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●2021年11月某日/消滅する都心の谷を歩く。我善坊谷から麻布台ヒルズ竣工への記録[後編]

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都心の一画に生まれ変わろうとしている街区がある。
無数の古びた家屋が密集していた谷底の集落は次第に失われ、
現在はタワークレーンが林立し重機が動き回る日本最大とも言われる再開発現場と変貌した。
建設中の巨大ビルの足元にかつてあった「我善坊谷」現在の姿を
消えた風景とともに紹介[前編は下記]。


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通称:虎ノ門・麻布台プロジェクト。東京で初めての300m越えビルとなり、日本一の高さとなる地上64階、高さ325mの超高層メインタワーを中心に2棟の200m級サブタワー、低層の商業施設で構成される巨大再開発だ。

麻布台ヒルズ1908toranomonazabudai01.jpg

325mという高さは無数の高層ビルを建設してきたMビルでも国内においては未知となる数字。2017年の正月早々に当初は330mという高さで発表された際はその規模に驚かされた。
2021年晩秋、建設現場では2023年の竣工目指し工事は佳境を迎えていた。




真っ先に目を引くのはA街区、高さ325mの超高層ビルメインタワー。右隣のサブタワーは基礎工事の最中だがメインタワーは建設速度も早くこの時点で高さはすでに250m近くに達していると推定される。Mビルらしい微妙に膨らんだフォルムを持つビルから目線を下げ足元に目をやると、かつて東側に広がっていた我善坊谷と集落は消滅していた。

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虎ノ門麻布台再開発1808azabudaimap10.jpg

3本の超高層ビル、そして低層商業棟。大きく4つの区画に分けられる虎ノ門麻布台プロジェクトは高台の麻布郵便局跡地、そして東西に伸びる細長い区画に渡り広がっている。計画図と描いた地形図を合成[上記地図]。B区画からC区画へと続くこの細長い空間こそが高低差に富んだ東京の地形が作り出した「我善坊谷」と言われる谷間だった。



かつて我善坊谷の谷底は古びた民家やアパート、雑居ビルによって埋め尽くされていた。色をつけた箇所が工事開始前の虎ノ門・麻布台プロジェクト建設予定地[下記写真]。全長0.5kmほどの再開発区画は郵便局を除き谷間に沿っていることがわかる。
麻布台ヒルズ定点観測1808azabudai0504.jpg
東京タワーより麻布台ヒルズ定点観測12112azabudaiproject013.jpg

そして現在。まだ2/3ほどの高さに達した辺りだが既に抜き出でた存在感のメインタワー。数年で風景はここまで変わる。



虎ノ門・麻布台プロジェクトからわずかの距離に建つ333mの東京タワーと比較するとタワークレーンの先端部はすでに300m近くに達していそうだ。海外においては400mを越える実績を持つMビルは東京タワーを上回る超高層ビル建設も可能だと思われるが、航空法の絡み、そしておそらく東京のシンボルへの遠慮もあって高さは東京タワーよりわずかに低く設定されている。

六本木ヒルズより虎ノ門・麻布台プロジェクト2112azabudaiproject0304.jpg
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建設地は東京駅から虎ノ門にかけて続く高層ビル群の南端にあたる場所。
日本の高層ビルの代名詞として都庁を中心とする西新宿ビル群の写真や映像が昔から使用され続け、また繁華街に近く人々の目に届きやすいため、超高層ビル街=新宿といったイメージを持たれている方も多いのではないのだろうか。
しかし近年、都心での超高層ビル街は移動を続け、そのようなイメージは過去の物になりつつある。2000年代には新丸ビル竣工に端を発した東京駅周辺、2020年以降の超高層ビル街は虎ノ門麻布台周辺へと引き継がれ都市は循環を続けて行く。

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完成すれば東京で初めての300m越えとなるこの超高層ビル。しかしそれもつかの間その数年後には東京駅北側に建設予定の高さ390m常盤橋プロジェクトTorchTowerに抜け去られる運命にある。



