●2014年8月某日/紀伊半島廃校徘徊〜夏編〜.01

  • 2014/09/05 22:34
  • Category: 廃校
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この夏、今年何度目かになる紀伊半島縦断を再び行った。
わずか数日前に西日本を通過した台風本体、さらに台風が残した前線によって
雨水をたっぷりと吸い込んだ紀伊半島の山々は水で溢れていた。
そんな三重県奈良県最深部で廃校を巡った縦断夏編。


photo:Canon eos7d 15-85mm

2014年の夏は外れだった。
台風は去ったものの残された前線が停滞、天気図を眺めればまるで梅雨時末期のような気圧配置が続く日々。予定していた山陰、能登徘徊へ出かける気も起こらず近隣でプール、BBQ、波乗りと怠惰な夏をすごしてしまった。
とは行ってもどこか出かけたくなってしまう性格故、雨が小降りになったタイミングを見計らい年末年始に廃校探し→LINKを行った紀伊半島を再び縦断すべく出発。




霧に覆われた紀勢自動車道。来る度に南へ南へと開通していく紀勢道によって、広大だった紀伊半島はみるみる縮んでいく。尾鷲に早朝に立っているとは信じられない早さ。

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同じく開通したばかりの熊野尾鷲道を走り到着した三重県南端の熊野市はどんよりとした厚い雲に覆われていた。
熊野灘に面した玉砂利の浜は数日後に迫った熊野花火に備えるため、場所取りのシートで隙間無く敷き詰められている。大会当日、近辺は身動きの取れぬ渋滞によって修羅場と化ことだろう。
年末に行った廃校探しは熊野灘にそって勝浦方面へと向かったが今回は紀伊半島山間部へと入り込んでいく。





急峻な山から眼下の熊野灘へ注ぐ井戸川は、蛇行することなくほぼ直線に流れる。一旦雨が降ると暴れ川となるのだろう、河川周辺では至る所で災害復旧工事が行われている。川沿いに続く山道を走りとある廃校へたどり着いた。

今回も例のごとく出発前夜、探索予定地周辺をgoogle空撮でスクロールし続け、校庭らしき広い土地と平屋の怪しい建物を見つけておいた場所。朝靄の中、現れたのは予想通り廃校となった校舎だった。しかし管理させているせいか魅力を感じずさらには眠気もあってか結局一枚も写真もとらずじまい。下の建物は道中、見かけた廃墟となった理髪店。



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小さな集落を抜けるとやがて熊野川の支流、北山川に突き当たる。
紀伊山地をうがつように蛇行する急流、というわけでもなく正確には七色ダムがせき止めてできた人造湖だ。ここ一週間ほど降り続く雨の影響かダム湖面は茶色く濁っている。


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さてこの場所が紀伊半島徘徊の分岐点、右か左どちらのルートを選択するかで今後の探索行程は大きく変わる。

急峻な山々が続く紀伊半島中央部では南北に流れる川に沿って道が敷設されたため必然的に南北移動を強いられる。目的地、大阪へ向かう主要道はざっと二つ。右折し大台ヶ原をかすめ川上ダムを通過、縦断する国道169号。左折し十津川、谷瀬の吊り橋を通過し縦断するは国道168号。
それぞれ訪れてみたい場所があったものの今回は十津川方面へ向かうことにし突き当たりを左折した。


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深い谷間にあるダム湖から山道を登り続ける。いつの間にかかなりの高度まで登ったようで周囲にはかすみがかった山々が連なる光景が広がっていた。さらに少し進んだ先には棚田で有名な丸山千枚田がある。
そんな高台にある廃校、西山小学校跡。小ぶりの木造平屋の建物が四つ並ぶこぢんまりとした廃校。

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割れた窓ガラスから室内をのぞき込むとガランとした教室が並んでいる。
渡り廊下には気になる看板が残されていた。丸山千枚田をはじめ町のポイントが書かれた書かれた37kmにも及ぶコース。この学校では紀和町一周マラソンなるものが行われていたのだろうか。まさか一気に走るわけでもないだろうから校庭を走った分だけコマを進めていく感じなのだろう。同じようなものは四国の廃校でもよく見かけた。


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山を下り谷間を流れる北山川まで戻ってきた。

川幅が広がると台風の大雨によって茶色く濁るダム湖が再び現れる。次のダム湖は地図によれば小森ダム貯水池。日本屈指の降水量がもたらす豊富な水量を利用しようと古くから発電事業の対象となった紀伊半島の河川。かつては飛沫を上げる渓流が続いていたであろう北山川も例外ではなく、いくつものダムにせき止めれた水面は流れもなく、まるで時間が停止したかのようなよどんだ姿を見せている。


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国道へ復帰するためダム湖の対岸へ渡ろうと古びた橋を渡っていると、手摺りの合間から眼下に広がる不思議な光景が目を引いた。

台風の影響で茶褐色のよどんだ泥水がどこまでも続く広大なダム湖が突如鮮やかな緑色に変わったのだ。泥水と違い湖底までくっきりと映し出す透明度。茶色と緑、分離した二種類の水はまるで水と油のように決して入り交じることなくはっきりと境界線を作りゆったりと動き続けている。霞がかかったモノトーンの世界でここだけが妙に鮮やかだ。

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小森ダム湖面に浮かぶバスボート1408KiPeninsula12.jpg


緑色の水はいったいどこから流れ込んでいるのだろうとダム湖を遡ると正体が判明した。北山川支流の尾川川だ。濁った小森ダム湖へと流れ込むきわめて透明度の高い清流が不思議な光景を作りだしていたのだ。それにしても同じように大雨に見舞われたにもかかわらず流れ込むこの川だけが濁らずに透明度が保たれているのはなぜなのだろうか。

