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●2016年5月某日/リニア建設予定地を訪ねる〜静岡工区編〜.02

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静岡県の最深部に位置するリニア中央新幹線静岡工区。
本線は地下深くを通過するためリニア自体は地上に顔を出す事はないものの非常口や宿舎が建設される。
現場は延々と続く林道の先にあるアクセス困難な山中に存在、
車両の通行も規制されているため唯一の訪問手段は自転車での走破。
そんなわけで片道27kmのダート林道を大井川上流へと走り続け途中に点在する
残土置場予定地等を見学しながら二軒小屋に到着した。
本日の第一目的は達成、しかしリニア本線予定地はこの場所よりさらに奥地。
涼しい風が吹き抜ける二軒小屋の空き地でしばらく寝転び体力も回復、
非常口や宿舎が建設される西俣と呼ばれる谷の奥地を目指し出発した。


前回の記事

※JR東海のプレスリリース資料などから読み取った勝手な自由研究なので資料的価値はありません。

リニア予定地長野県大鹿村編
リニア予定地愛知県名古屋市編
リニア建設予定地:岐阜県中津川編
リニア建設予定地:岐阜県中津川編2回目
リニア建設予定地:山梨県早川町/山梨駅編
リニア建設予定地:長野県飯田市/長野県駅編
リニア建設予定地:山梨県/早川橋梁接近編


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●東京電力田代ダム
地響きを感じるような迫力ある滝。大井川本流は二軒小屋ロッヂ脇で滝となって流れ落ちていた。この滝、実は尾根を削り取ってできた人工のもの。本来の大井川は田代ダムによって蛇行部分をせき止められたダム湖となっている。

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田代ダムは急峻な傾斜と豊富な水量によって電源開発の対象とされた大井川に数多く建設された発電用ダムのひとつ。大井川の水は地中の導水管を経て山を越えた山梨県へと流れ発電後、早川へと流される。早川は富士川の支流なので最終的に駿河湾に流れ込むという結果は変わらないが、本来大井川として静岡県を流れるはずの水の大部分は人工的に山梨県へ運ばれているということが前回の水利権の話に繋がってくる。

昭和初期のダム建設から70年余、紆余曲折を経て水量の一部は大井川へと返還される事となった。目の前で豪快に流れ落ちる滝もかつてはここまでの水量はなかったのではないだろうか。滝つぼへ近づくと舞い上がる水しぶきがファインダーを白くした。


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畑薙第一ダム横の沼平ゲートから始まった片道27kmにおよぶ林道東俣線走破もなんとか二軒小屋ロッヂまでは達成。リニア本線予定地まではあと一息。
この滝から第二幕が始まる。と思ったのもつかの間行く手は通行止めと書かれたゲートで封鎖されていた。ゲート脇にはわずかな隙間があるものの入って良いのものか気になったので二軒小屋へと戻り作業中の方にうかがうと、いいですよとの答え。

気を取り直し今度こそ出発。隙間に自転車をくぐり込ませゲートを抜け出した。真横の田代ダム堰堤を登りきると不思議な色の水面が目に飛びこんできた。赤石ダム湖面も不思議な色をたたえていたがこちらはさらに鮮やかな色。流れもなく滞留する大井川。水闘争の舞台になったとは思えないさわやかな光景だった。

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美しい光景にしばし心休まったのもつかの間、ダム裏のトンネルを抜けると登り坂が始まった。
暑い。畑薙ダムから二軒小屋までの東俣林道は頭上に生い茂る木々が日差しを遮っていた。しかし木々も減少、初夏の日差しが容赦なく照りつけ先ほどベンチで寝転び復活したはずの体力も再び失われていく。漕ぐ足を止めては水を補給しながら自転車を進めていくと橋が現れた。


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数十キロに渡り遡ってきた大井川本流は橋の真下で東俣川と西俣川のふたつに分岐している。
写真は東側へ流れる東俣川。

