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●2022年12月某日/ダムに沈むダムと橋。丸山ダムと旅足橋。

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意味深なタイトルだが岐阜県の山間部にこのようなダム建設現場がある。
その名は丸山ダムと新丸山ダム。そして旅足橋。
記事にはしていないが、過去何度か訪れたことがある場所であり、
いよいよ工事が本格化したと知り再訪してみることにした。
場所は岐阜県の木曽川が山間部から濃尾平野に流れ出す八百津(やおつ)と呼ばれる小さな町。
この八百津、ダム以外にも魅力的なスポットが多い土地でもあり
過去何度か訪れておりその際の写真もまとめて紹介。


※本記事は訪問時のものです。現在の状況は異なっている可能性もあります。

まずは旅足橋(たびそこばし)。
流れもなくよどんだ姿を見せる緑の川。旅足橋は丸山ダムが木曽川を塞き止めたダム湖に掛けられた古びたトラス橋。現在、新丸山ダム建設の工事が下流で行われており、完成後は水位上昇によってダム湖に沈むことになると予想されている。

岐阜県旅足橋空撮2211tabisokohashid01.jpg

旅足橋が位置するのは急勾配の林道を深い谷底へ向けて下った先。対向車に一度たりとも出会うこともなく、苔むした狭路を下り続けるとダム湖岸に敷設された「旧国道418号」に突き当たった。国道と言っても現在は車一台通らない古びた旧道。酷道としてもあまりに有名な場所でもある。

岐阜県丸山ダム旅足橋地図2212maruyamadammap.jpg


日射しが届き始めた湖岸右岸に敷設された旧道をダム堰堤方向へ向かい下っていくと、旅足橋の赤い主塔が木々の合間からその姿を現した。一見するとただの吊り橋のようにも見える。

旅足橋2211tabisokohashi01.jpg
旅足橋空撮2211tabisokohashid02.jpg
丸山蘇水湖2211tabisokohashi05.jpg
丸山蘇水湖2211tabisokohashi02.jpg

橋は木曽川本流ではなく、流れ込む支流の旅足川が作り出す入り江を跨いでいる。湖面には特徴的なトラスの形状の影が落ちていた。
時代を感じる規則正しく打ち込まれたリベット、弧を描く重厚なケーブル。そのケーブルからトラスが吊り下げられた旅足橋はトラス橋としては非常に珍しいタイプのようで建築学的にも特記すべきものとされている。とはいえ老朽化は否めず剥がれた塗料が痛々しい。

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航空写真を見ると丸山ダム完成以前は現在水の底となった川沿いに別の橋が架かっていたことが見て取れる。
1956年の丸山ダム完成によって国道は水が達することのない高所に移設、同時に新たに建設されたのが旅足橋だった。袂にあった錆びた銘板には「昭和29年」と刻まれていたため、橋はダム完成の数年前には竣工したようだ。それから70年余、安全な位置のはずだった旅足橋は再び人為的に水に沈められようとしている。

旅足橋2211tabisokohashid03.jpg
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彼方に見えるのは膨大な水を支え続ける丸山ダム堰堤。橋を沈める要因がさらに下流に建設中の新丸山ダム。新丸山完成後の水位はかさ上げによって現在のサーチャージ水位(満水水位)188mを上回る205m、おそらく洪水時には橋はトラス先端をわずかに残しダム湖に沈むことだろう。



これまでにダム水没予定地をいろいろと回ってきた。水没予定地の建造物や森林は、ダム湛水後、浮遊物となってしまうことを防ぐため、可能な限り解体撤去される。しかし群馬県八ッ場ダム(下記写真:2016年)、北海道シューパロダム(下記写真:2017年)の鉄道鉄橋はそのままの姿で水に沈められており、重量物の扱いは様々のパターンがあるようだ。

八ッ場ダム鉄橋2008yanbadam02.jpg
シューパロ湖0710hokkaido0308.jpg

旅足橋の交通量は皆無、ここに滞在中一台の車も通過しなかった。
続いて橋から移動、湖岸の旧国道418号を走り下流の丸山ダム堰堤方面へ向かう。旧道が通行止めになっていなければ良いのだが。
このようなダム建設現場においては通行可能箇所が日々と変わる。前回通行できた場所が通行止め、その逆も然り。幸い今回は湖岸沿いの旧道を通り抜けることができ、丸山ダム堰堤付近に最接近した。

