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●2022年6月某日/秘境海岸。伊豆吉田海岸で過ごした夏の日。


静岡県伊豆半島西端。伊豆山地が断崖となって海へと切れ落ちる地の果て。
そびえる断崖の谷間にはわずかな平地と集落、そして弧を描く海岸がある。
半島の外れの観光客も訪れない荒涼とした地。それが伊豆最後の秘境海岸とも称される吉田海岸。
秋、冬、そして夏。季節は巡り数ヶ月前に茶褐色だった枯れた草原は
初夏の強い光を反射する鮮やかな緑に包まれた。
吉田海岸夏の一日を適当な時間軸で紹介。


前回の光景

photo:Canon eos7d 15-85mm
※本記事は訪問時のものです。現在の状況は異なっている可能性もあります。


伊豆半島の南端。交通量もほとんどない西海岸断崖上を走る国道を外れ急傾斜の山道を下り続けた先に現れるのは、岩山に挟まれたわずかな民家と孤状の海岸線。この谷間が伊豆最後の秘境海岸とも証される吉田海岸。
海岸を挟む岩山、水平線に突き出す絶壁の岬、他の集落は一切眼に入らない地の果てのような壮絶な地形。

静岡県南伊豆町吉田海岸ドローン空撮2206yoshidaeachdrone02.jpg

最後の訪問から4ヶ月ほどで光景は見事に変わった。
6月某日、盛夏と呼ぶのにはまだ少し早い季節だが既に風景は夏の装いとなっていた。寒風吹き荒れ茶褐色に枯れ果てた草原が広がってた冬場の光景から一変、鮮やかな緑と海の色に包まれた吉田海岸。人の気配もなく、携帯の電波も入らない断崖に挟まれたこの地で一日を過ごす。


伊豆吉田海岸ドローン空撮2206yoshidaeachdrone04.jpg

吉田海岸を象徴する光景のひとつが赤い屋根の家。目の前に美しい海を望む緑の草原に建つ謎の一軒家は民家なのか、あるいはコテージなのか、見当もつかないが、現在は空き家となっていると以前地元の方から聞いたことがある。確かに家の周囲は背丈ほどに生い茂った草に覆われ建物までたどり着くすべもないように見える。
そんな赤い屋根の家と荒涼とした立地の組み合わせは、どこかドラマチックな予感を感じさ吉田海岸のポイントとなっている。

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伊豆吉田海岸赤い屋根の家廃墟2206yoshidatsuika02.jpg
伊豆吉田海岸魔王ドローン空撮2206yoshidaeachdrone03.jpg

三方を岸壁に挟まれた吉田地区。尾根となって海に突出した両側の岸壁に阻まれ他の集落の姿は一切見当たらない隔絶された土地。そのような谷間に建つ赤い屋根の一軒家。透明度の高い美しい海を正面に望む立地は、非常に贅沢でうらやましいものだ。一方で周囲が茶褐色に枯れ果てる冬場は寒風も相まって寂寥感はさらに増す。

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気象は目まぐるしく変化、山や海の彼方に湧き出した積乱雲はやがて上空に到達、海岸に大粒の雨が降り注ぐ。
片隅に停めた車にこもり雨があがるのをじっと待つ。電波も入らないため、車内で本を読むくらいしかやることはない。夕立のような雨は1時間ほどであがり谷と海岸に太陽の光が射し込むと、緑と海はより一層色彩を際立たせた。

吉田海岸2206yoshidaeach0102.jpg
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高い透明度を持つ伊豆の海。その中でも南伊豆の海は別格、冬場は季節風と共に荒波が打ち寄せる海岸も夏になると穏やかな姿を見せる。ゆったりした波のうねりの合間から海底が透けて見える。草木の色は変わろうと海の透明度はいずれの季節も変わることはない。



伊豆西海岸では断崖下のわずかな海辺で生活が営まれる漁村や集落が数キロおきに連続する。そのような集落には温泉、海水浴場、遊覧船など一般観光客を呼び込む要素が少なくともひとつはあるものだ。
しかし吉田海岸には美しい海以外何もない。釣り人かクライミングを行うクライマーが時折訪れる程度。まともな駐車場すらない。電波すらまともに入らない。だがそれが良いのだ。先人達によって「伊豆最後の秘境海岸」と名付けられたのも納得の立地と光景。

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この2ヶ月ほどの間にいろいろとあった海岸だった。しかし喧噪は去り、今日の吉田海岸での人影は遙か沖合の岩場に立つ竿を伸ばす釣り人だけ。
好天に見舞われた初夏の本日、観光地伊豆半島はどこを訪れても無数の観光客で混雑していることだろう。しかし吉田海岸は混雑渋滞喧噪とは無縁。アクセスも不便、これといった見所も知名度もない海岸をわざわざ訪れる観光客はいるわけもなく、伊豆だとは思われない静けさに包まれ再び元の姿へと戻った。



日が傾き夜が訪れる。谷底に点在するわずかな民家の小さな灯り、断崖に挟まれた狭い空に広がる星。

伊豆吉田海岸車中泊2206yoshidaeach0303.jpg
伊豆吉田海岸車中泊の星空2206yoshidaeach0302.jpg
伊豆吉田海岸の星空2206yoshidaeach0301.jpg

街灯も一切ない浜辺。沖に目をやると夜の海には意外にも光が点在していた。黒々とした岸壁の先には電飾を点した漁船、ぼんやりと浮かび上がる対岸の町の灯り。ふと足元を流れる小川に目をやるとホタルだろうか、動く小さな光が漆黒の茂みに見えた。

[了]

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