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●2019年3月某日/春を待つ廃校

  • 2019/06/11 22:50
  • Category: 廃校
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雪に覆われた廃屋が点在する長野県山中の廃村。
冷えきった三月某日、凍結した真冬の林道を歩き続けた奥地に
厳冬期を耐え再び春を迎えつつある木造校舎が人知れずあった。

photo:Canon eos7d 15-85mm

水をたたえたダム湖が連続する長野県梓川。
北アルプスから長野平野へと流れ込む急峻なこの川には電源開発を行うべく戦前からいくつもの発電ダムが建設された。そのため川は流れもなくよどんだ姿をみせている。

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灰色のアーチダム堰堤脇を抜け主要道から外れると、湖畔に迫る斜面に作られたつづら折りの道を車で上り続ける。ダム湖を遥か眼下に見下ろす頃、斜面に密集する民家が現れた。この集落はダム建設時に沈んだ村の移転先として作られたものだ。



集落を抜け林道を走り続けると周囲の光景は真冬の様相に変化、除雪はされているとはいえ進めなくなるのも時間の問題。やがて行く手は冬期車両通行止の看板とともに封鎖されていた。車を脇に停め徒歩で先を偵察してみたが路面はこの有様。おそろしい凍結具合。

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ここは素直にUターン、しばらく林道を引き返し路肩の空き地に車を停め徒歩で目的地へ向かう事にした。
風もなく、生き物の気配もなく、もちろん一台の車もなくしんと静まり返った雪の林道を歩き続ける。冬の山がこのように静かなのだと初めて知った。雪にはあまり縁のない地区の人間なのでひたすら珍しい光景。



やがて周囲に古びた民家が次々に現れた。雪に埋もれたその全てが廃屋。先ほどのダム移転によって作られた集落と違いこれらはさらに古くからあったもの。現在は住民が山を離れたことで廃村となった。目的の廃校もこのどこかにあるはず。集落片隅には林道から外れ、山へと続く登山道があった。

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深い雪に足を取られつつ急な雪道を登って行く。地面を覆っていた雪は次第に消え去り茶褐色の地肌が露になった頃、行く手の森に廃屋が見えた。これが目的の廃校なのか。しかし見上げた斜面上には門柱らしきシルエットが見える。ということは学校はこの先。
杉林を登りきり古び傾いた門柱を抜けると急傾斜の尾根を削り作ったわずかな平地に古びた木造の建物があった。廃校となった分校跡へ到着。

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建物は校舎部分と民家風の建物がL字型に連結された構造となっている。民家風の建物はおそらく教員住宅だろう。校舎に設けられた薄汚れた窓ガラスを透かし中を覗き込むと三つほどの教室がぼんやりと見える。
うまい具合に窓ガラスが破れていたり、窓枠が開いたままの箇所がいくつかあったのでそこからそれぞれの教室跡の様子を見ることができた。
最も南側の教室。がらんとした一見殺風景な教室の真ん中にバランス良く木製の椅子と机が配置されている。中央への配置、少しずれた椅子、窓枠から撮った割にはできすぎた構図。

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他の教室にも同じようにわずかな机が置かれている。残された机の数が閉校間際の生徒数なのだろうか。北側の教室には古びたオルガンが残されているのが見えた。



標高1,200m、車での乗り入れはできない尾根の斜面に張り付くように立地する廃校。頭上を見渡すと冬でも葉を茂らした杉の木立に赤い屋根の上を覆われているため空撮にも捕らえられていない。枯れた木立の合間からはわずかに冠雪した北アルプスの山々を望むことができた。

設置されていた寒暖計を見ると既に昼過ぎだというのに氷点下5度を指していた。汚れた窓ガラス越しに見える黒ずんだ大型ストーブがこの地の冬の厳しさを物語る。厳冬期にはストーブに赤々と灯を点し授業が行われていたことだろう。


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廃校となり人が去ってからも何十回ともなく繰り返してきた冬の季節。この冬も無事に乗り切った廃校だがいずれ人知れず雪の重みで倒壊してしまうのだろうか。



再び冬の林道をひたすら歩き車を回収。川を下り麓にていつくかの建築を見学。
1950年代に建設された刑務所跡。半年程前、新潟県佐渡島で拘置所跡を見学したことが竣工時期はほぼ同じためか構造始め非常に似たつくりとなっている。先程過ごした山の廃校も寒かったがこちらはさらに底冷えを感じる空間。

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薄暗い電球に照らし出される歯車や木で組まれた繊細な機械。
これらは生糸の製糸場跡。生糸は明治大正期におけるメイン産業であり長野県にも多数の生産拠点があった。当時日本の輸出品とはいえば現在のような製造業は皆無、ヨーロッパの不作も影響しこのような工場で生産された生糸が外貨獲得の手段となった。

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本工場は富岡のような大規模なものではなく、主に国内向け生産だったもの。工場閉鎖後ここに移設された。自動化される以前、手作業中心だった当時の雰囲気がよく残されている。


[了]
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