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●2014年8月某日/紀伊半島廃校徘徊〜夏編〜.02

  • 2014/09/25 22:40
  • Category: 廃校
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夏の紀伊半島縦断後半。
その広大さと山深さゆえかつて探索には相当の覚悟が必要だった紀伊半島は
近年南へと延び続ける紀勢自動車道よってアクセスが劇的に改善された。
早朝から廃校、ダム湖、そして昭和な瀞峡集落を巡り終えると
さらに奥地を目指し紀伊半島最深部へと入り込んでいく。
[前回の記事]


photo:Canon eos7d 15-85mm


現在地は三重、奈良、和歌山、三つの県境が交わる瀞峡と呼ばれる景勝地。
川下りには目もくれず瀞ホテルやレトロな廃屋が点在する昭和テイストあふれる集落を見学。しばらく走り国道から分岐する細道をさらに山中に向かい走り続ける。
車が進むのは深い谷の中腹をトレースする苔むした道。午前中徘徊していた熊野付近から次第に遠ざかり、いつの間にか紀伊半島最深部の奈良県十津川あたりまで北上してきた。



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走ること数十分。視界が広がると数軒の民家が姿を現した。
高所の急斜面に民家や段々畑が張り付く紀伊半島や四国でよくみる山岳集落のひとつ。見上げると学校校舎らしき建物が見えた。平地が貴重な集落で果たしてよそ者が車を停める場所などあるのだろうかと心配しつつ近付くと道路を張り出して作ったスペースがあった。

駐車場には5台程の車。ナンバープレートを見ればそのすべてが大阪や広島をはじめとするバラエティに富んだ他府県ナンバーばかり。紀伊半島山中には似つかわしくもなく、全国から集まった廃校マニアの集会でも行われているのでは、と勝手に期待を膨らませ石段を登っていく。

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斜面を削り取りとった狭い校庭に立つ木造校舎が姿を現した。廃校、葛川小学校跡。
緑鮮やかなこの校庭、集落で最も広い面積を持つ平地だ。

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このような急傾斜地帯に張り付く秘境集落の廃校を巡る度にいつも思うこと。それは平地の確保にどれだけ苦労したことだろうということだ。集落のわずかな平地は既に貴重な耕作地として使用されており、おそらく明治期だろうが学校建設が始まった際には、校舎はともかく広いだけの校庭が果たして本当に必要なのかとおおいに揉めたことだろう。

さらに校舎から上へと続く急な階段を上ると講堂か体育館のような建物に突き当たる。窓から中をのぞき込むと室内には「葛川小学校廃校記念同窓会」と書かれた垂れ幕が張られたまま残されていた。

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結局廃校では廃校マニアはもちろん誰一人として人にあうことなく先ほど車を停めた空き地へと下ってきた。他府県ナンバー等の車は、お盆休みを利用し生まれ育った集落へ帰省した人々のものなのだろうか。自分の故郷がこのような場所ならば思わず自慢したくなってしまうような秘境とも言える立地の集落だった。



道は平行して流れる川に沿ってさらに紀伊山中へと続く。対向車もまったく現れない曲がりくねった山道が延々と続く光景にまるで酷道のようだと書きそうになるが、この程度の道を酷道と呼ぶのはここ紀伊半島では少し大げさだろう。むしろ紀伊半島ならば標準的な道。こんな場所でも路線バスが走っているのか時折古びたバス停が現れるのには驚かされる。


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西日本に一週間ほど降り続いた豪雨によって、高い保水能力を持つはずの紀伊山地も飽和状態に達したのか道路沿いでは至る所から噴き出した水で深い水たまりができている。
また時折道路際に現れる急ごしらえの滝も魅力的だ。普段は枯れているのだろうこれらの滝、いずれも降雨直後ということでアスファルトに激しく水をたたきつけている。滝の脇を通過する際、窓から車内に入り込む冷気と水しぶきは今日のように蒸し暑い日にぴったりの清涼剤。


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眼下を流れる渓流にも降りてみたいのだが、このような所に限って川原に降りる道がないものだ。
蛇行する渓流に沿って続く曲がりくねる狭道、そんな425号線を地道に走り続けようやくのことで紀伊半島を南北に縦断する二つのルートのひとつ、国道168号に合流した。ずいぶん進んだのではと地図を見ればまだ巨大な紀伊半島の南端だ。とはいえここからは道幅も広がり同時にペースもあがる。

