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●2020年11月某日/晩秋の旧街道、大平宿跡。

  • 2020/12/05 22:22
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長野県山中にある大平宿はおそらく日本で最も有名な廃村のではないだろうか。
自分が「廃村」という存在を初めて知ったのも大平宿だ。
子ども時代、なにげなく読んだ雑誌にいろり端で宴会にふける知り合いの大学生の写真が掲載されていた。
その建物がある場所が大平宿と呼ばれる無人となった村、いわゆる廃村であると説明が書かれていた。
しかし大平宿は自分が好むいわゆる放棄された場所ではなく
「整備された廃村」「観光地」のイメージが強かったためこれまで近付くことはなかった。
ところが今回、たまたまキャンプ場ロケハンに近隣を訪れたついでに大平宿に
寄ってみたところ予想以上に良い雰囲気、さらには木造校舎の廃校まであり
長い間訪れなかったことを後悔したのだった。

photo:Canon eos7d 15-85mm


9月10月の休日の多くは例によってキャンプばかり、晩秋が訪れ本業の徘徊が動き始めた。幹線道を外れた山中でキャンプ場ロケハンも終了。いかにも熊が出そうな秘境キャンプ場だった。

車を停め車内に常備してあるツーリングマップルを開く。この山道にさらに上った先に「廃村、大平宿跡」と書かれている。存在自体はもちろん知っているが未だ訪れたことのない場所。ここまで来たのならば集落を見学しようと車を山中に向けた。

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下界ではまだ緑がちだった木々も標高を増すにつれて彩りを増し葉を透過する秋の日差しが紅葉をより際立たせる。新緑に比べ紅葉にはあまり興味を引かれることのない自分も思わず車を停めてしまった。



延々と続く山道を登り、傾斜が緩むと同時に木々が途切れ視界が開けた。長野県大平宿に到着。カラマツの林の中に点在する古びた建物が見える。

空き地に車を停め間近に見えた集落跡へ向かおうとした。ところが集落の反対側、林の奥にある縦長の建物が眼に入った。民家ではなく、公共施設を思わせる大型の建物のため、もしや廃校ではなかろうかと歩いて行くと予想通り林を抜けた先に木造校舎が現れた。

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秋空とオレンジ色のカラマツを背景に建つ黒ずんだ校舎は予想以上に大きなもの。とくに下調べも行わず前知識なしで大平宿を訪れたので廃校の出現に驚かされた。帰宅後、調べてみると丸山小学校大平分校の跡とのこと。



校庭の片隅に見える鮮やかな黄色い色の正体は厚く積もった落葉した銀杏の葉だった。葉を掴み空中に放り投げると逆光の光を浴び輝きながら舞い降りた。

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大平分校の標高は1150m。今までに訪れた数多くの廃校の中でも、特に高所にある廃校ではないだろうか。



続いて廃校から離れた大平宿集落跡へ。10数棟ほどの建物が旧道に沿って並んでいる。自分がよく探索する人里離れた林道終点に残る廃村とは違い、大平宿は近年まで人々が通過する街道の宿場町だったため、それぞれの民家のサイズが桁外れに大きい、そして立派だ。まるでロケ地を思わせるたたずまい。

ところで恥ずかしながら初めて子ども時代、雑誌記事でここを知ってから2020年の今日まで大平宿を「おおひらしゅく」と呼んでいた。正確には「おおだいらじゅく」なのだそうだ。

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伊那谷と木曽谷。今でこそ恵那山トンネルや国道が突き抜けるが、かつて二つの谷は縦に伸びる中央アルプスによって分断されていた。
江戸末期、交通困難なこの箇所を打通すべく、新道開拓が行われその中心にある峠付近の高原に集落が作られた。入植した人々は過酷な環境に翻弄されながら森を伐採し厳しい開拓時代を経て宿場として整備された。それが大平宿である。

明治期になっても中央本線を利用したい飯田の人々が街道を利用し細々と存続していたものの、飯田線の開通によって街道は衰退、寒冷地ゆえ農業も行き詰まりも1970年、集団移転によって再びこの地は無人となった。



とはいえ大平宿はまったくの無人という訳でもなくわずかながら人の気配は感じられる。その理由は廃村に宿泊することができるからだ。
ここでは廃屋を放置するのではなく、あえて部外者に開放することで建物を維持している。人の住まなくなった建物は不思議なほど風化が速い。そのため離村した村人は宿泊者を元住居へ受け入れ、定期的に外気を流し風化速度を抑えようとしている。ここを知ったきっかけになった子ども時代に読みんだ雑誌記事も大平宿の宿泊に関する内容だった。

