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●2017年10月某日/北海道徘徊04〜日暮れの丘〜

  • 2017/12/17 21:11
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秋の北海道徘徊三日目。
宿から外に出ると目の前に広がる太平洋の水平線が白み始めていた。
夕張、道東を走り抜けた徘徊三日目は北海道南東にある海に面した町、大樹町で始まった。


photo:Canon eos7d 15-85mm

前回の記事

10月の北海道の日暮れの早さに驚かされたと書いたが、逆に言えば日の出は早いということだ。
午前4時50分、海際にある研修センターを改装した安宿で目を覚まし、結露したガラス越しに外を伺うと既に夜は明け始めていた。古びたドアを開け外に出ると冷気が体を包み込んだ。

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夜間降雨があったのか至る所にできた深い水たまりを避けながら草原を歩き海際の高台に到着。
夜が終わり、日が昇る直前の時間帯が好きだ。海風吹き付ける高台に立ち寒さに震えながら明けて行く空を見つめる。雨をもたらした雲は東へと遠ざかりつつあった。



宿には相変わらず管理人の姿はないためポストのような箱に部屋の鍵を放り込んで出発。旅先での宿や飯にこだわりのない自分にはこの適当さが良い。レンタカーで走り出す前に少しだけ散策。到着時は真っ暗、周囲の様子は何一つ窺い知る事ができなかったが夜が明けると視界が開けた。宿周辺は草原と海。番屋のような小屋以外、1棟の民家も見当たらず。

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それでは現在地、北海道の南東、大樹町海沿いを出発。
しばらく西へと走るとのどかな牧草地に違和感溢れる巨大建造物が姿を現す。ここ二日間、荒れ果て朽ち果てた空間ばかり巡ってきた自分にとって、シルバーの近代的な建物が眩しすぎるのは朝日のせいだけではなさそうだ。
この建造物は大樹航空宇宙実験場。JAXAや民間を始めとする各研究機関が使用している研究施設。



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奥には実際にロケット打ち上げ実験が行われた射場もある。ということは日本に3箇所ある射場のひとつ。内之浦実験場は訪れたことがあるので残りは種子島だけ。隣接する資料館を見学したかったが早朝のため、予想通り閉館していた。
未来感溢れる近代的な空間を離れ、いつものマニアック旅に復帰。航空写真で探し出した荒廃した廃校を訪れたもののいずれも背丈を超える草に覆われ近づく事は不可能、遠目の写真を数枚撮って退散。海岸に残るトーチカ跡にも向かいたかったが次の目的地が遠いため断念。時刻は午前9時過ぎ、早朝の慣らし探索も終了、そろそろ本日の目的地に向け始動するか。



本日のメイン、それは北海道中央部、日高山脈流域を流れる某川沿いにあるという現在は使われていない水力発電所跡。情報がほとんどないため場所も沿革も、今も残されているのか、全てにおいて謎の物件なのだ。
しかし出発前、google空撮を駆使し北海道を上空から調査すること数時間、ついに場所が判明した。場所は深い山中の川沿い。森に覆われた川岸の断崖に怪しいコンクリート建造物が映しだされている。急峻な森を谷底へと下る必要があるため山歩きの準備も万端済み。
十勝平野から日高山脈を超え、某川橋梁脇にある分岐点に到着。発電所跡はここから川に沿って続く古びた山道を10kmあまり下流へと南下した先。いよいよ探索が始まる、と思いきや道は災害によって車両通行止。
往復20kmを徒歩で走破する訳にもいかないので、ツーリングマップルを開き迂回路を検討。なるほど下流側からはたどり着くことはできそうだ。しかしそこまでが非常に遠い。かつての日本一周のような悠長な旅ならば即座に迂回を選択するものの今回は時間もゼロ。下調不足を反省し探索をあきらめた。いつか訪問すべく予定地リストに入れておこう。


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夕張市。初日の清水沢発電所見学に続き再び訪れた。
ここ数年、閉山や投資失敗に端を発する市の財政破綻が大きく報じられ「死んだ街」あるいは「廃墟の町」と表現されている夕張市。報道を鵜呑みにし、車の往来も人通りも皆無なゴーストタウンを想像し14年ぶりに訪れた夕張市、しかし予想に反し町は思いのほか賑わっていた。
昼時に入ったコンビニは客でごった返し、サッカー大会開催中の運動施設は満車、グラウンドでは大勢の若者が試合に高じている。また古びたホテルにも観光なのか、合宿なのか大型バスが多数横付けされてた。確かに町の片隅ではシャッター通りや廃屋、あるいは閉鎖された観光施設が寂れた姿を晒している。しかしこのような光景、夕張に限らず今や日本の地方では典型的なもの。



写真は閉鎖された石炭ガラス工芸館の廃墟。元々は北炭の発電所として使用された煉瓦づくりの風格ある建物だったのものを無理矢理メルヘンチックに改装した結果、案の定つぶれた。素人目にも安普請のイメージは否めないハリボテ感あふれる外観とは裏腹に、人目につかない裏手にはかつての雰囲気がかろうじて残されていた。現在ならば産業遺産としても注目されそうな建物だが閉山時にはそんな余裕もなかっただろうし仕方がないところだと思う。