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当初JR東海より公表されたリニア計画案では南アルプストンネルに通じる西俣非常口から掘り出した残土は、トンネル内を運ばれ東俣川を渡り山々の稜線に運び入れる予定となっており実際に東俣川でもボーリング調査が行われていたようだ。
しかしこの案には無理があったのか結局中止とされ、残土は先ほど通過した燕沢へ専用トンネルを用い運び込まれることになった。そのため東俣川方面の訪問はなし。東俣川を遡った上流にはかつての林業の作業場跡や廃車、廃橋など、数多くの遺構が残されているようでいつかこちらも挑戦してみたいもの。

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橋を渡ると川と同じく行く手も二つに分岐(上記写真)。今回は西側にある西俣非常口予定地目指し西俣川方面へと足を踏み入れた。それにしてもげんなりするような登り坂だ。

リニア静岡工区南アルプストンネル地図1605shizumap1.jpg



分岐点を過ぎるとダート道の傾斜はさらに増していく。ペダルを踏み込む気力も失われひたすら自転車を押しながら一歩一歩進んでいく。奥へ進むにつれ林道はさらに荒れ始めた。
しかし地図を見ればリニア本線予定地まではあとわずか。

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いつ崩落するかわからない不安定なガレ場。崩れた土砂の合間に見える白いものは落石で粉砕されたガードレールの残骸。削られた路肩から眼下を覗き込めば飛沫を上げる渓流。足元を時速500kmの車両が走り抜けるとは思えないハードな光景が広がっていた。


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二軒小屋発電所まではダートとはいえ車道が通じているのは航空写真でも確認済み。[上記地図]
発電所からさらに奥、西俣深くにもかつて林業や堰堤建設のために敷設された車の通行可能も車道が存在していた。しかしその後時を経て廃道状態となり、西俣を訪れる登山者や釣り人は川を徒歩で渡りながら遡行していたようだ。
ところが最近リニア西俣非常口予定地へ通じる新しい林道が敷設されたとのこと。非常口予定地へは林道をたどり蛇行する西俣川を三つの橋で渡る必要がある。航空写真によればひとつめの橋は二軒小屋発電所付近にあるようだ。


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●二軒小屋発電所
新緑に覆われた山々の一画に見えた灰色の人工物、二軒小屋発電所。東俣川、西俣川上流の堰から地中の導水管で引いた水で発電が行われている。建物内からはブーンという低い音が静かに響いている。南アルプストンネルが通過するのはまさにこのあたり。

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この発電所真横を通過した道は眼下の西俣川へと下っていく。間もなく一つ目の橋が現れるはず。予想通り行く手に川を渡る茶色い橋らしき姿が見えた。あの橋を渡れば残りは平坦なダート道数キロを自転車で走るだけ。ゴールも間もなく。

それにしてもどこか感じる不思議な違和感。橋に近づきその理由が判明した。

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橋は崩落していた。

手前の覆工板だけが消え去っているため崩落というよりも通行を規制するため意図的に取り外したのかと思ってしまったほど。しかし自分が立つ林道も路肩が崩落、橋の手前十数メートルで道そのものが消滅してることから川の増水による災害の影響だろう。
ヤマレコでは2年ほど前、この橋を渡った登山者の記録があるので崩落はここ1年ほどのことだろうか。

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どちらにしろ西俣非常口予定地への唯一のアクセス路は遮断されてしまった。発電所付近に重機が一台停められていたものの修復に取りかかったような形跡は見当たらない。橋自体は仮設風なので覆工板を設置すれば復旧可能、しかし問題は十数mに渡ってごっそりと削られてしまった手前の路肩。足下を見ると細かい砂利が詰まった見るからにもろそうな地盤。素人目にはこちらの修復のほうが大変そうだ。



しかし困った。いよいよ佳境に入ったリニア探索はこの場所で足止め。なんのために苦労してここまで自転車を走らせてきたのかわからない。先行者が設置したと思われる立てかけられた木があるので、身一つならば橋上によじ上ることは可能にみえる。しかし自転車は引き上げられないだろう。川辺に立ち、西俣川の流れをじっと観察。水深は深いところで膝くらい。幅はそれほどでもなく浅瀬を選べば渡れそうにも見える。

