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●2014年5月某日/海辺の聖地、阿古師神社を訪ねる。

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おそろしく冷え込んだ年末に行った紀伊半島廃校探し→LINKの最中、
三重県海辺の高台を走る311号線、二木島あたりで偶然眼に入ったのが下記の写真の風景だ。
海に突き出た突堤、その脇の鳥居、そして鮮やかな海面の色、なんとも魅力的な光景である。
海底へと映り込む漁船の影が海の透明度の高さを現している。
車を停め見渡してみると神社へ下れそうな歩道があったものの
この後、広大な紀伊半島縦断を控える身には遙か眼下まで往復する時間が惜しく
後ろ髪を引かれる思いでこの場所を後にしたのだった。

それから六ヶ月。季節は巡り初夏。
ようやく訪れたことができた神社で圧倒的な聖地感に圧倒されてしまった。

photo:Canon eos7d 15-85mm


帰宅後調べた結果、眼下に見えた神社の名前は阿古師神社だということが判明した。

手元の地図によれば神社は楯ヶ崎へという岩山へのハイキングコースの途中に存在している。
楯ヶ崎自体はどうやら有名な名所のようで地図にもコメント入りで紹介されてはいるものの、道中にある阿古師神社はマイナーな存在なのか、鳥居マークの記載すらない。

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楯ヶ崎を眺めたいという観光客は、年末に上記の写真を撮った場所に駐車場に車を停め、阿古師神社脇を通りぬけ片道2キロほどの山道を歩いて行くことになる。楯ヶ崎にはさほど興味がないのでふもとの神社まで往復できさえすれば良いのだが、高所にある駐車場から海辺の神社まで、見ての通り恐ろしく下る。

ということは当然帰りは急登を登らなくてはならないのだ。楯ヶ崎へは片道40分と書かれていたので途中の神社まで往復すればおそらく1時間以上だろう。この時間がネックとなり年末は神社訪問をスルーしてしまった。



たまに行く登山ならばこの程度の登り下りはなんとも思わないが、今回も正直あまり時間がない。移動距離・時間を解決しようと出発前、航空写真で阿古師神社周辺をチェックした結果、これならば距離・時間を同時に半分以下に短縮できるのではと希望を抱くことができた。

航空写真によれば神社周辺は深い森と急峻な傾斜が広がり一見正規の遊歩道以外のアクセスは無さそうに見える。しかし神社からわずかの距離に広がる漁港らしき空間。もしここから阿古師神社へ直接通じるルートがあるならば距離、高さ移動もほとんどないと考えていいだろう。
そもそも季節ごとの祭事も行われるであろう阿古師神社、遙か高所にある観光客向け駐車場からの悪路を年配者も多いであろう住民が行き来するとは思えない。公式には発表されてはいないものの、漁港から神社へ直接つながる近道が必ずあるに違いないと5月某日、尾鷲方面へ向け出発した。




現在地は下記のあたり。年末の記事で書いた地図を流用。破線がトンネル部分だ。
尾鷲の川で水遊びをしつつ熊野まで南下しUターン。波田須の廃校に寄ったり新鹿の海で遊んだりしながらここまで北上してきた。

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陸の孤島といわれてきた尾鷲、熊野間に広がるリアス式海岸に点在する漁村群。近年それらを打破する長大トンネルが次々に完成、アクセスは格段に向上した。複雑な海岸線を地道にトレースする311号と比べ、ためらいもなく山を貫く熊野尾鷲道のトンネルの直線っぷりが圧倒的。

さらに年末に通過した際は工事中だった紀勢道、海山、尾鷲北区間もついに開通。かつてその広大さゆえ探索には覚悟が必要だった巨大な紀伊半島が年々縮小していくように感じてしまう。