緑と茶色の境界線にはバス釣りらしきボートが浮かぶ。釣り用語でインレットと呼ばれる川の流れ込みは良ポイントのようで見下ろしているとボートは繰り返し行き来し釣り竿を振っている。

小森ダム湖面に浮かぶバスボート1408KiPeninsula13.jpg


泥流と清流、二つの水の境界線は時に回転し大きな渦を作ったりとまるで雲のように自由に形状を変化させながら動いていく。流体の動きが手に取るように俯瞰できる光景に魅せられ長い間橋上から眺め続けてしまった。



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紀伊半島を形成する三重、奈良、和歌山県、三つの県境が交わる最深部「瀞峡」。蛇行する北山川が作り出す奇岩を遊覧船にのって眺めるという昭和を感じる昔ながらの観光地のひとつだ。川下りで有名な瀞峡入口はレトロな建物がひしめきあう魅力的な場所だった。

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振り返ると高台に先ほど通過した国道169号が見える。さらに奥にちらりと見える赤い橋は旧道だ。
近年、奥瀞道路と呼ばれる道の整備が着々と進んだことによって秘境瀞峡のアクセスが一気に改善された。とはいっても整備されたのはこのあたりまで。瀞峡と熊野川区間の169号線はまだ狭路が続く。それでも年末に探索した際はトンネル工事が行われていたのでまもなくアクセスも改善されることだろう。



そんな瀞峡集落に足を踏み入れまず眼に入るのが白い廃屋。建物は駐車場正面に位置するためここを訪れた観光客は必ず目にすることになる。よくみれば塩、たばこと書かれた看板があることから商店だったのだろうか。いや、かつては塩、タバコって専売だったはず。帰宅後調べると郵便局の旧局舎なのだそうだ。


瀞峡の廃屋1408KiPeninsula16.jpg
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瀞峡を訪れる観光客の目的は観光船に乗っての北山川遊覧。しかし自分がここを訪れた目的はもちろん川の遊覧などではない。目的地目指し駐車場から川に向かい歩いて行く。



知名度は非常に高いこの観光地、お盆休みど真ん中にあたる本日は当然観光バスや車であふれかえっているのでは覚悟していたものの人の気配のまったくなく拍子抜けしてしまった。先ほどの広大な観光客向け駐車場に停車しているのは自分の車ただ一台。午前中だとは言えかき入れ時の盆休み、大丈夫なのだろうかと心配しながら進んでいくと眼下に重厚な和風建築が姿を現した。
川への急斜面にへばりつくように建てられた建築物、これが瀞峡での目的地、瀞ホテル。


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100年という歴史を持ちながら長い間休業していた瀞ホテル、その立地と風格ある姿を活かしたカフェとして最近再生されたという。これはぜひ客として内部も見学してみたいものだと訪れたのだった。断崖にへばりつく立地はもちろん入口へのアプローチとなる苔むした石段もいい感じだ。

時計を見ると10時50分。特に表示はないが当然営業時間外だと思われる。11時には開店するのかもしれないと思い時間をつぶそうと断崖を歩いているとさらに目を引きつける建物があった。

それは対岸の断崖に埋もれてしまったかのようにみえる廃屋だ。

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崖に細い支柱を設置し本体を支えている姿はまるで投入堂。
どのように建設したのかは見当もつかないがこの無理矢理感がたまらない。さらに近くから眺めようと瀞ホテル直下の岩場を伝い接近を試みるも深く深く削られた谷に行く手を阻まれた。


瀞ホテル別館の廃墟1408KiPeninsula22.jpg

谷を流れるのは北山川へ流れ込む支流。その遙か頭上には廃屋へとつながる吊り橋が。
しかし頼みの吊り橋は激しく破損、板は外れだらりと空中に垂れ下がったケーブルが廃感を演出している。いくら周囲を見渡しても廃屋へのアクセスは吊り橋のみ。これぞ難攻不落の廃墟。一体どのように建設されたのだろうか。

瀞ホテル別館の廃墟吊り橋1408KiPeninsula24.jpg
 



帰宅後こちらも調べてみたところ、この廃屋、なんと先ほどの瀞ホテルの別館なのだそうだ。
確かに朽ち果てた吊り橋は瀞ホテルと直接つながっているようにも見えた。

いまだ紀伊半島の各所に爪痕を残す2011年台風12号が引き起こした大水害は瀞峡も例外ではなく、水面からはかなりの高所にある瀞ホテルはもちろん、吊り橋まもでが濁流によって破損してしまったという。当時、川の水位は吊り橋にまで達したというからその猛威に驚かされるばかり。
もしかすると別館も何年か後には瀞ホテルのように復活している姿を見ることができるのかもしれない。



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周囲を徘徊してるうちに次第に時間は経過しまもなく11時。そろそろ営業が始まるのではと瀞ホテルへ向かう途中出会った従業員の方に伺うと開店は11時30分なのだという。

あと30分。微妙な時間。待つか進むか。しかしこのあと広大な紀伊半島縦断を控える身にとってはここでさらに待つわけにもいかず今回の瀞ホテル訪問はあきらめることにした。紀勢道の開通で予想より早く現地へ到着しまったことが災いしてしまった。



気落ちしながら瀞峡を後にし高台を走る国道169号へと復帰する。しばらく進んだところで今度は幹線道路から外れ、さらに山奥へと続く道に踏み込み曇天の紀伊山地深くへと車を進めていく。

[続く]
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