かつての笹間渡探索など大井川を水につかり渉河した経験は何度もあるが問題は自転車。水中でバランスを失うのが怖く共に渡る気が起こらない。となると問題なのが残り時間。
目的地の西俣非常口まではこの先まだ片道数キロの林道が続く。自転車ならばたいした事のない距離も徒歩となると話しは別。今朝ゲートを出発した際、決めていた行動停止時間を大きくオーバーするのは確実。帰路は再び30kmのダート林道。パンク等万一のトラブル発生も考慮すると14時には西俣を出発したい。ヘッドライトは持参しているものの熊が出没すると噂される東俣林道を夜に走る事はどうも気が進まない。登山、探検において必ず決める行動停止時間を守るため深入りを避け川を渡るのを諦めた。



それでも諦めきれず橋の脇から周囲を見渡していると発電所裏手の断崖上にガードレールらしき白い帯がちらりと見えた。再び発電所に戻り周囲を探すと山側へ続く空間が現れた。[下記写真の山側]。かつて西俣奥地と二軒小屋を結んでいた本来の道の名残のようだ。落石が埋め尽くし奥の様子は窺い知れないがこれならばいけるかもしれない。

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石と背丈ほどの草に覆われた旧道に足を踏み入れた。「旧道」の様子は見ての通り。
自転車を肩に担ぎ転がる落石を乗り越えて進むものの出発からわずか数分で自転車を放棄することになった。石を乗り越え倒木を潜り草木をかき分け断崖上の廃道をたどっていく。しかし今日は靴を始め登山用の装備ではないため歩きづらい事この上ない。



悪戦苦闘しながら歩いていった廃道はやがて崩落とともに消滅した。普段の自分ならばものともしない程度の崩落なのだが本日は30km近いダート道を登り続けた自転車漕ぎによって疲れた体にはすでに気力も体力もなく大きな落石の上に座り込んだ。


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高台に位置する廃道から眺めると本来自転車で走る予定だった林道が西俣川対岸によく見える。
MTBならば走りやすそうなフラットダート。やはり無理矢理川を渡るべきだったか、まだ間に合うかもしれないと観察しているとカーブのあたりで路面に散らばる落石が見えた。[下記写真]まさかあちらも駄目なのか。


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気になったので崩落を乗り越え廃道を進みがけ崩れ全容が見えた。[下記写真]
最初の落石のさらに先、崩落した土砂が路面を完全に塞いでいる。砂が滑り出さない安息角ぎりぎりのきわどい状態。最初の崩落は迂回できるがこちらは無理だ。路肩も川の流れに削られ路面は1/3ほどしか残されていない。

万が一先ほどの第一仮設橋が残されていても結局はあの場所で行き止まり。自転車があるので川に下りての迂回も不可能。逆にこれであきらめがついた。この場所で今回のリニア予定地探索は終了。

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引き返す前にさらの奥地にある非常口を写真におさめる。はるか先に第二仮設橋の姿が見えるものの蛇行する西俣川によって視界が遮られ、第三橋は視認できなかった。非常口予定地はまだまだ先。



それにしても西俣非常口へと通じるアクセスの軟弱さは予想以上。崩落自体の規模はそれほどでもなく橋を直し、重機が入ればすぐに土砂を取り除くことができそうだが、路肩の復旧の方が素人目には困難に見える。今後、西俣非常口においてはまずは安定したアプローチの確保が課題といったところか。



発電所に転がしたままの自転車を回収すべく廃道を引き返す。現在地からは沼平ゲートに置いた車まではダート林道を約30km。さらに畑薙ダムから下界までは延々の距離、自宅到着は一体何時になることだろうか。
愛知、岐阜、長野、山梨と2年に渡って続いたリニア予定地探索の自由研究は静岡編で一旦区切り、工事の進捗を見計らい再び各所を訪れたいと思う。

[了]
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