流問わず至る所で川が塞き止められ、水は山中を走る導水トンネルへ吸い込まれていく。そのため大井川の水位、水量は人工的に調整され、川沿いには時折勢い良く水を噴き出す放水路が現れる。

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今日の第一目的地、二軒小屋脇に建つ田代ダムに至っては本来大井川として流れるはずの水を山梨県へと運び発電後、別の川へと放出している。この水の権利を巡りかつて大いにもめた話を書きたくなるものの本題ではないので適当に。



日も当たらない深い谷もようやく朝の光に包まれた。畑薙第一ダムから川とともに進んできた林道東俣線は一旦大井川から離れ支流の赤石沢方面へと向きを変える。

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●中部電力赤石ダム 
畑薙第一ダムに続いて現れた赤石ダム。大井川ではなく支流の赤石沢をせき止めたもの。ダム湖は不思議な色の水をたたえている。山の中腹に建つ人工物はサージタンク、はるか上流で取水された水は地中の導水トンネル内を運ばれこの場所で落差300mを越える水圧鉄管内を落下し発電が行われる。


中部電力赤石ダム1605shizuoka0209.jpg
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中部電力赤石ダム1605shizuoka0211.jpg
中部電力赤石ダム1605shizuoka0212.jpg


それにしてもこの大井川水系、防災、発電、灌漑と用途は様々あれどダムの多さに驚かされる。深夜、川沿いを延々と車で遡ってきたが相次ぎ現れるダム堰堤によくもここまでつくったものだと逆に感心してしまった。



脆弱な地質の影響か多くの崩落箇所が目についた大井川沿いだったが道路周辺の崩落も目立ち始めた。崖や法面がいたるところ崩れ位置、応急処置はされているものの大雨でも降れば再び崩壊しそうな箇所ばかり。落石の直撃によってねじ曲がったり、あるいは完全に粉砕されたガードレールが痛々しい。路面には細かい落石が散乱、一般車両に林道を開放できない理由も理解できる。

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●牛首峠。
木々の合間から雪が残る山が見えた。これでも3,120mの高峰、赤石岳。山名を示す看板で初めて気がついた特徴のないなだらかな形状。

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かつて急峻な山塊を有していた南アルプスの山々は風化によって削り取られ地質的にはすでに老年期へとさしかかかっている。高さでは引けを取らないものの北アルプスに比べどうも地味なのはアクセスの不便さと共に、岩稜が続くいかにもアルプス!といった迫力に欠けているのが原因なのかなと想像してしまった。


リニア南アルプストンネル静岡工区地図1605map06.jpg


●椹島分岐点
分岐点とともに椹島(さわらじま)と書かれた看板が現れた。出発地点沼平ゲートと二軒小屋ロッジとのほぼ中間地点。川沿いの開放的な草原に山小屋や売店が立ち並ぶさわやかな場所らしい。こんな場所でぜひ休憩したいもの。
椹島へ向かう道は急な下り坂。これは楽だと自転車で一気に下り始めたものの100mほど下ったあたりでブレーキをかけ停止した。一旦川沿いまで降りれば帰路は再び急傾斜を登らねばならないのだ。そんな当たり前のことに今更気がつき自転車の向きをそっと変えた。



椹島を過ぎると渓流の音が近づき林道は再び大井川と合流した。リニア環境影響評価書によれば近辺にも残土置き場が予定されているはず。しかしいくら目をこらしても林道周辺に平坦な場所は見当たらず。このような場所で一体どのように土地を確保するつもりなのだろう。

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人の気配はまるでなく静まり返った林道東俣線でひたすらペダルをこぎ続ける。
木賊(とくさ)堰堤通過後、林道はほぼ登りとなった。普段自転車にはほとんど乗る機会もない素人なので急な登り坂が現れてもに挑戦する気持ちもなくさっさと下りて押し続ける。頭上を覆う木々のため強い日差しが遮られるのが救い。また車の往来もほぼ皆無、必死になって自転車を押す情けない姿を見られないのも幸い。

