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●2013年12月某日/極寒の瀬戸内徘徊.02

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2日目。
マニアックな離島を一気に回るという今回の徘徊。
本日早朝上陸予定だった某無人島だったが吹き荒れる季節風に予約していた渡船はあえなく欠航。
2つ目の島はまだわからないものの、この風ではおそらく出航することはないだろう。
そんなわけで四国の山間部徘徊へと予定を変更。天候に振り回された冬の四国旅。


[前回の記事]

photo:Canon eos7d 15-85mm

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四国の友人宅で冷え込んだ朝を迎えた。予定通り無人島へ渡っていたら凍えていたかもしれない。
予想していたとはいえ冬の渡船はやはりリスクが高い。何度目かの軍艦島渡航が真冬だったが荒れる海に漁船の出航が毎日のように延期され結果三日待った。メンバーの大半は脱落し最終日まで粘った暇人が見事島行きの権利を得ることができたが現在はそこまで暇でもないので明日もだめながらあきらめて帰ろう。



08:50
三縄発電所跡。島が無理なら山、ということで地元の友人の案内でやってきた

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眼下を流れる祖谷川上流にはかずら橋という観光地がある。もう10数年前のこと、秘境が売りというこのかずら橋を訪れたことがあった。

昔から話には聞いていたので期待半分立ち寄ってみたものの、その実態は観光バスや団体客、土産物屋が入り乱れる喧噪あふれた秘境とは思えない場所だった。金を払うのもばからしくそのままスルーし上流で見つけた奥祖谷二重かずら橋という誰もいないマイナーな橋に秘境を感じたものだ。
しかしそれ以上に唖然とさせられたのが当時、かずら橋対岸で建設中だった要塞のような駐車場。急斜面地帯では限界とはいえあまりにも違和感あふれる巨大建造物。
秘境イメージをなくしてしまっては元も子もないとわかってはいるものの、大量に訪れるバス、車をさばく施設も必要、平地が皆無のこの場所で難しい兼ね合いがあったことが想像できる。この駐車場、その後完成した模様。「かずら橋夢舞台」で検索してもらいたい。思わず目を疑ってしまうトンデモ建築なのだ。


そんな祖谷川に沿いの断崖上を目をこらしながら車を走らせていくと遙か眼下の森の中ににちらりと煉瓦造りの建物が見えた。予め知っていなければ見過ごしてしまうような立地。さてどうやってあそこまで降りようかと車を停め断崖を降りるアクセス路を検証していると空からバラバラとみぞれが降り始めた。一旦車へ撤収・・・。



眼下に見えた煉瓦造りの建物目指し断崖を下っていく。険しい道のりを想定し登山靴へ履き替えるなど万全の準備で挑んだものの意外にも途中から朽ちた階段のようなものが現れ拍子抜けしてしまった。やがて枯れた木々の間から赤茶色の煉瓦作りの建物が徐々に姿を現した。


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廃屋の横を抜け厚く積もった落ち葉を踏みながらたどり着いた三縄発電所。
遙か下に流れる祖谷川に転がりおちてしまいそうな狭い立地に建てられている。空を埋めた雪雲の間から時折差し込む太陽光にきらきらと輝くグリーンの川面が目を引きつける。


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風格感じる古びた入口から発電所内部へ入ると真っ先に目に入るのが壁に空いたアーチ状の空間。
同じ形状の波形トタンがそのままの姿で床に転がっているところをみると穴を塞いでいたものの何らかの拍子に内部へ倒れ込んだのだろう。ぽっかり口を開けた穴の向こうには立派な竹が生い茂り緑の竹林と赤い煉瓦の組み合わせが和と洋が融合したような不思議な雰囲気を醸し出す。


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こういった竹類の繁殖力は驚異的、地中深く地下茎で繋がり予想もしない場所からひょっこり顔を出す。この発電所の床は一応舗装されてはいるものの所々亀裂が走っている部分も多く、やがて竹が床を突き抜け伸びてくるのも時間の問題だろう。



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壁を塞いでいた仮設らしきトタン板が倒壊したおかげで演出したようなおもしろい光景を見ることができた。残念なのは発電施設の機械類が残されていないこと。高価な発電機本体は閉鎖後そのまま放置されておくはずもなく内部はがらんどうというのが、ここに限らず発電所廃墟の特徴でもある。



急斜面をよじ登り再び国道へと戻ると四国のマニアックな場所を案内してもらいながらだらだらドライブ。


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発電所に続いて廃校探し。場所は徳島県の深い山の中。google空撮写真で調べてもこの周辺は未だ低解像度区域、ぼやけた画像しか映し出されないため廃校の詳細位置は不明のまま探索中。
どこまでも続く深い山々、その薄暗い谷底を四国らしい悪路が延々と伸びている。



集落。苔むした道。同じような光景が繰り返される細道をひたすら進み続けると、道幅が広がりこの先の集落を予感させる。やがて森の向こうに現れた家々に少しホッとしながら近付いていくものの感じるのは不思議な違和感。
その理由はすぐわかった。建ち並ぶ家々から生活臭がまったく発せられていないのだ。