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報道で見聞きしたイメージとは違い一見普通の暮らしが営まれる夕張市。雪に閉ざされる厳冬期となれば当然人通りは皆無となるだろうが、それは雪国ならどこも同じ。もちろん財務面や行政サービス低下に関しては確認する事ができないため一概に論じる事はできないが、見た目だけならば紅葉に彩られた夕張は思いのほか明るい印象だった。忘れられた空間を巡る自分はまったくもって人の事を言える立場ではないが、マスコミも同じく絵になる部分しか撮らないのだなと実感。



先日内部を見学した発電所を見下ろす清水沢ダムの古びた堰堤を進み森の小道へと入る。車の往来もないのか枯れ葉に覆われた道を進むにつれ2003年、初めて夕張を訪れた際の記憶が甦る。

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新緑に包まれていたこの道で出会った元坑夫という老人から炭坑について教わった事、確かさらに奥へ進んだ先には写真家のギャラリーがあったはず。
しばらく進むと予想通り小道の片隅に見覚えのある建物が姿を現した。赤い三角屋根が特徴的な建物は当時、夕張炭坑の遺構を撮りつづけた写真家のギャラリーだった。

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手書きの筆文字が殴り書きされた廃墟のような怪しい外観に怯え、おそるおそる入場したギャラリーは壁一面が夕張のモノクロ写真で埋め尽くされていた。確か清水沢発電所がプリントされたポストカードを購入したはず。しかし14年の時を経て建物には写真家の姿もなく本物の廃屋となっていた。


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「この場所にかつて街があった」
2003年の徘徊記録には確かにそう書いた。かつて炭坑によって2万人もの人口を抱えていた大夕張鹿島地区。広がっていたのは草原、廃屋、電柱、横断歩道。閉山後ゴーストタウンとなった街は痕跡だけが残されていた。しかしその場所を再び訪れる事はできない。なぜなら夕張川を塞き止める巨大ダムシューパロダムが完成、その豊富な貯水は旧大夕張ダム、三弦橋、さらに上流にあった鹿島地区も飲み込んでしまった。

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シューパロ湖0710hokkaido0309.jpg

旧道が水没したことで新たに高台に設置された新道から灰色のダム湖を見下ろす。鹿島地区へ続く旧道は立ち枯れた木々が並ぶ水中へと消えて行き、夕張川に架けられていた白銀橋の錆び付いたトラス部分だけが水面にわずかに顔をのぞかせていた。

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連なる丘陵が作り出す日本離した景観によってあまりにも有名な観光地、美瑛。
観光客を惹き付ける美しい景観は開拓者達によって人工的に作り上げられたもの。先住民居住区域を除きほぼ広大な無人地帯だった北海道の近代史は開拓の歴史。大規模な土木技術がない時代、この地に入植した開拓者は冬の寒さや泥流と格闘しながら彼方まで広がる森林を伐採、開墾していった。広がる丘陵地は開拓者の壮絶な苦労の末、作り上げられた風景であることを忘れてはならないと思う。


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今回も観光客が殺到するメジャーな丘には見向きもせず、いつものように自分の丘を決める。今回選んだ丘は出発前、地形図とストリートビューを駆使して決めていたもの。
美瑛が最も美しく輝く時間は夕刻。選んだ丘の西側には丘陵地が続くため、夕方になれば逆光によって地形が立体的に浮かび上がるに違いない。よくある「000の丘」に代表される変なネーミングの記載も見当たらず、マイナーさが自分にぴったり。



名もなき丘は美瑛川が削り取った谷底から急な坂道を登った高台にある。畑の中に作られた一本道を走り車から降りた。標高300mほどの小高い山頂から見渡すと他にも良い感じの丘が周囲に点在しているのが見える。欲を出して他の丘に移動したくなるがここは我慢、決めた丘に陣取った。予想通り観光客は誰も訪れない静かな場所。正確には一度だけ地元の方が通過、マニアックな場所を見つけましたね、と変なほめ方をされ単純なのでうれしくなる。 

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しかし天候はぱっとしない。到着から1時間あまり、丘の上を覆う暗雲は厚みを増し逆光どころか光がないため、立体感も彩度もない灰色の光景。
このまま何も起こらず日暮れとなってしまうのか。10月の美瑛は冷え込み、追い討ちをかけるように降り始めた雨を避けるため車内に逃げ込んだ。予定していた発電所探索が消滅したため時間もそれなりにある。休息時間もなく早朝から晩まで道東を走り回った怒濤の1日目、2日目とはうってかわりこの旅で初めて感じる静かな時間。日暮れも近づき次第に暗さを増す車内で、二日間の疲れもあってか目を閉じうとうとしてしまった。




ふと明るさを感じ目を覚ました。倒したシートから体を起こすと車の周辺にオレンジ色の光が射し込んでいた。

美瑛の丘夕日0710hokkaido0312.jpg
美瑛の丘夕日0710hokkaido0311.jpg


時刻は午後4時過ぎ、太陽が山の稜線に落ちる直前、雲にできたわずかな切れ間から漏れる光芒の一筋が自分の丘を照らし出したのだ。光の効果によって平坦だった美瑛の丘陵地、紅葉した森がオレンジ色に包まれみるみる立体的に浮かび上がる。