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今回リニア静岡工区探索を行うにあたり5月という時期を選んだのには理由があった。
山開き後の登山シーズンとなる7月以降ならば、狭い林道を登山者を満載したマイクロバスが土ぼこりを舞い上げ行き交う事になるためのんびりと遡行することはできなかっただろう。この日、往復57kmの道中ですれ違いあるいは抜かれたりした車は計3台。うち二台は親切にもわざわざ車を停め、この先荒れているから気をつけてねとアドバイスをくれた。
今後リニアの工事が本格派すれば林道上を残土を満載したダンプが往来、自転車や徒歩の通行も制限されてしまうかもしれない。


林道東俣線二軒小屋自転車ツーリング1605shizuoka0305.jpg
林道東俣線自転車ツーリング1605shizuoka0307.jpg
林道東俣線二軒小屋自転車ツーリング1605shizuoka0302.jpg
林道東俣線自転車ツーリング1605shizuoka0308.jpg
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林道東俣線二軒小屋自転車自転車ツーリング1605shizuoka0311.jpg
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林道脇や森の中に現れる倒木や滝。美しい光景に思わず歩みを止め見入ってしう。そんなわけで自転車は一向に進まず設定したコースタイムはすでに大きくオーバー。早めにゲートを出発しておいてよかった。


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●燕沢残土置き場予定地
急峻なV字の谷が突如開け平坦な土地が広がった。左岸には砂防ダムが幾重にも固める燕沢。この開けた土地にリニア南アルプストンネル本体や建設に伴う斜坑などから排出された膨大な土砂を積み上げる残土置き場が予定されている。本日いくつもの静岡工区残土置き場を通過したがその中でも最も大きな規模。

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地中に穴(トンネル)を掘れば当然土(残土)が排出されるもの。しかしリニア南アルプストンネルは山梨県早川町から長野県大鹿村を繋ぐもの。トンネル出入り口は存在しない静岡工区になぜ土砂が吐き出されるのか。
現在、長大トンネル掘削では出入り口以外にも様々な箇所からトンネルを掘り進める工法が主流となっている。全長25kmに及ぶ南アルプストンネルにおいても工期短縮に繋げるため各所からいくつもの斜坑を掘り進む。そのため本来トンネル出入口が存在しない静岡市にも千石非常口、西俣非常口と名付けられた二つの斜坑から残土が地上へと運び出される事になるのだ。


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あまりにも膨大なこの残土を山に挟まれた急峻な谷間が続く大井川水系の一体どこに積み上げるのか。当初は残土を山の稜線まで運ぶといった案も公表されていたが案の定廃棄、新たに計画される残土運搬用トンネルによって燕沢の空き地に持ち込む事に決定したと最近になって報道がなされた。

リニア静岡工区南アルプストンネル地図1605shizumap3.jpg


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●千石非常口予定地
静岡工区において南アルプストンネル先進坑に向かって掘り進む斜坑は二カ所。そのひとつめの現場予定地が近づいてきた。
場所は千石沢を越えたあたりの山の斜面、自転車を降り地形図とJRの資料片手に周辺を探索。すると森の中へ消えていく怪しい道が現れた。どうやら現場はこの林道を遡ったあたりのようだったがゲートで封鎖されているため残念ながら近づく事はできなかった。
帰宅後、google空撮で謎の林道を辿っていくと伝付峠まで通じていることがわかった。現在は廃道状態とはいえ、かつては標高2000m近い峠をトラックが走り回っていたというから驚きだ。


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千石非常口予定地から南アルプストンネル本坑まではかなりの距離がある。しかし地下深くのトンネル先進坑まで車両が通行できるよう緩やかな傾斜を持たせるためにこの距離が必要なのだろう。大井川の川底を抜けた斜坑は西俣川の直下でトンネル本坑に平行し掘り進められる先進坑と接続される。このような非常口が作られる山梨県早川町を先日訪れたがこちらでは早くも着工していた。

リニア静岡工区南アルプストンネル地図1605shizumap1.jpg


工事用斜坑はリニア運行後、非常時における乗客の脱出口として使用される。非常口と名付けられているのはそのため。それにしても着の身着のまま避難してきた乗客達はこのような山の中に飛び出す羽目になりさぞかし驚く事だろう。さらに奥にある西俣非常口は時折登山者が訪れるだけの南アルプス秘境の地。真冬なんか一体どのようなことになるのだろう。


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千石非常口予定地から川を遡ったあたり[上記写真]。この場所で先ほどの工事用斜坑が大井川真下を通過。このように静岡工区においてはいくつものトンネルが大井川やその支流の真下に掘り進められる。

