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●2013年12月某日/紀伊半島廃校縦断記.02

  • 2014/02/07 22:29
  • Category: 廃校
131201kiitop2.jpg年末に行った久しぶりの紀伊半島縦断。
早朝の積雪に驚かされながらも、それでも尾鷲の廃校から熊野まで順調に駆け抜けてきた。
しかしこの先の目的地は広大な紀伊半島山中に点在する廃校や廃村。
積雪に阻まれることなく無事たどり着くことができるのだろうか・・・。


photo:Canon eos7d 15-85mm


[前回の記事]1312kiimap05.jpg
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尾鷲から熊野へ続くリアス式海岸に沿って走る国道311号。
漁村同士を繋ぎ広がったと思えば前触れもなく狭路に戻る、そんな国道を我慢強くトレースし続けた先に突然現れた広大な砂浜。思わず車を降りしばし海と戯れてしまう。冬とは思えない不思議な色の海が魅力的な新鹿と言う場所だった。


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10:55

ついに熊野市まで南下。しつこく続いていた三重県沿岸のリアス式海岸もここまで。ここからは一転、七里御浜と呼ばれる砂利の浜が20数キロに渡って続く変化のない海岸線となる。浜に沿って進む国道42号線、地図上では一見眺望を期待できそうに思えるものの実際には防風林がひたすら続き、海辺の様子はほとん伺い知ることはできない。

だらだらと流れていく長い車列、変化のない国道、そんな単調な光景にどこか感じるデジャブ。そう、この道は4年前の2009年冬、沖合に座礁したフェリーありあけを探しにやってきたものの、視界を遮る防風林に国道からはその姿を見ることができず右往左往した場所なのだ。

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写真は4年前のありあけ。この写真を撮った直後、嵐で船体が崩壊、今は跡形もない。



和歌山県へと入る。
熊野川を渡る数少ない架橋に交通が集中、新宮市街地は混み合っている。時間を大きくロスし焦り始めた頃、完成したばかりのバイパス、那智勝浦道路が現れた。トンネルを贅沢に使ったバイパスによってあっという間に那智勝浦付近まで到着、予想していたよりもずいぶん早い。紀伊半島はこんなに狭かっただろうかと拍子抜けしてしまったほど。

南へ伸び続ける紀勢自動車道、難関区間を長大トンネルによって打破した熊野尾鷲道に代表されるように紀伊半島では近年高速道路やトンネルの開通が相次いでいる。かつての巨大な印象が失われたのもこの10年ほどで急速に整備されたインフラのせいだろうか。ここまでくれば最南端、潮岬まであとわずか。とはいえ今回は海に沿って潮岬に向かうわけではなくここから一転紀伊山中を目指す。



那智勝浦インターを降る。山中へ列をなす他府県ナンバーの車の多くは世界遺産、熊野那智大社を目指すもののだろう。しかし自分は世界遺産に用はないので那智大社直前で進路を変更、山へと分岐する細道へと入り込んでいく。もちろん続く車両は一台もない。

山道を進んでいくと山肌がみるみる荒れ始めた。緑の山林が削り取られ茶色の地面がむき出しになった斜面。崩落した橋、堤防。今回の紀伊半島縦断で大きな印象に残ったのはいまだ爪痕を残す2011年大水害の跡だった。ここでも多数の重機が土石流によって堆積した巨岩の撤去に追われている。後に通過した熊野川沿いでも山体崩壊によって茶色の山肌が剥き出しのままといった生々しい光景が至る所で見受けられた。主要道は再開したものの林道を含めたすべての路線が復旧するまでには長い年月を要することだろう。



廃校が残るという地区に向け高度を上げていく山道。道の両脇には雪が残るものの日差しは強く凍結の心配はないはず。先ほどまで海辺を走っていた熊野灘がいつのまにか遙か眼下となった。木々の隙間からは輝く海を眺望できる。 

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対向車もまったく現れない山道。出発前、航空写真であたりをつけておいたのでこ廃校があることは確実だろうがそれでも次第に不安が頭をよぎる。

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狭い道が突如広がりやがて右手に山中に不釣り合いな広大な空き地が現れた。道路脇のスペースに車を停めると足を踏み入れる。予想通りこの空き地は校庭跡、そして校舎らしき鉄筋建築。


紀伊半島の廃校1312kii0219.jpg

見回すと山側にも森に埋もれた横長の木造建築が見える。いくつかの建物が複雑に組み合わさり構成された学校は想像していたよりもずいぶん規模が大きそうだ。秘境とも言える山間部によくもまあこれだけの規模の学校を維持できるだけの子供達がいたものだ。

校舎を見上げていると人気のないはずの山中に突然子供の声が響いた。
まさか廃校ではなく現役校だったのだのかと振り返ると声は校庭片隅にある真新しい平屋の建物から届いてくる。学校の一部だと思っていたこの建物、実は居住中の民家だったようだ。庭代わりにしていた校庭へ入り込んでしまったので、ドアを叩き廃校見学の許可をいただく。家主の後ろから時折恥ずかしそうに顔を出す先ほどの声の主、小さなお子さんがかわいらしい。



では三つに形成されている廃校舎を順に見ていこう。
草をかき分け登っていくと現れた木造平屋。その渡り廊下を進むと大きな吹き抜けのロビーが現れる。どうやらロビーが三つの建物へ通じる交差点のような役割を果たしているらしい。まず鉄筋校舎側へ。
山側へと伸びる長い廊下を進んでいると周囲の壁や床がコンクリートから木造へと変化した。いつの間にか奥に見えた木造校舎へと入り込んでいたようだ。このように増改築を繰り返した結果、迷宮のように入り組んだ廃校は好きだ。