海外では主流となった高さ300mを超えるスーパートールの世界。一方日本においては長らく300mの壁を突破する事ができず、初めて300mに達したビルが大阪あべのハルカスだった[下記]。建設中あべのハルカス/2011年撮影。

建設中のあべのハルカス0000ooakaabeno04.jpg

竣工後は日本一の高さとなるビル。これほど大規模な再開発にも係わらず虎ノ門・麻布台プロジェクト自体の一般的な認知度はそれほど高くないように感じる。建設現場である麻布台・虎ノ門という場所自体が繁華街から外れており、一般人の目が届きづらいのが一因なのだろうか。

麻布台プロジェクトライブカメラ2112azabudaiplive.jpg

基礎工事が終わりタワークレーンが設置されるとビルの建設速度は速い。ライブカメラで麻布台虎ノ門プロジェクトの建築状況を観察しているとタワークレーンはリフトアップを繰り返し鉄骨を積み上げ続ける。



この程度の高さにまで達するとビルは建物が密集する都心の至る所から顔を覗かせはじめる。日々高さを増していく超高層ビルは東京の新たなランドマークとなりつつあり、街行く人々の目に触れ始めることで知られざるプロジェクトの知名度は次第に増していくのだろう。

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メインタワーは高さだけでは無く容積率も膨大で、手間の中小ビルと比較すると太さを実感できる。上部の覆いが外された低層階にはガラスカーテンウォールの取り付けが始まっており完成後のフォルムを掴めようになってきた。



建設現場へと近付き古びた歩道橋上に立つ。東端に面する通りを跨ぐ歩道橋上からは現場を一望することができるため虎ノ門・麻布台プロジェクトの格好の定点観測スポットとなっている。見上げるビルは高さを増し自前の広角レンズではそろそろ限界だ。

2021年撮影
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現在立っているこの歩道橋脇にはかつて我善坊谷の入口がありメインストリートと勝手に名付けた通りが奥へと続いていた。数年前同じ歩道橋から撮った写真を見返すと街の変化がよくわかる。かつてこの場所は雑居ビルや閉店した店舗らしき建物が通りに面していた[下記]。

2018年撮影
麻布台ヒルズ建設現場定点観測1808azabudai0101.jpg
2019年撮影
麻布台ヒルズ建設現場定点観測201910toranomonazabudai01.jpg
2023年撮影
麻布台ヒルズ建設現場定点観測2023年2023azabudaihills.jpg

麻布台ヒルズ虎ノ門麻布台プロジェクト1912toranomonazabudai09.jpg

それらの建物は次第に解体され、更地となり上記写真と同じ位置にはこのようなデザインの商業棟が建設されることになる[上記]。旧メインストリートは同じような位置に再び付け替えられるようだ。

我善坊谷1808azabudaimap9.jpg

2021年11月現在、現場を定点観測していて気になるのが谷の奥に建つはずの2棟の200m級タワーマンションホテル棟。B2街区ではタワークレーン自体は随分以前に建ったものの一向に躯体が立ち上がる気配もなく、高さ262mのB1街区に至っては未だ地下で基礎工事の最中。
素人目には迫る竣工に間に合うとは思えず大幅な遅延は免れないだろう。工事遅れの要因として個人的に考えられるのがその立地。特にB1街区は我善坊谷の奥に立地するため[上記地図03付近]、施工会社は高低差のある谷の埋め立てに苦慮しているのではないか。



通りから0.5kmほどに渡って続く我善坊谷「谷底」内は古びた民家やアパート、廃屋が軒を連ねる過密地帯となっていた。一方で谷を見下ろす高台には超高層ビルが林立し、特に夜などは薄暗い下町、その背後に輝く高層ビルというサイバーパンク的な組み合わせを感じることができる場所でもあった。

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密集する建物群。その南北を崖のような擁壁で囲まれていた袋小路のような我善坊谷。台地上と谷底の高低差を短距離で克服するため急勾配となった三年坂、落合坂、行合坂などと名付けられた坂が存在していた。計画図を見るかぎり勾配をゆるめた道が新設されることでそれらの坂はいずれも姿を消すようだ。



