●2022年1月某日/半島の果て。秘境海岸と呼ばれる二つの場所。[前編/荒船海岸]
- 2022/03/01 22:22
- Category: マニアックスポット

いつものように衛星写真を使い画面上で国内上空を彷徨っている最中に見つけた2つの某海岸。
それらは主要道から外れた紀伊半島、伊豆半島、それぞれの半島の果てにあり
そのアクセスの不便さ故「秘境海岸」と名付けられているようだ。
このような地をわざわざ訪れる人間は釣り人か、物好きくらいだろう。
そんな二つの半島に人知れずひっそりとある2箇所の海岸の徘徊記録。
まずは変わりゆく紀伊半島、荒船海岸を紹介。
photo:Canon eos7d 15-85mm
訪問日:2021年.12月
[変わりゆく秘境海岸/紀伊半島編]
太平洋からの荒波が打ち寄せる紀伊半島南部。鉄道、国道、観光ホテルなど海際まで利用されている感のある南紀の海岸だが珍しく人里離れた海辺がある。迫る山から突き出した尾根を回り込むように奇岩が続く海際に刻み込まれる車幅ギリギリの狭路、その先に広がる荒々しい岩場と浜。それが荒船海岸。


曲がりくねる狭路が続く海岸道、カーブミラーを頼りに車を進める。とはいえ数キロ先で行き止まりとなっているためか、遙か沖合の岩場に渡船で渡ったと思われる釣り人が見える以外、人の気配はなく対向車も現れないのが幸い。
大自然単体ではなく、自然と人工物が組合わさる光景が好きなのでミラーの写真ばかりになってしまった。


ここを訪れたのはわけがある。数年前にここを知った後に目にしたニュース、それは荒船海岸が民間小型ロケット発射場に指定されたという内容だった。
南端に太平洋が広がり、本州では最も赤道に近い潮岬を有する紀伊半島南端は打ち上げ条件を満たしており、その中でもかつては原発候補地になったとされるほぼ無人の海岸線がロケット発射場に選定されたのもうなずける。しかし射場が完成に近付けば海岸への立ち入りも制限され、同時に観光地として整備されてしまう可能性もあるため以前からタイミングを狙っていたのだった。
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下記写真の谷間奥がロケット発射場予定地となる場所。海岸道から山に入る道はいずれも「ロケット発射場用地」と書かれた看板と共に封鎖されている。



先ほどは「居住者もいない秘境海岸」と表現したが、正確にはわずかな戸数の荒船集落がここにあった。現在でこそロケット発射場への搬入路のため国道とを繋ぐ新道が建設中のA海岸、しかしかつての集落は山によって隔絶されていた。
その集落も発射場建設に伴う立ち退きが行われ、無人となっており遠目から見る限り民家は解体され集落は更地となっているようだった。
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一方で海辺にはまだいくつかの建物が残されている。その正体はトタンで覆われた番屋らしき小屋群。うち一棟は倒壊、他の小屋は海風にさらされながらもかろうじて建っている。




これらの小屋、現在も使用されているのかは不明だがいずれも暖を取るためかストーブの煙突が伸び、剥がれたトタン壁から覗くと内部は漁師達が使用したと思われる漁具が散乱していた。
番屋群のある地点は岩場が途切れ丸石が敷き詰められた海岸となっている場所。岩場が続く荒船海岸では船着き場を作る適所もなかったのか、船を浜へと引き上げるための新旧の器具が残されていた。


現在地は狭道が続く海岸道路の中でわずかながら平地が広がり一息着ける場所。ストリートビューで撮影された画像を見ると空き地となっているこの場所には数年前まで何棟かの民家があったようだ。堤防も一切なく自宅から絶好の眺望を得られる反面、海が荒れている日は波をかぶることもあっただろう。
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岩場には透き通った海水で満たされてた四角い囲いがあった。海中と通し海と繋がっているようで流れ込んだ木材の間を行き来するカラフルな魚影が見えた。この囲いはかつての生け簀、養殖場の跡なのだろうか。


海岸道はさらに続き、岬を貫通する素掘り隧道も見える。とはいえ狭路はさらに狭まり自分の車ではそろそろ通行不能、この先、車両転回スペースがなかった場合の絶望感を考えると諦め時か。怖い物知らずのストリートビュー撮影車もこの辺りで引き返している。ここに至る海岸道には古びたキャンプ場施設もあったが現在は営業しておらず、解体が行われるのか、管理棟には足場が組まれていた。
寂れた秘境海岸と最新科学技術の組み合わせは一見ミスマッチにも思える。しかし射場の工事自体は順調に進んでいるようで初のロケット打ち上げは2022年度が予定されているようだ。まもなく裏手の森から太平洋に向かい轟音と共にロケットが打ち上げられ、無人だった海岸も大きく変貌することだろう。
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荒船海岸の続いては切り立った断崖が海に落ちる伊豆西海岸。そのわずかなスペースにひっそりとある某海岸を紹介する。
[続く]
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