静岡工区の問題点として残土と共に指摘されるのが「水」問題。リニア本体トンネル、先進坑トンネル、非常口トンネル、残土運搬トンネル。様々なトンネルが大井川や支流の川底に建設されるため川の水や地下水が抜かれてしまうのでは、といった懸念が以前から指摘されている。確かにリニア南アルプストンネルは静岡県西俣付近の地下で頂点を迎え東西の両坑口へゆるやかに傾斜しているため(下記参照)、湧き出た水は山梨県早川町と長野県大鹿村にある両坑口へ向かってトンネル内を流れて行く。
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かつて大井川を流れるはずの水が電力会社の導水管によって山梨県へと運ばれた事で渇水してしまった記憶が生々しい大井川沿いの住民にとってはシビアな問題。最近の報道によると導水路を新たに建設、トンネル内の低い箇所から頂点部分までポンプでくみ上げた水は12km下流の椹島付近で再び大井川に戻すことが決まったようだ。下のようなイメージなのだろうか。

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トンネル工事と出水とは切っても切れない関係。
伊豆半島の「丹那トンネル」建設を描いた小説「闇を裂く道」においては予想外の膨大な出水に翻弄される現場の様子が描写されていた。丹那トンネルがパイプの役割を果たし地中にあった膨大な地下水が海へと消え去り、真上に位置する丹那盆地は農業が衰退に追い込まれてしまった。
また昨年、青森県竜飛崎でキャンプを行った際、近くの岩場から勢い良く海に流れる湧水をなめてみると海水だった。[下記写真]実は真下を通過する青函トンネル内へ湧き出る海水を完成から28年たった現在もポンプでくみあげ海に流し続けているのだと言う。

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●二軒小屋ロッヂ
いつまでも続く上り坂に嫌気がさした頃、行く手は二つに分岐した。看板も見当たらずしばらく迷った末、右ルートを選択。結果こちらが正解だったようでしばらく自転車を漕いでいくと森の中にいつくかの建物が現れた。重機や車両が留め置かれた飯場のような場所。久しぶりに見た近代的?な空間。この場所が森林管理や林道管理を行う拠点なのだろう。

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二軒小屋と自転車1605shizuoka0404.jpg


続いて現れたロッジ風の大きな建物が二軒小屋。パンクなどのトラブルもなくようやくのことで第一目的地へとたどり着く事ができた。奥地探索や帰路のことは忘れひとまずほっとする。

標高1340mの建物周辺は山中に突然現れる桃源郷のような心地よい良い空間。白樺の木陰、通り抜ける涼しい風が心地よい。庭に置かれたベンチに転がり手足を伸ばすと寝不足もあって思わずうとうとしてしまった。シーズンともなれば次々に到着するシャトルバスが登山者を吐き出し、喧噪に包まれるだろう二軒小屋ロッジは静まり返っていた。



リニア予定地探索を初めて2年あまり、静岡工区探索が頭に浮かんだ当初は山開きとなる7月以降、登山客に混じりマイクロバスに乗って訪れるプランを考えた事もあった。
しかし調べれば調べるほどその条件がなかなか厳しいことがわかってきた。先述したよう二軒小屋ロッヂに二食付き宿泊前提でのバス乗車となるがその宿泊代金がなかなかお高いのだ。よくある山小屋相場と比べると結構厳しいものがある。とはいえ二軒小屋はその料金の高さもうなずけるリゾート地のような外観、山小屋と比べるのも失礼だろう。まあ自分は森の中にあったバラックのような小屋がお似合いだ。

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二軒小屋と自転車1605shizuoka0405.jpg


沼平ゲートから二軒小屋までは自転車を停めては地形図と照合し写真を撮りながら進んだため予定をオーバーする4時間余。30分ほどベンチで寝転び水食料を補給した事で疲労回復し現状を再確認。自転車もトラブルなし。気がかりと言えば寄り道が多かったため予定時刻を大きくオーバーしていることくらい。

リニア南アルプストンネルが通過するルートは現在地からさらに北上した西俣と言われる奥地。この谷間を目指し二軒小屋から第二ステージが始める。果たしてたどり着けるのか。

リニア静岡工区02へ続く


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