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●2019年3月某日/知られざる長野県山中の「青い池」

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空一面を覆う灰色の雲、ちらつく雪。
思わぬ寒波の影響で冷気に包まれた初春の長野県山中。
枯れ果てた冬の林道は彩度のない茶色の世界が続く。
散らばる落石を撤去し、えぐれた路面を避け、タイヤに絡み付く枯れ枝を外しながら
荒れた急勾配のダート林道をひたすら上り続けた。
目的地はその先にある知られざる青い池。


photo:Canon eos7d 15-85mm
※本記事は訪問時のものです。現在の状況は異なっている可能性もあります。



3月某日長野県山中。閉鎖された採石場跡脇から分岐し森に消え行く怪しい林道。車でしばらく登り続けるとやがて舗装は途切れた。
冬の間、覆っていた雪が消え去ったばかりの路面は思いのほか荒れていた。転がる落石、散乱する枯れ枝、凍結した窪地。そんな人気のない林道の急勾配を登り続ける。高度は次第に上昇、振り返ると雪をかぶった山脈が遠方にうっすらと見え始めた。そろそろ目的のものが現れるはず。

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やがて周囲を覆っていた木々や枝が途切れ視界が開けた。現在地は木々が伐採された山の斜面、左手には沢がえぐった谷がある。その谷底に、今いる世界とは対称的な色が見えた。

その鮮やかな色に目を疑った。
人の手によって絵の具かペンキを流し込んだかのように見える青い水面が、茶色く枯れ果てた冬の谷間を埋めている。それは濃いコバルトブルーの水をたたえた小さな池だった。

長野県筑北村青い栃平ダム湖青い池1903Bluepond09.jpg
青い池1903Bluepond02.jpg

早朝からどんよりとした灰色の雲の下、廃校や採石場跡を回り薄暗い光景を目にし続けていたため、このような鮮やかな色彩に目が慣れておらずなんだか現実感が湧かない。



ここが目的地、長野県の「知られざる青い池」。
この青い池を訪れるのは今回が初めてではない。遡ること5年前。当時、例によって怪しい場所を探すべく長野県上空をgoogle空撮で彷徨い中、山間部にある青い色が目に留まった。画面を拡大して行くと上空から俯瞰で捕らえられた森の中の青色の正体は小さな池であることがわかった。地図上には池の名称も書かれていない。自分が調べた限り、web上にも池に関する情報はほとんど見当たらないためがぜん興味が湧いてきた。

このような青い池、南国の海に代表されるように日差しが強まる夏場がより際立った青色を見せるに違いない、と訪れたのは空撮での「発見」から半年ほど経った2014年の夏、よく晴れた日だった。しかし現実に見た池からは期待していたほどの強い印象を受けることもなかった。

その理由はいろいろと考えられる。
・夏場は周囲に生い茂る木々の葉によって池の眺望自体がきかない、
・夏場は自然界が最も高い彩度を放つシーズンであり、濃い緑や、夏空の下では青い池も目立たない、
・水温上昇によって微生物や水草が発生するため透明度が低い。あたりではないだろうか。

長野県筑北村青い栃平ダム湖1903Bluepond06.jpg

青い池1903Bluepond03.jpg


一方本日は雪がちらつくどんよりと曇った初春。外気温は1度。夏場とは対照的な環境となっている。
しかし今回五年前と比べはるかに際立った印象を持った。茶色く冬枯れた彩度の低い風景の中だからこそ青い色彩が映えるのだろう。
池自体の彩度、濃度も夏場に比べ非常に濃い。経験上、このような青い池や川、冬から春にかけて青の濃度が増す傾向が高いように感じる。山間部では冷えた雪解け水が影響しているのかもしれない。また池によっては青い空を反射し湖面の青さを作り出すタイプ、天候に左右されないタイプの青い池があるように感じる。



デジタル一眼レフを使っているにも関わらず面倒くさがりという性格と、重いデータが嫌だという理由で、RAW撮影はほとんど行わない。そのため今回掲載した池の写真も全てカメラからのJPEGデータを貼付けただけもの。池の青さを増す等、よく行われる彩度強調は行っていないそのままの写真となる。