そういえば今回の徘徊前、googleストリートビューを使用しmap上で谷底へ入ろうとしたところ、プロジェクト区画内は表示されなくなっていた※2021年12月現在。おそらく区画整理によって失われた道の表示は誤進入などの誤解を招くためあえて表示しないというgoogleの方針だろう。
谷の内部を撮影車が通行して映し出された過去の風景も見られなくなっておりストリートビューという仕組みに、失われた過去の光景を残す貴重なアーカイブとしての意味を感じていた自分にはちょっとショックだった。

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次第に地権者の退去や解体が進み空き家、空き地が増えていった我善坊谷、谷全体の全面閉鎖が行われ立ち入ることができなくなったのは2019年夏頃。その後はわずか一年ほどですべてが失われた。
建物が解体された谷底では仮設の鉄板上を重機が動き回り商業施設棟の基礎工事が行われている。下記写真中央にある小山は突き出た高台にあった八幡神社。うっそうとした木々で覆われていた薄暗い森はリニューアルが行われており伐採によって明るい雰囲気となった。

虎ノ門・麻布台プロジェクト建設現場2112azabudai09003.jpg

現在は無骨な工事現場だが敷地の多くのスペースでは大規模な緑化も行われるため完成後は以前の谷よりも緑は増えることだろう。



順調に高さを増すメインタワー。都内では未知の領域に入る300mを越えるのもまもなく。このような超高層ビルは間近で見上げるよりも、ある程度距離感を持って眺める方が高さを感じることができる。

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虎ノ門・麻布台プロジェクト2112azabudaiproject0201.jpg
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都内各所から次第に目につき始めた虎ノ門・麻布台プロジェクト。繁華街から外れ立ち寄る人も少なかったこの場所も竣工後は人々で賑わいかつての谷の光景は忘れ去られていくのだろう。


2023年11月某日/麻布台ヒルズ開業へ。
麻布台ヒルズと名付けられた虎ノ門・麻布台地区第一種市街地再開発事業は無事竣工、2023年11月某日麻布台ヒルズは開業する。日本一の高さとなる高さ330m(正確には325m?プレスリリースと現地看板で食い違いが見られる)の超高層ビル森JPタワーが237mのマンション棟を従え秋空に聳えている。

東京タワーから見た麻布台ヒルズ森JPタワー開業2311azabudaihills.jpg
2023年11月麻布台ヒルズ森JPタワー開業2311azabudaihills0201.jpg
麻布台ヒルズ森JPタワー開業2311azabudaihills0202.jpg

低層部では当初発表されたイメージとは大きく異なる奇抜な建築物が谷間を埋め、古びた民家が密集していた我善坊谷は地形ごと消滅、大きく生まれ変わった。それらに付随する高級ショップ群は、残念ながら自分にはまったく縁のないセレブ空間。
一方で進捗の遅さを数年前からweb上で指摘していた通り、高さ262mの麻布台レジデンスB、通称B-1街区は予想通り麻布台ヒルズ開業に間に合うことがなかった。レジデンスB遅延要因については様々な考察が見受けられるがそれは本題ではないので掲載はしない。

麻布台レジデンスBB-1街区工事2311azabudaihills0203.jpg

長い間停止していたレジデンスB工事は夏頃から再開されたものの未だ大きく遅延し、現在も6階〜8階付近が建設中となっている。動きのなかったタワークレーンもせわしなく動き、部材を積み上げているがここまできたら焦らず安全優先でじっくりと進めてもらいたいもの。



我善坊谷時代から定点観測を続けてきた麻布台ヒルズの記録も一旦これで一区切り。
例によって完成後は建物への興味が失せてしまう悪い癖があり、建設中、写真を撮りに通った大阪あべのハルカス・東京スカイツリーはいまだ登ったことがない。

建設中の東京スカイツリー2009skytree.jpg

既に自分の関心はここから西へ500mほど離れた六本木五丁目地区においてMビルが行う第二六本木ヒルズと呼ばれる巨大プロジェクトにへと移りつつある。

[了]

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