紅葉に包まれる好天の某日。知名度が高い廃村だと聞いていたので大勢の人を予想していたが、2時間ほどの滞在中、すれちがったのは訪問客はわずか数名。
ここに至る道中、多くの観光客で賑わう妻籠宿の横を通過した。一方で大平宿はあまりに山深すぎて観光バスも入れないためか、同じ宿場町とは思えない対照的な雰囲気。だがそれが良い。

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雰囲気の良い古民家のひとつを外から眺めていると、たまたま滞在中だった家主の方が建物内部を見学させてくれた。

歴史を感じさせる分厚く重厚な柱、梁、長年囲炉裏からの煙に燻され続けた黒ずんだ室内に圧倒された。格子窓からは秋の日差しが室内に斜めに射し込んでおり、囲炉裏から煙が立ち上っていたら見事な光線を描いたことだろう。

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屋外の水桶には厚い氷が張っていた。紅葉に覆われる季節もあとわずか、冬の訪れによって大平宿は深い雪に閉ざされることだろう。



居心地の良さに想定以上に大平宿で過ごしてしまい時刻は14時。徘徊できそうな場所は時間的に残り1〜2カ所か。近隣にある定番スポットをいつくか思い浮かべる。そのうちの一つ、長野県大鹿村ならばまだ回れるかもしれない。

ちょうど1年前の同じ11月の晩秋、素晴らしい夕日を眺めた大鹿村高台にある行きつけの例の池は現在、林道通行止めで封鎖中。LINK

となると同じ大鹿村近隣にあるアルプスを望む高台はどうだろうか。現在地からは伊那谷を挟んだ対岸に西日を浴びオレンジ色に輝く山々が見える。あの高度まで車で上れば西日を浴びるカラマツの紅葉が見られるに違いない。とはいえ時刻はすでに14時30分。



タイムリミット迫る伊那谷を走る。秋の日暮れは早く太陽は中央アルプスの稜線に迫っている。先月訪れたばかりの小渋ダムは今回はスルー、ひたすら日が残る高台を目指す。谷間にある大鹿村中心部は完全に日が落ち日影となっていた。

最初の目的地、大鹿村某銀杏。山を登った高台の斜面集落にあるため、逆光に輝く黄色い葉を期待していたが日没にわずかに間に合わず、光が当たっていたのは梢の先端だけ。仕方が無いので2014年11月の写真を掲載。

大鹿村銀杏1444ooshikalinear16.jpg

銀杏から見上げた山の稜線はまだオレンジ色に染まっており日没に間に合いそうだ。ここからは標高が勝負、さらに高台を目指す。

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時間との勝負となるため、カーナビにも表示されない勝手知ったる裏道から高台の鳥倉林道を目指す。しかし数百メートルほど山道を進んだところで無情にも現れた「この先崖崩れ・通行不能」の看板。正規のルートへ迂回しても日没には間に合いそうもない。一か八か、通行不能なら諦めようと車を進め薄暗い林道を上っていく。

確かに小規模な崖崩れはあった。土砂が路面を埋めている。しかし車種によっては行けないこともない。慎重に土砂を乗り越え無事、鳥倉林道に接続することができた。
冬季閉鎖ゲートもまだ開かれており、あとは先月も訪れたばかりの道を進むだけ。高度を上げると日照部分に出た。同時に紅葉が光を浴び鮮やかに輝いた。

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やがて周囲の植栽は、広葉樹からカラマツに変わり同時に周囲はオレンジ色の光に包まれる。
断崖上の空きスペースに車を停めた。ここが南アルプスを山裾から稜線まで見渡すことができるポイント。

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鳥倉林道はこの先、さらに数kmに渡り続くが実際にはゲートで閉鎖されている。この先は南アルプスを徒歩で目指す登山者しか立ち入れない道。夏場は多くの車が停められているこの場所もさすがにこの時期、この時間、登山者らしき車は皆無だった。

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上空からみた大鹿村。
山肌を彩る紅葉、そして本日走り回った伊那谷の山々、そして中央アルプス。先ほど通過した大鹿村中心部はすでに闇に包まれている。太陽が傾くに従い、闇は次第に山裾を登り、やがて高台も闇に包まれると急速に寒さに包まれた。

[了]

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