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●2017年5月某日/知られざる廃墟 姉川発電所跡【後編】

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滋賀県山中に残された煉瓦づくりの廃墟、姉川発電所跡。
その存在を知ってから半年後、ついに現地を訪れることができた。
早朝の山中。川を渡り薄暗い森を歩いて行くと木々の合間に煉瓦造りの廃墟が現れた。

photo:Canon eos7d 15-85mm

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森の廃墟、姉川発電所跡。
建屋は連続する三つの部屋で構成されている。その中で最も大きい南端の第三室。屋根は抜け落ち、床は一面シダに覆われ荒廃しているものの、シンプルな作りだった他の部屋と比較すると明らかに作りが違う。
連続するアーチ状で形成された煉瓦壁面、明治大正期の発電所らしい天井近くの丸窓。意匠の凝り方から最も重要な区画だったことがわかる部屋。

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この場所がかつてタービンが設置された発電屋だった。施設閉鎖後、当然のことながら高価な機械類はすべて撤去されて建物内はからっぽの状態。足下にはかつてのタービン設置箇所と思われる深い穴。縁までシダに覆われているためぼんやり歩いていると落ちかねない。
当時の痕跡でもないものかと草をかき分け探しまわったものの、特に興味を引く物は残されていなかった。消え去った屋根の残骸も落ち葉や土に埋もれてしまったのか見当たらず。


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明治大正期に建設された発電所の魅力、それはその建屋の美しさにある。
大沼、曽木、地名、笹間渡、入善、三縄、八百津。これまでも北海道から鹿児島まで、各所に残された閉鎖された水力発電所跡を訪れてきた。その中でも黎明期に建設された発電所には例外なく非常に凝った装飾が施されている。


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電力という新エネルギーを産み出す発電所は明治大正期の人々にとっては最先端の存在であり、包み込む建築物にもそれなりのデザインが求められたのだろう。また技師と呼ばれた技術者達も選び抜かれたエリートだったに違いない。現在は見捨てられてしまった発電所も完成当初は山村で非常に目を惹く存在だったことだろう。



発電所は木々に覆われているため、斜面をよじ上りようやく全体像を俯瞰することができた。
次第に明るさを増し始めた森で草木に飲み込まれ静かに崩れ行く廃墟は遺跡のようにも見える。それにしてもこれだけの規模の廃墟が地元の方と水路マニアの方以外、ほとんど知られる事なく残ってきたことに再び感動してしまった。


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発電所、付属する二つの小屋、いずれも屋根は抜け落ち煉瓦壁面だけの状態となっている。
煉瓦造りの廃墟を各地で見てきたが、共通点は精巧に組まれた煉瓦の意外な強靭さ。一見崩壊箇所に目を惹かれてしまうが、逆に考えると竣工から100年余り、閉鎖から70年以上も風化に任せたままにも関わらずこの状態を保ち続け当時の建築水準の高さを物語っている。



帰宅後、いつものように国土地理院の過去航空写真をチェック。すると現在のgoogle空撮とは異なり、建屋が森に覆われる以前の発電所が映し出されていた。撮影されたのは閉鎖から約20年ほど過ぎた1961年、解像度は低い。

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画像を回転、拡大しシャープを上げていくと既に屋根はなく壁面だけの状態であることがわかる。建屋内に残骸が見当たらなかったことから、屋根は自然崩壊で消滅したのではなく、施設閉鎖時に資材として発電機と共に運び去られたのかもしれない。



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裏手の急斜面には水圧鉄管の痕跡となる土台が一定の間隔を持って頭上の森へと消えている。
姉川を数キロあまり上流へと遡った堰で取水された水はトンネルや橋を使い運ばれ山上から水圧鉄管内を落下、この場所で発電が行われていた。
先述したよう下流にさらに出力の高い水力発電所が建設されたことで、しばらくの間は導水管を分離する形で小規模な発電が行われていたものの、その後ほどなくして姉川発電所は閉鎖された。




やがて廃墟に朝の日差しが射し込みはじめた。彩度を増した赤煉瓦の壁に木々が長い影を落とす。

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日の光が射し込むと静まりかえっていた薄暗い空間がさわやかな空気に包まれる。吹き込みはじめた風、ざわざわと揺れる木々。鳥のさえずり。初夏の一日が始まり森は生き生きと動き始めた。


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木漏れ日に包まれた建物は雰囲気はあるものの予想通り撮りづらい。そろそろ帰るか、森の片隅に置いた荷物を回収。ひんやしとした薄暗い森から川辺に外に出ると、初夏の眩しい日差しが体を包み込んだ。

再び川を渡り対岸から先ほどまで自分が立っていた場所を振り返る。しかし廃墟は深い森によって覆い隠され、断片すら目にする事ができなかった。

[了]

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