丸山ダム2211maruyamadam002.jpg

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最接近と書いたのは2022年現在丸山ダム堰堤付近はすでに工事現場として封鎖されており、以前のように堰堤本体に近付くことができなくなっていたからだ。現在は通行禁止となってる丸山ダム堰堤手前の古びた橋と吊り橋は以前は通行することができた。
2013年頃に撮ったアングルが下記。

丸山ダム全景2212maruyamadam00202.jpg
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現在は近付くことができない橋から見上げた丸山ダム全景。ダムの竣工は1956年、着工はなんと大戦を挟んだ戦前、見ての通り旅足橋と同じく古びた構造と外観。



そして堰堤から数百メートル下流では流域が削り取られ大規模な土木工事が行われていた。この手前に旧ダムを上回る新ダムが建設される。それが旅足橋を沈める直接の要因となる新丸山ダムだ。(下記写真は夏撮影)

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現状のダムを保持したまま、堰堤手前にそれを遥かに上回るサイズの新ダムが建設される。新丸山ダムはすでに着工しており、緑の川岸は茶褐色の姿となっていた。いずれ手前に堰堤が積み上げられやがて旧ダム堰堤の姿は視界から消え去って行く。新丸山ダムは2029年に完成予定、旧丸山ダムは堰堤上部を削られ、そのままの姿で水に沈められる。

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八百津発電所跡。
丸山ダムからわずかの距離に建つ灰色の建物。かつて水力発電所として明治〜昭和にかけ電源の供給をになってきた施設が閉鎖後、発電所資料館として公開されていた。
しかし老朽化を理由に数年前に閉鎖、内部見学は既に中止されているようだ。現状を知ろうと立ち寄ると、現在は内部はもちろん敷地自体も閉鎖され建物に近付くことすらできなくなっていた。仕方が無いので10年ほど前に撮った写真。

八百津発電所の発電機201308yaotsu0002.jpg
八百津発電所内部201308yaotsu01.jpg
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八百津発電所内部。レトロな施設内に水力発電の核となる巨大発電機、フランシス水車が並ぶ空間は圧巻だった。また施設といいながら実態はほとんど放置状態で、客もまったくおらず、まるで廃墟内を歩いているかのような足音が響く空間を魅力で八百津で最も好きな場所でもあった。
下記は海外の古城を思わせる外観の放水口発電所。こちらは現在、駐車場からその外観を俯瞰することができる。それにしても縦構図ばかりだ。

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八百津発電所内部201308yaotsu0007.jpg

以前放水口発電所内部を見せてもらった際の写真。底に置かれた発電機で、先程の施設で発電を行った放水を再利用し再び発電を行っていた。
周囲には他の水力発電所や新しいサージタンクが点在しているく。ダムや水力発電所が林立する近辺には新旧いくつもの水圧鉄管が地中に張り巡らされていることだろう。

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そういえばかつて丸山ダムの左岸の山中には、数本の塔の廃墟があったが今回は解体されたのか見当たらず。



先ほどダムに沈む旅足橋(たびそこばし)を紹介したが、実はすでに水没を見越し掛け替え用の新しい橋が誕生している。その名は「新旅足橋」。
岐阜県丸山ダム旅足橋地図2212maruyamadammap.jpg

山間部と平野の境界線にあるこの地区は谷と尾根が入り組む複雑な地形のため道路の敷設も困難、集落同士は谷底を縫う細い県道によってひっそりと結ばれていた。それらを一気にバイパスする国道418号新道が交通網改善と共にダム水没の代替用として2010年に完成した。
そのメインとなる箇所が旅足川が削ったV字谷を一気に架橋する新旅足橋。高さ約200m。

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写真は10年前に撮ったもの。ハンドルを握って通行するとその高さには気がつかないが、幹線道路から外れ橋を遠望すると大胆に谷を跨ぎながらながらも、たった二本の橋脚が支える華奢にも思われる構造にも驚かさせる。同じ岐阜県に架けられた東海北陸道の鷲見橋を彷彿とさせる外観。

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完成当時は地図やナビにも掲載されておらず走る車もほとんど見当たらなかった新旅足橋周辺だが久しぶりに橋を通過するとその高さを活かし、バンジージャンプ台が設置されバンジーに挑もうとする挑戦者達で賑わいちょっとした観光地のようになっていた。
谷底で人知れず沈みゆく旧旅足橋、大勢の観光客で賑わう新旅足橋。新旧二つの光景が交錯していた秋の八百津だった。

[了]
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