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●2018年5月/秘められた地中空間、伊豆丁場郡

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温泉、海、自然、B級スポット、そして廃墟。
さまざまな分野のジャンルが一同に会するマニアックな半島、
静岡県伊豆は石の一大搬出地でもあった事でも知られている。
海運によって運搬され江戸の城、街づくりとともに隆盛を極めた伊豆石も次第に衰退、
残された丁場と呼ばれる石切り場跡地は現在隠れた名所となっている。
そのうちのひとつ、伊豆半島南端にある加納丁場跡を見学する機会があった。
4年前に見学した伊豆半島西岸に残る丁場跡「室岩洞」と併せて掲載。

photo:Canon eos7d 15-85mm


●2018年/加納丁場編
伊豆半島南端の山中。案内人に続き廃屋が点在する道沿いから山に入る。木立に覆われた薄暗い山道をしばらく歩き現地に到着。山の斜面に苔むした巨大な石が鎮座している。その巨岩を割った狭い隙間から内部に入ると冷気とともに視界が開けた。
この場所がかつて採石が行われてた加納丁場と呼ばれる石切場跡となる。

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到着するまで丁場は洞窟のような空洞なのだろうと想像していたが、頭上を見上げると斜面を縦に切り込んだ回廊のような複雑な形状となっていることがわかった。露天掘りと坑道掘りが混在したような変わった工法。天井や側面にある隙間からはわずかながら太陽光が差し込みそれほどの暗さはない。
機械化がなされる以前から採掘が行われていた加納丁場は以前訪れた大谷石採石場跡(栃木県)や薮塚石切場跡(群馬県)のような規模はなく、手作り感あふれるこじんまりとしたサイズ。



側面の一枚岩を削り取り作られた石段。長い年月の間、一体どれだけの人がここを歩いたのか、風化し丸みを帯びた石段を登ると奥へと続く空洞が広がっていた。

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壁面に目をやると、ノミやくさびを使い石を切り出した生々しい痕跡が残されている。まるで地層のように一定の間隔をもって続く美しい水平ラインは、地表から地中へと膨大な年月をかけて岩を人力で掘り進んだ痕跡だ。ある程度の大きさに切り出された石は形を整えられると、山道から海へと運ばれていた。


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絶妙なバランスで膨大な天井の重量を支えているわずかに残された岩柱、洞窟のように掘り進められた穴などは上下左右、様々な方向へと入り組む複雑な形状。このような切り出し方から察するに加納丁場は、計画性をもって採掘されたというよりも試掘を繰り返しながら切り出し作業を行っていたように感じられるが、逆にそれがこの場所の魅力となっている。



●2014年/室岩洞編

湊海軍病院跡はじめ伊豆のマニアックな場所を巡りながら沿岸部を移動。西海岸を走り続け、目的地であるかつての丁場「室岩洞」が近付いてきた。ところが、一向にそれらしき場所は見当たらず気がつくと松崎町中心部まで降りてしまった。普段からガイドブックや地図に載っていない怪しいスポットを探す身。このような観光地すぐに見つかるだろうと油断し場所を調べてこなかったのが悪かった。彷徨った末街中でUターン、「室岩洞」と書かれた看板を無事見つけることができた。



現在地は眼下に駿河湾を望む断崖上。山側のわずかな駐車スペースに車を停め急な山道を下って行くと人工的に削り取られた崖が迫ってきた。丁場と呼ばれるかつての石切場の跡。比較的柔らかいとされる伊豆軟石は伊豆半島南西方面に多く分布、ここも加納石切場と同じ地質にあたる。

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壁面に空いた縦長の穴が室岩洞入口となる。山の斜面を割った加納石切場と違いこちらは完全に「坑道」状態。とはいえ一般般公開されている場所でもあるため蛍光灯もわずかではあるが灯っていた。



薄暗い蛍光灯に照らし出された坑内。低い天井、ノミで掘られた生々しい掘削の跡、地下水で黒ずむ岩肌。直線、直角で構成された湿り気を帯びた坑内は松代大本営跡を彷彿とさせる雰囲気。この日は他の客は皆無、薄暗い穴の中で探検気分を満喫する事ができた。

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室岩洞内にわずかながら設置された蛍光灯は寿命が近いのかいずれも点滅を繰り返している。これらの灯りは夕方になると自動消灯すると書かれている。いきなり周囲が闇となった場合、落ち着いて戻ることができるか自信はないが観光客もほとんど訪れないため管理人を常駐させるわけにもいかないのだろう。
しかし逆に考えれば派手な照明に照らし出される観光鍾乳洞や観光坑道と違い当時の雰囲気を再現する一躍を担っているとも言える。

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闇に包まれた坑内でも苔やシダなどの植物が細々と生息している。生息場所は蛍光灯からの光が届く範囲に限られているが光量の減少とともに次第に減っていく様子が光合成を絵に描いたよう。



坑内を右往左往しているとわずかな外光が見えた。身を屈め石垣が積まれた隙間から抜け出すと海を見下ろす高台に出た。室岩洞から掘り出された伊豆石はこの隙間から外部へと搬出され入り江に付けた舟へと積み込まれていたという。伊豆石は柔らかく切り出し、加工が容易なのだと書かれているものの、柔らかいとはいえ石は石。当時の苦労が偲ばれる。

伊豆室岩洞1402muroiwa03.jpg

一般客をターゲットにした観光地にしては放置具合が魅力だった室岩洞。帰路ジオパークを目指すと書かれた看板を見かけた。今後室岩洞がジオパークに登録ということになれば坑道の整備が勧められて行くのだろうか。
伊豆には紹介した場所以外にもまだ多数の丁場が残されている。再び伊豆を訪れる機会があれば探索してみようと思う。

[了]

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