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高台に建ち西を向く教室の日当たりは抜群。真冬だというのに室内は暖かく割れたガラスから時折吹き込む風に枯れ葉がカサカサと移動を繰り返す。ここでもわずかづつ植物の浸食が始まっている。壁を伝う蔓は今でこそ枯れてはいるものの夏場には緑の葉を茂らせていることだろう。


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建物はさらに奥へと続いていたが今回はあまり時間もないため先ほどのロビーへと一旦戻ることにする。



中心に建つ鉄筋校舎内を奥へと進むと突き当たりには講堂らしい大きな空間が広がっていた。
長い年月の経過によって彩度が落ちたとはいえ目を引く垂れ幕が残るステージ上にはレコードや鍵盤ハーモニカ、楽譜など音楽系の楽器類が散乱している。その中でも最も存在感を放つのが講堂中心に置かれたままの大きなグランドピアノ。

廃校のグランドピアノ1312kiihai04.jpg

廃墟のグランドピアノ1312kii0205.jpg


ピアノ自体決して安いものではないし、ましてやグランドピアノと言えば非常に高価な代物だろう。今朝訪れた尾鷲の廃校でも朽ちゆくまま放置されているグランドピアノを見かけたが、廃校後このような高価な備品の管理はどのような仕組みになっているのか不思議である。もしかすると廃校ではなく書類上の「閉校」扱いとなっているのかもしれない。

この朽ちたピアノ、果たして音はでるのだろうかと厚く埃をかぶった鍵盤をそっと叩いてみる。すると想像していた以上に高くしっかりとした音が講堂内に響き渡り驚いてしまった。ピアノが最後に弾かれたのはいつのことだろうか。

廃墟のピアノ1312kiihaib.jpg


帰宅後写真を整理していると講堂天井から垂れさがる巨大なスズメバチの巣に気がついた。冬と言うこともあってか幸いスズメバチには遭遇しなかったものの活動が活発な季節ならば襲われていたとも限らない。もし夏場、この廃校を訪問される方がいれば講堂天井に注意していただきたい。



最後に訪れたのは一番下の三つ目の木造平屋の校舎。校庭から草むらを登っていくと最初に突き当たる建物。三つのの建物、建築様式がばらばらのため、生徒の増加に合わせ時代ごとに増築を重ねていったと思われる。

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和歌山の廃校の教室跡1312kii0202.jpg
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最後に訪れた建物は三つの中では最も古いのか、崩壊が激しく教室内の天井が抜け落ちていた。
開いた天井から流れ込む雨によって真下の床は半ば腐り崩れ落ち、その周囲の床も大きく湾曲している。誰が置いたか雨漏り対策のバケツがいくつか置かれていたものの、屋根が崩落した今、気休め程度にしかならないようだ。時折卒業生が廃校を訪れることがあるのか、黒板には教室を懐かむの声とともにどうにか崩壊を食い止めたいという悲痛な叫びが綴られていた。

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一棟一棟違った雰囲気の建物が一堂に会すバリエーションあふれる廃校だった。非常に規模が大きい校舎群は紀伊半島の深い山中とは思えないほど。まだ見ていない部屋も多く名残惜しいが今後の予定を考えるとこのあたりで切り上げなくては。校庭へ戻ると先ほどのご家族に挨拶し廃校を後にする。とてもさわやかな一家だった。



山を下ると那智勝浦道を逆戻り、新宮市街まで戻りコンビニ駐車場で遅い昼食。明るい店内、おなじみのメニュー。いつもと変わらぬ日常風景にほっとさせられる。非日常空間に身を置くと非常に疲れる。しかし今日の目標地は廃校、廃村併せて5物件。まだ残り三つ。車のシートを倒すとコンビニで購入した弁当を食べながらツーリングマップルを眺める。すでに時刻は午後二時前。広大な紀伊半島、冬の日暮れも早い。いったいどこまで回りきる事ができるのか・・・


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14:50
蛇行する熊野川に沿って北上し、やがて合流する311号へと入るとかつてよく訪れた川原に湯がわき出る川湯温泉を横目に車を走らせていく。このあたりも昔に比べずいぶんと道がよくなった。

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しかし心配事がひとつ。それは路肩に積もった白い雪。
早朝伊勢あたりで積もっていた雪は南下とともに一旦消え去ったものの、山中へと進むにつれ再び目立つようになってきた。目的地の某廃村は悪路が予想される林道の最深部、積雪、あるいは凍結なんてしていたら進入不能。



印を付けた手元の地図の分岐地点もまもなく。右手にそれらしき入口が近付いてきた。進もうか止めようか、しばし悩んだあげく林道へと進入した。
道自体には積雪はなく今のところ問題はないものの両側の積雪は進むにつれ次第に増していく。目的地の廃村はまだまだ奥。タイヤチェーンを積んであるとはいえ、寒く狭い林道上で作業を行うのも気が進まない。今ならまだ転回する余地もある、残念だがこの辺であきらめよう。



結局林道探索にまごついているうち冬の日は急速に暮れ始め、他の目的地は訪れることができなかった。所々開通した高速道路やバイパスによってアクセスは劇的に改善されつつあるとはいえいろんな意味で相変わらず奥深い半島だった。
雪で断念した最後の林道、いつか再挑戦したいと思っていたらその機会は意外に早く訪れ、わずか数日後には廃校到達を成功させることができた。


[了]
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