ただし先述したように池の青さや透明度は季節、日照、順光、逆光、風量などの外部要因によって大きく変化するため次回訪問時に同じコバルトブルーの湖面見る事ができるのかは保証はできない。5年前の夏場は下記のカラーチャートのようにコバルトブルーというよりも緑がかったターコイズブルーに近かった。

1903color.jpg

栃平沢砂防堰堤1903Bluepond08.jpg



近年青い池や透明度の高い川が人気を集めている。普段は怪しいスポットを中心に徘徊する自分だが、実は透明度の高い水に代表される「奇麗」な風景に興味を惹かれるという別の趣味も併せ持つ。
普段その辺りのネタはあまり掲載しないのだが、いろいろとたまってきたので5年ほどの間に出会った不思議な水面の色まとめ。

透明度の高い青い海川1803bulelakeseacolor.jpg
01.02/嘉比島(沖縄県)・03.04/座間味島(沖縄県)
05.06/柏島(高知県)・07/石垣島(沖縄県)・08/竹富島(沖縄県)
09/伊豆白浜海岸(静岡県)・10/日高川(和歌山県).11/椿山ダム(和歌山県)・12/丹後半島(京都府)
13/熊野川(和歌山県)・14/角島大橋(山口県)・15/福江島(長崎県)・15/福江島高浜海岸(長崎県)
17/銚子川(三重県)・18/小原ダム(富山県)・19/ 小森ダム(三重県)・20/二木島(三重県)
21.22/伊奈川ダム(長野県)・23/福江島(長崎県)・24/美瑛青い池(北海道)
25/仏ヶ浦(青森県)・26/野崎島(長崎県)・27/新鹿海岸(三重県)・28/阿寺渓谷(長野県)
29/板取川(岐阜県)・30/田代ダム(静岡県)・31/別府弁天池(山口県)・32/鳩谷ダム(岐阜県)



上記一覧のように青い海や青い池といってもその色彩は様々。同じ場所でも季節や時間帯によって色は様々に変化する。ちなみに海や川、池など透明度の高さや色彩をより視認した場合は近隣の高台からの俯瞰がおすすめだ。目線が湖面や水面に近付くほど色合いや透明度は落ちる。ここでも枯れ草をかき分け湖面まで下ってみたが予想通り色合いは薄れ「普通の池」となってしまった。




再び長野の青い池。最も青さが際立つのは水深が深いと思われる箇所。まるで絵の具を流したようにも思えるその青さ故透明度もほとんどない。一方岸が近づき水深が浅くなるにつれ青色は濃度を薄め水草が漂う湖底の様子を見る事ができる。

栃平沢砂防堰堤1903Bluepond04.jpg


先ほどから何度も「青い池」と書いているがこの池、正確には自然にできたものではない。
谷底を流れる沢を堰堤がせき止めできたダム湖となっている。ダムといっても電源開発に代表される大規模なものではなく堤高20m程の中サイズの砂防堰堤、いわゆる砂防ダムだ。航空写真からダム湖のサイズを計測すると100m×120mほどの小さなもの。
ダム湖には隣接する標高1,300mほどの山から三つの沢が流れ込んでいる。青さは流入する河川水に含まれている鉱物の影響なのだろうかと、後ほど下流を流れる川をチェックしたが、いたって普通の水だった。


長野県筑北村青い栃平ダム湖青い池1903Bluepond07.jpg
栃平沢砂防堰堤1903Bluepond01.jpg


このダム湖、不思議な事に竣工から10年以上経過したにもかかわらず国土地理院地形図には掲載されていない。地図上に池はもちろん砂防ダム特有の「堰」を示すマークも見当たらない。今回の池滞在時、横の林道を通過する車はもちろん一台もなく、また地図にも掲載されずまさに知られざる青い池。
いずれ再訪問するつもりだが、その際にはどのような色合いを見せてくれるのだろうか。



今回の池が存在する同じ長野県には「天空の池」と名付けられた山上の小池がある。→[LINK

2015年の初訪問時、この場所を紹介するサイトは三つほどしか存在せず、ほとんど無名状態だった天空の池。しかし数年後、天空の池はブレイクし現在は雑誌にも掲載されるまでに。
池の青さが今後も続き世間に「発見」されてしまうといずれ人気スポットとなるのかもしれない。


[了]
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