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●2021年6月某日/煙に燻され続けた夜。廃村宿泊記。

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人里離れた山間部に廃屋が点在する廃村。
以前訪れた際、建物の整備をしていた方に泊まることのできる古民家を紹介された。
今回はその一画にある古民家で一夜を過ごすべく廃村を再訪した。
一体どのような宿泊施設なのか、電気は来ているのか、検討もつかないため、
念を入れてキャンプ道具一式を車に詰め込んだ。


photo:Canon eos7d 15-85mm
※本記事は訪問時のものです。現在の状況は異なっている可能性もあります。



廃村へと続く細い林道を車で登り続ける。前回の訪問時には鮮やかな紅葉に包まれていた林道も季節は巡り眩いばかりの緑の光景が続く。
やがて道の周囲を覆っていた木々が途切れ視界が広がった。目的地に到着。
草むした古道の両側に点在する古びた家屋。そのすべてが無人となったまま残されたものだ。そんな家屋のひとつに今回宿泊する建物がある。

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今回選んだ宿泊先は集落の中で最も大きな建物ではないかと思われる日本家屋。
管理人に扉を開けてもらいとりあえず室内の構造を把握する。土間の先に広がる囲炉裏を中心に広がる大広間。長年にわたり燻され続け黒ずんだ太い梁、床材。この素晴らしい雰囲気の建物を貸し切りにするのだ。

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北側には数部屋の和室が列んでおり、雨戸が開け放たれた開口部からは緑の森が借景として彩りを添えている。磨き込まれた床に映り込む緑。風が抜けひんやりとした心地よい和室の畳に仰向けに寝転んでみる。

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驚いたのは建物に電気が来ていたこと。廃村に泊まるというのでおそらく電気もないだろうと勝手に思い込み、キャンプ用ランタンを数個持ち込んだが不要だった。このような文明の利器は遠慮せずありがたく使う。ちなみに携帯は圏外だった。



管理人は去り、ここから昔の生活が始まる。まずは囲炉裏に火をおこす。

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このサイトはキャンプブログではないため記事として触れることはほとんどないが、キャンプ歴は15年以上。いや、レイブと呼ばれるサイケトランスの屋外パーティーに通っていた時期を考えるとさらに長い。そのため火起こしはお手のもの、囲炉裏など余裕だと思っていたが焚火台での火起こしとは勝手が違い意外に難航、一時は白煙に包まれる。

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ようやく火と煙が安定、持ち込んだ食材を焼き出すことができた。しかし一息つき間もなく続いて米を炊く作業が待ち構えている。手前のかまどに薪を投入し、台所から釜を引っ張り出し乏しい知識で米を炊き始める。
のんびりくつろごうと人里離れた廃村を訪れたものの、昔の暮らしはとにかくやることが多いのだ。台所といろり端を何度も小走りに往復し、時間が過ぎる。

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人里離れた山中に廃屋が点在するこの場所は、旧街道沿いの峠付近。現在は無人化、十数棟ほどの家屋が建ち並んでいる。老朽化の差はあれどいずれも立派な日本家屋。集落の外れにはかつて小学校として使用されていた廃校も残されている自分好みの場所。



積雲は午後からは次第に積乱雲へと成長していく。典型的な夏の山岳気象。夕方からは雷雨に見舞われたものの、今夜の宿泊場所はテントではなく、屋根があるという安心感。

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夕日が稜線へと沈み長い一日が終わった。カラマツの林、そして山の尾根に遮られ、ふもとの町の灯りは一切、廃村ヘは届かない。



夜、外へと出ると涼しさに驚かされた。闇に包まれる集落はまったく無人の夜という訳ではなく、現在も一部の廃屋に泊まることもできるため遙か遠くの別の建物からはわずかながら人の気配を感じられる。
夜空を見あげてみたが夕刻雷雨に見舞われたため星は見ることができなかった。

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いろり端に並べておいた鮎も数時間かけて燻された結果、見事熟成されたようだ。適当にかまどで炊いた米も予想以上のできばえ。時折、囲炉裏に薪を放り込みながら夜が更ける。煙を浴び続ける自分も燻されてしまいそうだ。

翌日、服に煙のニオイを残したまま別世界のような高地の廃村を離れ灼熱の下界へと下った。

[了]
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