●2014年2月某日/磐船神社岩窟巡り再挑戦

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日本各地にある胎内巡り。
寺社の裏山なんかに開いた洞窟内や地下室を一周することだ。
仏の胎内に見立てた真っ暗な洞内を手探りで彷徨することによって浄化され産まれ変わるのだとという。
表向きは宗教的な神聖な行事なのだろうが、娯楽が少なかった昔には
今で言う遊園地のようにちょっとしたスリルを味わえる場所だったのではないかと思う。

過去いつくかの胎内巡りを体験したことあったがその中でも興味を引く案件が大阪交野市の磐船神社境内にある。
実はかつて磐船神社を一度訪問したのだが→ LINK 前日の大雨で穴が閉鎖され岩窟巡りはかなわなかった。
それから2年、岩窟巡りに再挑戦した。



photo:Canon eos7d 15-85mm



到着した磐船神社の駐車場脇に流れる天野川は山にぽっかりと口を開けた巨大な放水口「天野川隧道」へと吸い込まれていく。奈良の平野を流れてきた天野川が山に阻まれるこの場所が流れのボトルネックとなっており神社が度々洪水被害を受けてきたことから20年ほど前に迂回路として貫通したという。
現在も残る旧天野川(本来の川)は細々とした水脈で神社内へ続く。



前回の訪問は夏の真っ盛り、蝉時雨に迎えられたが磐船神社だが冬は人の気配もなく静まりかえる。
森の中に所々石が転がる薄暗い境内。この奥に体内巡りへの入口が口を開けている。

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2年前と同じく旧天野川に架かる橋を渡り対岸の社務所へと向かう。岩窟巡りを行うにはまず社務所にて申し込みをする必要がある。
ところが入場料を支払う段になって、無造作にぶら下げた一眼レフが目についたのか受付の方から携帯やカメラは岩窟内に持ち込みできませんよと言われてしまった。確かに社務所前には前回はなかった看板が立ち携帯の持ち込みは不可と書かれている。

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とはいえネットを検索すれば多数の洞内写真が掲載されている。もしや近年、神聖な聖域とのことで撮影禁止になったのかと思い思いきやそうではないようだ。

話を伺うと過去、カメラを岩にぶつけて壊したり、あるいは携帯を岩の隙間に落としたりと多数の悲劇が岩窟内で起こったという。自らの意思で洞内へと持ち込みながら「壊れた」「なくした」と苦情を言ってくる人間もいたのだろうなと容易に想像できる。これ以上そんな悲劇や事故が発生しないようあらかじめ持ち込み禁止にしたそうだ。洞窟内は決して「撮影禁止」というわけではないとのこと。

確かにカメラを壊したら元も子もない。しかしフィルム時代から一眼レフや交換レンズをかかえ砂漠や山岳地帯を歩いてきた男。いくら洞窟とはいえ都会のすぐそばの立地、まさかそこまで狭いわけがないだろうを高を括り一眼レフを持って潜入することにした。
そこまで言うのならばまあどんなものか一度お試し下さいとのことだったがその言葉通り、入洞からわずか10数mで後悔することになる。



至る所巨石が鎮座する磐船神社境内。
神道は岩や巨木などの自然物に神が宿ると信じられた自然崇拝が発祥だと言われている。巨石が集まるこの場所に神社が作られたのも偶然ではないだろう。

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磐船神社岩窟めぐり1302iwafunetuika.jpg

下は前回、2012年の写真。夏と冬。季節が巡ると風景も変わる。



いよいよ岩窟巡りに出発。いやその前に横の社で安全祈願。

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前回訪問時は大雨によって水没したとのことで鍵がかかっていたこの扉、今日は開けっ放しの状態。
高鳴る心を静め狭く暗い洞内へ足を踏み入れる。

一歩目からさっそく低い頭上の岩に頭をぶつけそうになったため必要以上に身をかがめ階段を下って行く。10段ほどの古びた階段を降りきると目の前には想像以上の広い空洞が広がっていた。


磐船神社岩窟めぐり1402iwafune16.jpg
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見るからに不安を感じさせる大量の巨石が絶妙なバランスで積み重なったことでこの不思議で神秘的な空間を作り出した。完全に密封された洞窟ではなく巨石の集合体なのでわずかな隙間から差し込む光によってあまり閉塞感を感じることはない。頭上を見上げると厚い苔がびっしりと岩を覆い尽くす。


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さて、岩窟巡りの順路はどこだろうと見渡せば、ここから細い丸太を並べただけの一本橋が奥へと続いている。

まるで平均台のようなこの橋、渡ってみると丸みがある上に、濡れているのかやたらと滑る。しかも不安定な足元や、ぶらぶらと動くカメラを気にしていると今度は頭上の岩に頭をぶつけそうになる。

大阪府交野市磐船神社岩窟めぐり内部1302iwafuneb.jpg


橋を渡ると今度は岩。風化し丸みを帯びた岩も丸太と同じくよく滑る。複雑に岩が入り組む足元には所々ぽっかりと空間が口を開いている。
うっかりこの深い隙間へ落としてしまった物は、折り重なるすべての巨石を撤去しないかぎり取り出すことは永遠に不可能だろう。社務所での話から推測するにこういった多数の隙間には過去の先人達が落とした携帯電話やカメラが風化しつつ残されているのかもしれない。



それにしても想像以上の狭さと歩きづらさ。かさかばる一眼レフはこのあたりで限界だろう。岩にぶつけレンズを割ったり、手の届かない奈落の底に落としてしまうのも時間の問題だ。そんな悲劇が起こる前に前に受付での忠告通りいったん引き返そう。
岩窟巡りは一旦ここで中段、Uターンし橋を渡り階段を上り外に出ると車を停めた駐車場までてくてくと戻る。