四国に限らず、山中を走っているとなぜここにといった場所にひょっこり現れる民家に驚かされることは多い。とはいえそんな場合も大概は軒先に干された洗濯物、あるいは手入れをされた植木等から人の気配を感じることができるものだが、ここでは見渡す限りの建物すべてがどう見ても廃屋。


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廃屋の中には木造3階建てという立派な家屋も存在する。ここに至るまで通過したいくつもの集落でも、忍び寄る過疎化の波によって空き家となった民家は珍しくもないが、これだけまとまった無人集落を見る機会というのはなかなかないだろう。

さらに奥に進むとさすがに人の気配を感じる民家が数軒現れ完全な廃村というわけではないよう。とはいえこれだけの大規模集落から住民が消滅してしまうと言う現実に人口減少の深刻さを思い知る。今後想定通り日本の人口が減り続ければ、ここに限らず日本中の「田舎」でこのような光景を目にすることになるのだろうか。

静まりかえった廃村のような集落を抜けたところで道は二手に分かれた。そろそろ廃校も近いはず。
怪しいと直感した右側へと入ったものの予想に反し集落を抜けると道幅は急激に狭まっていく。高所に存在する山岳集落へ向かう私道ではなかろうかと転回の余裕があるうちにUターン、左側も探索したものの結局廃校を見つけることはできずふもとの穴吹市街へと引き返した。
帰宅後しばらくしてgoogleの空撮写真が高解像度版へと更新されたので調べてみるとなんとUターン地点からわずか200m先のカーブの下に廃校を示す校舎の屋根が映っていた・・・。




結局予定していた島へはひとつとして上陸することができず四国での一日は終わった。
明日も渡航予備日としているもののこの気圧配置では漁船のような小さな船は出港することはないだろう。四国を離れ岡山県の港町にある友人の仲間がやっているというゲストハウスに泊まる事にし瀬戸内海を横断するフェリーに乗船すべく高松港へ向かった。

高松港のフェリーターミナルに到着した頃にはすでに日も暮れ気温はさらに下がっていた。
周囲の乗客を見渡せば通勤、通学、あるいは買い物にやってきたらしき身軽な服装をした人々がほとんど。まるで電車やバスに乗るような感覚で気軽に船を利用している光景に驚かされる。網の目のように航路が張り巡らされた瀬戸内だからこそできることなのだろう。

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宇野行きをアピールするレトロな電飾が妙に目立つ乗り場前の岸壁。乗船予定の乗客は皆、車中、あるいは暖房が効いたターミナル内で暖まりながら船の到着を待っており寒風吹きすさぶ屋外へわざわざ出ようなどという物好きな人間は誰ひとりおらず。


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待つこと15分あまり。
対岸からこれまた派手な電飾で装飾されたフェリーが到着、開いたゲートに車ごと乗り込んだ。さっそく暖房が効いた船室を通り抜け甲板に出るもののこちらも同じくわざわざ寒風に吹かれに行くような物好きはおらず外はただ一人。青白い蛍光灯が照らす人気のない甲板は寒々しい限り。


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フェリーは四国から遠ざかる。
甲板から高松の灯りを見つめているうちに突然デジャブに陥った。

そう、今を遡ることちょうど10年前の2003年、車中泊をしながら廃墟を巡る日本一周の旅に出た自分は北海道から沖縄まで数ヶ月間に渡って走りつづけたものの最後の島、四国ではもはや旅が始まった頃の好奇心も摩耗し惰性のまま終わりが見えない旅を続けていた。
前日、四阪島への渡航が失敗に終わり車中泊に訪れた深夜の高松港で見つけたこの宇野行きフェリー。船に乗れば1時間後には本州岡山県へと到着する、岡山からゴールまではわずか数時間、長く続いた旅の終わりを初めて実感した瞬間だった。そして深夜のフェリーで宇野港へ到着した数時間後、数ヶ月にわたって続いた旅は完了した。



エンジン音が響く少しくたびれた船上で最後の夜を過ごした10年前のあの夜と同じ光景が続く。
隔てられた本州四国両岸のあかりがポツポツと水平線に浮かぶ漆黒の瀬戸内海。航海灯を点した貨物船が時折通り過ぎていく。10年前の夜は同じデッキで同じ光景を眺めながらこの辺で旅を終わりにしてもいいかなと思った。
なんだかいつになく感傷的な気分に浸ってしまった旅情を感じる60分だった。



19:30
対岸の岡山県宇野港の灯りが近付き船は岸壁に着岸した。見下ろすと以前と比べこぎれいになったターミナル。
ベネッセが沖合の直島を中心に始めたアートプロジェクトの影響だろうかいたるところにアートらしき物体が展示されている。かつて何度か訪れたあの犬島の廃墟も今では、はかなくアート作品にされてしまったと聞く。

凍えそうになりながら転がり込んだゲストハウスでよく効いた暖房と暖かい食事によってようやく生き返った。


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ゲストハウスで飲み終えると、友人は再びフェリーに乗り込みふらりと対岸の四国へと帰っていった。身軽に船を使うこなすまさに海の男。



翌朝、玉野の造船地帯を撮影しながら長い帰路へとついた。振り返れば結局全ての島へ渡航失敗という散々な結果に終わってしまった今回の旅。春が訪れる頃、再び島へと挑戦したいものなのだが。

[了]
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