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●2024年冬某日/解体を待つ「大杭橋」、その最後の姿。

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2024年某日、長野県の千曲川に架かる廃吊り橋、大杭橋が解体撤去されたと知った。
最後にこの橋を訪れたのは数年前の冬、中央だけ残された廃橋の姿が印象的だった。
取り壊しの噂はありつつもその後も橋は一向に解体が行われる
気配もなかったため特に記事にすることもなく眠っていた。
それから数年、大杭橋はついに地上から姿を消したようなので改めて掲載する。
本来、橋を目指していたのではなく、長野県の山間部某所に向かったものの積雪で足止め、
急遽変更し訪れたのがこの廃橋だった。


※本記事は訪問時のものです。現在の状況は異なっている可能性もあります。

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青と白。真冬の長野県。某目的地を目指し林道を歩き続けたものの積雪は次第に増していく。まだ進めそうだが今回は深入りを断念。雪解けまで寝かせておこう。
そんな訳で急遽行き先を変更、予定地リストを開き近隣のめぼしい予定地をピックアップ、そのひとつが同じ長野県、千曲川に架かり解体も噂されている廃橋「大杭橋」跡だった。観光地巡りでは無いため、現地に到着したら消滅されていたなんてことはよくあること。あまり期待しないで橋へと向かった。

⚫︎

平地まで下ると雪は消え去った。千曲川が長い年月をかけて削り取り形成された河岸段丘が続く長野県北部。その底を架橋する吊り橋が見えた。大杭橋はまだあった。

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川面を目指し急勾配の細道を下っていくと枯れた木々の合間から古びた吊り橋が見えた。
雪解けの濁った水が流れる千曲川にそびえる門を思わせる荘厳な主塔。橋は一見渡ることができそうに思われるが辿り着くすべをもなたい。なぜなら中央部以外は右岸側左岸側共に欠損しているのだ。

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竣工は大正期、長い歴史を持つ大杭橋は災害によって現在の姿となった。その災害とは2019年10月に上陸した台風19号。ここで掲載しているように試験湛水中だった八ッ場ダムを一夜にして満水にした大型台風だ。→LINK
増水した千曲川の水位は桁付近まで達し、その一部を崩壊させた。

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橋名が入れ込まれた美しい主塔と重量感ある橋脚。実際この橋脚自体は台風でも崩落することなく耐え続けた。橋桁が健在ならば決して見ることができないこのアングル。
現地到着までは橋全体が吊り橋だと思っていたのだが観察すると釣られているのは中央のみ、岸側は通常の桁橋だったようで左岸には流失した橋脚の基礎が残されていた。

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「橋を壊しています」と記された工事用看板があったものの周囲には重機も見当たらず解体工事が始める気配は感じられなかった。工事用看板脇には2.0トン標識が残されているが、橋自体の老朽化のため災害のずいぶん前から通行止めとなっていたようだ。

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大杭橋の特徴は見学アングルが豊富なことだ。新道として架けられた小諸大橋は深い谷間を一挙に架橋するため大杭橋の絶好の俯瞰ポイントとなっている。中央部には丁寧に展望台まで設置されていため、じっくりと大杭橋を観察できるすばらしい構造。
巨大な小諸大橋と比べるとサイズ的には見劣りしてしまう大杭橋だが弧を描くケーブルが醸し出す美しさでは引けを取らない。竣工時には橋の竣工を祝う盛大な落成式も行われたことだろう。

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諸外国から技術が輸入されたばかりの日本では土木自体が近代化の象徴であり現在以上に美が求められた。大正期に竣工した大杭橋も全体や細部から感じさせられる凝った意匠からもその想いがうかがえる。

しかし橋はやがて解体される運命にある。とはいえ莫大な予算が必要な保存など口出しするつもりはまったくなく、解体も仕方がないことだとドライに思う。このような失われた空間はいずれ消滅するものと決めつけ、記録に残しておくくらいなのだ。と書いたもののその後も一向に解体される様子もなく時折小諸大橋を通過する度に眼下にその姿を見せていた。
似たような事例としては同じく建築学的価値を持ちながらまもなくダム湖に消え去る橋、旅足橋がある→LINK



年月は巡りあれから数年あまりたった2024年冬某日。大杭橋が撤去されたのは凍えるような真冬だった。

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雪に閉ざされた灰色の空間。背後の山々は真っ白に染まっている。そして小諸大橋から見下ろす光景に橋の姿はなかった。橋が架かっていたと思しき空間には千曲川が流れ続けていた。ついに大杭橋は解体、姿を消した。

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川面への車道は封鎖されていたため、橋上から俯瞰した限りでは地上構造物は全ては撤去されており、現在は橋脚の撤去作業の最中だった。頑丈そうな橋脚は基礎から撤去するようで重機が水に浸かり動き回っていた。雪が降りしきる冷たい空間で作業を行う人々には頭が下がる。

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長野県小諸市大杭橋2402ookuibridge0206.jpg

痕跡が消し去れ大杭橋の正確な位置が定かではなかったので健在だった頃の橋を合成してみる[上記]。周囲の地形や岩などから大杭橋が架けられていたのはやはりこの位置で間違いないようだ。

[了]
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