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15分後、カメラを交換、ふたたび穴へと入り先ほどの地点へ戻ってきた。
ここからは防水コンパクトカメラの出番だ。これならば多少岩にぶつけてもあるいは、水に沈んでも問題ない。最大の強みはポケットにも入るその小ささ。岩に書かれた白い矢印のペイントに導かれ奥へ奥へと足を進めていく。

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森林限界を超えた標高の高い山ではこのような白ペンキの矢印が岩に記されルートを示すことが多い。
しかし周りの風景が手に取るようにわかる登山と違いこの穴ではしだいに方向感覚が失われていく。まるで濃霧の中をさまよっているかのようだ。

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白い矢印に導かれるよう岩を伝い暗闇を進んで行くと矢印は深い穴へと吸い込まれるように続いている。[下記写真]

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まさかこの穴に入るのか。とても人間が入れるとは思えないそのあまりの狭さに思わず笑ってしまう。同じような疑問を持つ人が多いのだろう。その思いを打ち消すかのように何本もの矢印はしつこく穴の中心を指し続ける。

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穴を前にし一旦立ち止まると入り方を頭でシミュレート。
目の前でムカデなんかと鉢合わせする可能性もあるので、頭から潜り込むのはなんだか抵抗がある。だとするとやはり足かと、下半身を岩の隙間にねじり込むように埋めていく。

隙間なく体にぴったりと密着する岩の表面からはひんやりとした冷たさが防寒具を通して伝わってくる。受付で伺ったアドバイスの通りバックや一眼レフを持ち込まなくてよかった・・・。

そのうち臀部にひんやりとした違和感が。岩とはまた違う冷たさだ。まさか水?
どうやら岩のくぼみに部分にたまった水に体が触れているらしい。とはいえ上部も岩に密着したこの場所では体を浮かし回避することも不可能だ。濡れるがまま重力に身を任せるとやがて体はずるずると斜面をすべり穴の底へと落ちて行った



抜け出した。光がまぶしくおもわず目を細める。
出てきたのが下記写真の暗がりの奥、うっすら光が差し込んでいる部分。よくもまああんな隙間から抜け出たものだ。

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あたりを見渡すと現在地は川が流れる薄暗い谷底。この細々とした水脈が先ほど社務所に向かう際に渡った旧天野川。現在の本流は前述の通り山中の導水管を流れている。

一旦暗闇から抜けだし岩場を外側から眺めることによって岩窟めぐりの全容がようやく見えてきた。磐船神社岩窟巡りは一般的な洞窟巡りではなく旧天野川の切り立ったV字谷を埋め尽くした巨岩の隙間を抜けるものだった。巨石内部を矢印に導かれるまま進み水面と同じ高さまで降りてきたのだ。

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2年前、社務所で聞いた「洞窟が大雨で水没し入れない」との意味もこれで判明した。
洞窟の底に雨水がたまったのかと想像していたが正確には底を流れる旧天野川の水かさが増し通り抜けることができないとのことだろう。この旧天野川、真横に完成した放水路により水量が大幅に減る以前は流れも激しかったはず。当時の岩窟巡りはどのように行われていたのだろうか。



川底から見上げると真上は国道の旧道となっているようで岩や木々の隙間から苔むしたガードレールを見ることができる。この道、かつては国道168号線であったが天野川と同じく横にトンネルが掘られたためこちらも旧道になった運命をたどる。

旧道とはいえ意外に人通りがあるようで頭上から聞こえるのどかな会話に、体を隙間にねじ込み四苦八苦して進んでいる自分とわずか数メートルしか離れていない世間とのギャップを感じてしまう。上からはまさかこんな薄暗い川底を這い回っている人間がいるなんてとても想像できないだろう。



さて岩窟巡り。外に出たのでこれで終わりかと思ったら矢印のペイントはUターン、再び巨石の暗がりを向いている。岩窟巡りはまだまだ続くようだ。気を取り直し再び岩の隙間へと足を踏み入れた。

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丸く風化した岩の重なりが多かった前半ルートに比べこちらは一枚岩。隙間がないため外光がまったく差し込むこともなくさすがの高感度デジカメでもストロボを発光させなければ何も写らない。
しかし普段使用しない機能なので設定ボタンがわからず、さらにはあまりの暗さに手元も見えずと明るい川原まで戻って設定。先ほどもカメラの交換に駐車場まで戻ったりとこの空間を一体何度行き来したことだろう。相変わらず計画性がない人間だ。

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暗渠を這うように進んで行くとやがて真っ暗だった空間にわずかな光が差し始める。
まもなく出口だろう。

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ひょっこりと顔をだしたのは枯れ葉に包まれた森の中だった。地上から出て来た穴を振り返る。まさかこんな場所から地下へと続く謎の大空間が広がっているとは誰も思わないだろう。

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とにかく胎内を一周、現世に戻ることができた。ここからは申し込みをした社務所までわずかの距離。大きくUの時を書いて再び出発地点へと戻った社務所で一眼レフは無理でしたと告白するとやっぱりねと笑われてしまった。
他で経験した体内巡りへの多くは洞窟だったが磐船神社のように詰まった巨石の隙間を蟻のように抜けていくのは初めての経験だった。非常におもしろく再挑戦をしたかいがあったものだ。



しかし困ったことがひとつ。先ほど岩場で濡らしてしまった服がまったく乾かない。日差しが強い夏場ならばすぐに乾いたことだろう。しかし逆に冷え込む冬だからこそ多数の虫などに悩まされることもなく進むことができなのかもしれない。

[了]

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