●2022年10月某日/ 変わりゆく悪路。秋の冠山峠越え。
- 2023/05/01 22:22
- Category: マニアックスポット

岐阜県、福井県。隣接する両県の県境付近は山塊が連なり
直接通行できる県境越ルートは限られている。
そんな数少ない南北ルートのひとつが看板で有名な温見峠越え、
そしてもうひとつは冠山峠を越える林道冠山線。
現在この難路を打通すべく峠直下に冠山峠トンネルが掘削中であり、
数年後には両県のアクセスは劇的に改善することになる。
同時にトンネル完成後は峠越えルートは旧道扱いとされ変化してしまう可能性があり
また冠山峠自体も未だ通過したことがなかったため
工事現場の偵察もかねて峠越えに挑戦してみることにした。
今回は南側、岐阜県から福井県に向け冠山峠越を行う。
訪問日:2021年10月某日
※本記事は訪問時のものです。現在の状況は異なっている可能性もあります。
水を称えた日本最大のダム湖を有する徳山ダム。
湖底にかつてあった旧徳山村はダム完成によって村はまるごと沈められ消滅した。ダムに沈む前の旧徳山村を訪れたことがあったため、貯水された現在の風景には感じるものがある。→LINK


ダム左岸に付け替えられた新しい道が国道417号線。「湖底」を走っていた旧国道は徳山ダム建設・水没と同時に高台に敷設された。下写真の最も奥に見える稜線が福井県との県境、高所の斜面に切り刻まれた細い線が目的地の冠山林道となる。



橋梁やトンネルを贅沢に使用した広大な車線。対向車も現れない無人道路を走りダム湖のインレットが近付いてきた。高規格道路に身を任せ、このまま一気に県境を越えられそうな錯覚に陥るが、そう甘くはなく、道は唐突にその幅を狭め417号線は地上から消滅した。同じく峠によって国道が分断された静岡・長野の難所、青崩峠越えを彷彿とさせる光景。
直前に冠山峠トンネル現場へと通じる道が現れるが仮囲いに覆われ内部を伺うことはできなかった。
[現在地]

地図のように国道417号はこの場所で分断されているが、両県を繋ぐ頼りない道がある。
それがここからスタートする林道冠山線。

先ほどまでの快走路が嘘のように車幅は狭まり一気に山道へと豹変した。とはいえ舗装はされており、難路というほどではないが、予想以上に対向車が多く、お互い譲り合いが必要となる道。

曲がりくねる道は高度を上げ森林地帯を抜けると同時に前方の視界が開けた。先ほどダム湖から遠望した山肌にそって続く林道、その奥の稜線鞍部あたりが目的の峠だろう。荒々しい地形が強調された荒涼とした光景。
ここから林道は等高線に沿って山腹をトラバースしていくため勾配も緩み、木々が途切れたことで視界も良く対向車も発見しやすく走りやすい。



振り返るとススキの草原を横切る林道、眼下には日射しを反射する徳山ダム湖、さらに遠方には広大な濃尾平野が広がっていた。相変わらず対向車や対向バイクが多いが路肩には時折待機所もあるため、すれ違いにも走行にも特に苦労することも事もなく峠へ到着した。
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名前の由来となった冠山を有する標高1,050mの冠山峠は駐車された登山者の車で路肩まで埋まってたので車から降りることもなくなく峠を通過。
冠山峠トンネルが掘削されているのは峠を少し東へ移動した直下。トンネル全長は4834m。近年国内のトンネルで流行している5km以内にうまく納めてある。掲載している「日本のトンネル技術を敗退」させた静岡、長野県境の青崩峠直下を掘削中の青崩峠トンネルは全長4998m。危険物積載車両を通行可能にさせるため、こちらもあえて全長を5km未満に設定したのだろうか。→LINK

峠を通過し、岐阜県から福井県へ。ここに至るまでの冠山林道は予想以上にまともな道で正直拍子抜けしていたのが福井県側に入ると対称的な光景が広がった。勾配の険しさは福井県側が上回る。またダラダラと登ってきた岐阜県側に比べより短距離で山裾とを結んでいるため、林道は峠から標高差500mのヘヤピンカーブを一気に下っていく。


運転中は視界が限られ高度感はそれほど感じないが、実際にはかなりの高所に林道が敷設されているようで見上げると断崖その遙か上部に張り付く石垣が見える。崩れ落ちそうな頼りげのない路肩の石垣。あんな場所を先ほどまで走行していたのかと驚かされる。

他の車でも通過すればスケール比較になったのだが、いくら待っても他車が現れないないため撮るのを諦め出発、しばらく下った先に冠山峠トンネル福井工区の工事現場が現れた。残念ながら岐阜工区と同じく掘削現場は奥地にあるため、坑口を見ることはかなわなかった。
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冬場は冬期閉鎖、また災害の度に通行止めとなる冠山林道。まもなく岐阜福井間はトンネル開通によって劇的に変わり、沿線に民家や集落もない冠山林道の存在も不要となるように思える。
とはいえ今回の初訪問で冠山を目指す登山者の利用の多さにも驚かされたのも事実。冠山峠トンネル完成の暁には旧道となる林道はどのような扱いとされるのか気になるところだ。
[了]
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