インターを下り海辺を走る311号へと合流、時折山道の合間にこぢんまりとした漁村が顔を出す。見下ろすと駅舎らしき建造物も見える。これが紀伊半島を海沿いに一周する紀勢本線。この路線、山塊の険しさを象徴するよう尾鷲、熊野間は開通時期が最も遅く、そのほとんどがトンネルとなっている。まるで地下鉄。

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そんな秘境を走る311号を北へと進んでいくとやがて目的地への分岐点が近付いてきた。
東へと進めば二キロほどで楯ヶ崎への公式駐車場へ行き当たる。一方右側には海へと下る細い道が続く。案内標識も見当たらないがこの先に例の漁港が存在するはず。やがて前方にまるで斧で割ったような不思議な形の山が見え始めた。尾根向こうに楯ヶ崎がある。

防潮堤によじ登り偵察。道路には釣り人だろうか意外に多くの車が路駐されている。そしてその先、海を隔てた対岸の森の中に目的地である阿古師神社の白い鳥居が手に取るように見えた。最悪、海岸伝いに歩いて行けるのではと淡い期待を抱いていたのだが海辺ぎりぎりまで茂る森と崖に阻まれ海から神社を目指すのは無理があるようだ。

漁港と神社、わずかの距離なのだが果たしてアクセス路はあるのだろうか。

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まずは予定通り漁港に到着。

邪魔にならぬよう港の最も奥に車を停める。見上げれば遙か頭上には311号の国道がちらりと見える。思い返せば半年前、国道沿いの駐車場から神社を見下ろしたその日は紀伊半島の至る所で冠雪を観測したおそろしく冷え込んだ朝だった。車から降りると冷気が体を包み込んでいたが、あれから6ヶ月、季節は巡り初夏の太陽が降り注ぎ暑いくらいだ。

再度見渡してみたものの、海へと突き出た手前の尾根に阻まれこの場所からは直接鳥居を望むことはできなかった。

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さあ、道を探すか。

こんな時、手っ取り早いのが地元民に聞き込みをすることだ、と岸壁へ向とかってみるものの、人の気配はなく静まりかえったまま。停められてる数台の車も他県からやってきた釣り人のものだろう。しかたがないので裏山の斜面をのぞき込み、あるいは草むらに入り込みながらあるべき道を探し周辺を歩き回ってみるものの、それらしき空間はまったく見当たらない。


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神社への近道があるというのは勝手な思い込みだったということか。
結局、遙か頭上の駐車場から延々と山を下るしかないのかと車を停めた最初の場所へ戻ってきた。横の斜面にあるのは先ほど見かけた番屋らしき古びた小屋。その小屋脇に古びた石段が見えるものの番屋へと続く通路だろう。試しに登ってみるも予想通り通路は閉じられた番屋入口で終わっている。

しかし一か八かと小屋の裏に回りついに発見した。崖のような斜面が続く裏の森、しかしよく見るとうっそうとした森の中から怪しい数本のロープが垂れ下がっている。また至る所に剥き出しとなっている木の根も人が長年掴んできたように明らかにすり減っている。間違いなく人道。
ロープを頼りに崖をよじ登り、やがて現れた薄い踏み跡とうっそうと暗い急登を登り続けること数分。山の中腹にある本来の遊歩道へ突き当たった。



ここからはもう迷いようのない等高線に沿っての水平移動。いやその前に帰路のことを考え、今飛び出て来た箇所に石で目印を付けておく。木々や草に覆われた漁港から近道、当然看板もなく神社からの帰路、うっかりここをスルーしてしまう危険性もある。

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薄暗い照葉樹の森を歩く。頭上には隙間無くびっしりと枝が広がり、日もほとんど差し込まない暗い道だ。時折鳥の鳴き声が響く山道を歩くこと10分ほど、水平に進んでいた遊歩道は次第に高度を下げはじめた。
やがて現れた急な石段を下っていくと、森の向こうに突然見慣れぬ色が広がった。鮮やかな海。薄暗い森を進んできたせいか、まぶしい水面の色におもわず目を細めてしまう。