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あわてて車から降りると冷気とともにオレンジ色の光が体を包み込んだ。
車内からカメラを引っ張り出しシャッターを切る。しかし画像は一向にカメラ内に保存されない。本体裏のモニターを見て愕然とした。「カードがいっぱいです」
こんな時に、と思いながらドアを開け車内を探りさらに愕然とした。予備のCFカードを詰め込んだリュックは3時間ほど前にチェックインした宿の部屋に置いてきたのだ。光景は刻一刻と変化、夕日が稜線に沈むまで残り1分たらず。


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美瑛の丘夕日0710hokkaido0313.jpg


こうなったら仕方がない、やむを得ず3日間の北海道徘徊で撮った画像を片っ端から消去して行く。焦りながら消去と撮影を平行して行ったため手ぶれも多く、レンズを望遠に交換する暇もなく、使えそうなものはわずか数枚だけ。
この劇的な光景はわずか数十秒足らずで終了、日没と同時に雲の切れ間は閉じ、美瑛の丘は暗闇に覆われた。


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昨日に引き続き今夜も安宿。美瑛の丘に建つドミトリーに宿泊。10月の美瑛はシーズンオフなのかベッドが並ぶ相部屋に宿泊客は自分一人だけ。一方ドミトリーに移設するペンション側は海外からの観光客を中心に割と多くの客で埋まっているようだ。
ペンション側の客が優雅にコース料理を食べる中、横の談話室で閉店間際の美瑛のスーパーで買った割引弁当を食べる。わずか300円の弁当ながら、空腹のあまりうまさに感動してしまった。初日の夕飯はコンビニ焼きそば、昨夜はカップラーメン。昼飯は車を走らせながらおにぎりを片手で食べる。毎度の事ながら旅に出たとたん節約志向になってしまう癖は10数年前の日本一周時と変わらず。香港から訪れたという観光客とダラダラと話しながら北海道最後の夜は更けて行った。


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四日目。今回の北海道旅で最後に訪れたのが三笠市郊外にある奔別炭鉱跡。
昨夜宿でツーリングマップルを眺めながら進路を検討している際に目に入ったのが懐かしい「奔別」の文字。宿泊地美瑛からわりと近い、といっても80kmほどはあるが北海道の感覚だとわずかの距離に思えてしまう。北海道を訪れたのならやはりこの場所を訪れなければ。

地下深くへと続く立坑直上に立てられ人員、石炭運搬に使用された炭坑立坑櫓。炭坑のシンボルでもあった立坑櫓も採炭地であった北海道でも現在は数えるほどしか残されていない。かつて夕張、赤平、美唄、砂川、羽幌など道内に残された立坑櫓を見て回ったことがある。その中で奔別炭坑のシンボルであるH型立坑櫓は50m近い高さ、デザイン、バランス、存在感。いずれの面においても北海道に残された立坑櫓の中で最も優れていると思っている。いや道内どころか国内で残された立坑の中では福岡県の志免炭鉱立坑と匹敵する西と東の両雄だ。

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14年ぶりの訪問となる奔別炭鉱。周囲の建物や残骸が撤去されたため当時と比べ随分とさっぱりとしたものの立坑櫓は見事に残されていた。巨大な滑車が作り出す複雑な構造、爆発事故の痕跡、現在流行のやわな企業ロゴと対極をなす楷書体の錆び付いた「奔別」ロゴなど正直スマートさのかけらもない外観。しかし自分は迫力ある無骨な存在感に惹き付けられてしまう。
当時、自分のような物好き以外誰も見向きもしなかったこのような廃墟。近年は炭坑遺産として注目を集め周辺に真新しい説明看板が設置されるなど、自治体を挙げて遺構を保存していこうという心意気が感じられた。櫓に視線が行きがちな奔別炭坑だが周辺の街並も魅力的だ。鉱業所を中心に古びた民家が建ち並ぶ様子は、炭坑とともに育った北海道の原風景のようだ。そんな町も閉山後は衰退を重ねる一方だ。



4日間に渡り徘徊した北海道。1日目、廃墟に射し込んだ夕日、2日目、広大な大地での日没、3日目、曇天の丘での夕日など光が作り出す夕景に出会う事ができた。
満足感に浸りながら空港駐車場でレンタカーの返却手続きを行いながらリュックを整理、すると一眼レフレンズに付けられていたフィルターがなくなっていることに気がついた。車内のどこにも見あたらず、奔別炭坑のどこかで落としたに違いない。
またやってしまった。今年の夏、群馬県のダム建設予定地に落下させてしまい、道中見つけたカメラのキタムラで反省とともに購入した新フィルター。わずか二ヶ月で北海道の地に落とす。



数時間後、到着した本州の某空港は降りしきる冷雨に包まれ灰色の光景が広がっていた。
翌日には北海道各所で初雪を観測、一気に冬の装いに包まれた。

[了]

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