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●2023年8月某日/隔絶された台地上。失われた廃牧場の夜明け。

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深夜2時、深い山中を延々と続く夜の林道。
眼に入るのはヘッドライトに照らし出させる目の前の荒れた路面だけ。
時折茂みから飛び出す謎の獣がライトに照らし出される。
恐ろしい漆黒の林道を登り続け、目的地に到着した。
標高1,000m弱。深夜3時、路肩に車を停めヘッドライトを消した。
漆黒の闇に目が慣れると星空、そして建造物のシルエットが浮かび上がる。


※本記事は訪問時のものです。現在の状況は異なっている可能性もあります。

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闇から浮かび上がった複数の建造物のシルエット。丸味を帯びた数本の巨大な筒、崩れ落ちた建物、電柱。この場所は下界から隔絶された標高1,000mの高地にある山岳牧場。

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牧場と言っても一頭の牛も見当たらず、中央部の施設は朽ち果てている。ここは現在は使用されていない牧場の跡地。その立地、雄大かつ不思議な雰囲気に惹かれ何度目かの訪問となる。



施設中心を公道が抜けているため道路上から様々なアングルから当時使用されていた建物跡を眺めることができる。夜空にそびえる巨大な筒は牛の飼料置き場として使用されていたサイロ跡。その周囲に立ち並ぶ木造の建物の多くは損壊、あるいは倒壊している。

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夏の夜明けは早い。気がつくと夜空の星は消え失せ、東の稜線上が次第に白み始める。黒、濃紺、オレンジ、空の色がみるみる変化していく。
宇宙基地の発射台を思わせる独特の形状をしたサイロ群。丸味を帯びた巨大なその外観はスペースシャトル燃料タンクやデルタロケットのようにも見える。

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刈り取った牧草は上部からサイロ内に貯蔵、その重みで圧縮され牛の飼料として使用された。このようなタワー型サイロ、様々なジャンルがあり北海道の開拓村廃村では煉瓦造のものを見たこともある。しかし現在は牧草をビニールに包み込み地上で発酵させる方法が主流となり、牧場の象徴だったサイロは次第に姿を消している。

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やがて廃牧場に今日最初の朝の光が射し込んだ。眩い光はゆるやかな丘陵を照らし出し、葉に付着した朝露が逆光にきらめき、地形が立体的に浮かび上がる。



日の出と共に闇に沈んでいた廃牧場はその全容を現した。北海道の丘陵を思わせる美しく壮大な光景。低い光源が作り出す灌木の長い影。

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見渡す限りの山々と深い谷が続く山岳地帯。もちろん一棟の民家も見当たらない。急峻な山道を登り切った隔絶された台地上にこのような広大な草原が広がっているとは想像も付かないだろう。ここを開拓し、整地するまでは人々の相当の苦労があったはずだ。

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明るくなったのでサイロや古びた建物を観察。数年前と比較すると建物はその数を減らしているように見える。新たに倒壊し草むらに木片などの残骸が散らばる建物、その一方で前回はあったが撤去された建物も見受けられる。中央に向かい圧壊ししているのは真冬の雪の重みのためか。

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牧場としての機能は既に失われたが、放牧地跡地は徐々に農地へと転用されつつある。木造建物の中には農作業用器具置き場として使用されている小屋もあるようだ。

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夜が終わりを告げ太陽光が射し込むと同時に周囲の動きが活発になる。さえずり始めた様々な野鳥の声、活動を始める羽虫。やがて台地上に微風が吹き込み始めた。風は上昇気流となり上空には夏を思わせる白い雲が湧き出す。再び夏の1日が始める。

[了]
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