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海際に積み上げられた古びた石垣にそって道は進んでいく。
そしてついに年末に高台から俯瞰して以来、想い続けていた阿古師神社前の水際へとたどり着いた。


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南国のようなエメラルドグリーンの海際ぎりぎりに存在している阿古師神社。

目の前に立つのは先ほど対岸からもよく見えた神社のシンボル、コンクリート製の白い鳥居。鳥居の真下からは長い突堤が海へと向かい突き出ている。対岸に見えるのは30分ほど前に車で通過した漁港への道路だ。向こうの防潮堤からこちらの突堤を偵察できたように当然こちら側からも視認可能。

べた凪の水面からはもちろん波の音もなく静寂に包まれた阿古師神社前の海。その静けさを破るのは時折沖合を進む漁船のエンジン音くらい。

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鳥居の真下に立つ。

照りつける初夏の太陽が突堤に鳥居と木々の影を作りだし、沖縄を思わせる鮮やかなエメラルドグリーンの海が広がるコントラストの高い底抜けに明るい光景。
一方振り帰ればそんな光景は一転、広がるのはうっそうたる紀伊半島の原生林。古びた巨木に覆われるひんやりとした昼も薄暗い闇の世界だ。

陰と陽、ちょうどその境界線に立つ鳥居はまるで結界を作っているようだ。沖縄の海辺によくある御嶽(うたき)と呼ばれる祈りの場を思い出してしまう。まさに聖地。



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二木島湾へと突き出た突堤の先端まで進んでみる。
先端からは対岸に二木島(にぎしま)集落をかすかに望むことができる。予備知識無くこの場所を訪れたので帰宅後、改めて神社について調べてみると手こぎの船で対岸と神社を横断する300年の伝統祭事、二木島祭が行われてきたという。ところがこの祭事、後継者不足もあってわずか数年前に廃止になったのだった。

また地元の人々は催事の際、急斜面を往復するのでもなく、あるいは今回の近道を歩くのでもなく、漁船を使い神社との間を往復しているということも判明。鳥居から突き出た突堤が漁船の停泊場所になるのだ。改めて年末の写真を拡大すると正月を迎える準備をしているのか鳥居前に数人の人影が見えよくみれば薄い煙も立ち上っている。神社前に停泊している数隻の漁船は移動用の手段だったのだろう。



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足元の海をのぞき込むと白砂と岩が混じる透明度の高い海中を多くの魚が行き来するのがよく見える。
この海、なぜ神社正面だけが汚れのない澄んだ不思議な色をしているのだろう。思わずそのまま泳ぎたくなってしまうほどの透明度なのだが神社前の神聖な海で泳ぐなど罰当たり行為は当然自制せねば。

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駐車場からこの場所へと続く遊歩道は阿古師神社の境内を通り抜けさらに森の中へと続いている。30分ほどの神社滞在中、観光客が二人ほど境内を通り抜け森の奥へと消えていった。さらに山を歩き到着する楯ヶ崎へ向かうのだろう。自分も楯ヶ崎も訪れてみようかと迷ったものの午後の探索予定も多いため、本殿でお参りを済ませ、漁港へと戻ることにした。15分ほど歩道を進むと先ほど目印をつけておいた分岐点へともどってきた。



草むらを探し回った結果、なんとか見つけた近道でたどり着くことができた阿古師神社。ある程度の高さ移動はあったものの、駐車場からの急斜面を上り下りする手間を考えれば30分近く時間と疲労を軽減できたのではないか。とはいえ入口も帰り道も不明瞭、急傾斜を草をかき分け進むこのルートはオススメはできない。



帰宅後気がついたことがひとつ。美しい海と鳥居に気をとられすぎたのか、肝心の阿古師神社本殿の写真が一枚もないのだった・・・


阿古師神社:場所/三重県熊野市甫母町

[了]
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