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紀伊半島を南北に蛇行して流れる十津川をせき止める風屋ダムは盛大に放水中。
台風の雨水をダム湖にたっぷりうけとめ、先ほどの滝とは対称的な茶色い水を思う存分はき出している。全門開放中ではないもののそれでもかなりの迫力だ。

ダム横の空き地で地図を広げ再び思案。紀勢自動車道のおかげで時刻はまだ昼過ぎ。どこか近辺に面白い場所はないだろうかと地図に目を走らせていると野迫川村あたりの「立里」という地名が目にとまった。



深い山中に隔絶された謎の集落「立里」を訪れたのは今から7年前の同じ八月。
不思議なことに谷を挟みわずかの距離を走る県道からのルートは存在せず、大きく迂回し深い山々を越え辿り着くというあまりにアクセス不便な集落。これは怪しい、何か秘密があるに違いないと考え集落を目指したのだった。山を下ったどん詰まりにある立里集落にポツンとあったのは廃校となった木造校舎。
そのとき出会った廃校を再訪しようとルートを変え野迫川方面に車を向けたものの、再び降り始めた強い雨に訪問をあきらめUターン、再び168号へ復帰した。

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紀伊半島中心部を南北に流れる十津川に沿って北上を続けやがて懐かしい谷瀬の吊り橋が近付いてきた。吊り橋横を通過するのは実に15年ぶり。当時と比べずいぶんと道が改善されたことに驚かされる。かつてはすれ違いも困難だった谷瀬の吊り橋周辺道路も集落をバイパスするトンネルが作られことによって気づかぬまま通過するところだった。

「谷瀬の吊り橋」は対岸にある谷瀬集落と国道を繋ぐため、住民からの要望で60年以上も前に建設されたいわゆる生活吊り橋。昔は地元の方が原付で吊り橋を渡る光景を見ることができた。かつて日本一を誇っていた谷瀬の吊り橋も近年各地で大型の観光吊り橋が建設された結果、しばらく訪れない間に「日本一」の座は譲り渡すことになってしまった。
しかし自分は九重夢大吊橋に代表される観光客用吊り橋には魅力を感じない。必要に迫られ建設したわけでもない観光客用吊り橋よりも、未だ山間部に数多く残された地元民の生活道としての本来の吊り橋を応援してしまうのだ。


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さらに168号を北上した五條市のあたり。
このあたりまで来ればようやく広大な紀伊半島脱出も間近。最後に寄りたかった場所はとある廃鳥居。川の対岸に見えるこんもりとした小山にあるらしい。増水した川を渡り集落を抜けると小さな橋が現れる。その橋から見下ろしたのが下の写真。

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橋の下を流れるのは川、ではなくアスファルトが敷かれた道。この道路、五新線と呼ばれた未成線の跡地。かつて五条と新宮を鉄道で結ぶという壮大かつ無謀な紀伊半島横断計画は着工から30年あまりで頓挫、途中まで建設が進んだ軌道部分は現在路線バスの専用道として活用されているという。緩やかな曲線、確かに道路と言うより鉄道のように見える。



橋を渡り山道を歩いていくとやがて目の前に朽ち果てた鳥居が姿を現した。

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上部に取り付けられた扁額にかすかに残った文字からは「春日神社」とわずかに判読することができる。改めて眺めるとこの鳥居、明神式のなかなか立派なもの。しかし朱色に塗られていたであろう柱も色あせ、上部へと続いていたはずの参道も枯れ葉に覆われ消滅、まるで廃神社のような雰囲気だ。


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山上には何が残っているのだろうと枯れ葉に足を滑らせながら山の斜面をよじ登っていく。曇天の紀伊半島、日は陰っているというのに湿度だけは異常に高くあっという間に汗まみれだ。

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本殿らしき建物へ到着。周囲はうっそうと茂った木々に覆われ視界が効かないものの山頂だと思われる。廃墟のような下部とくらべ山上の本殿は手入れがなされているようだ。なぜこちら側の参道だけが寂れてしまったのか。時間も無くこれ以上の探索はできなかったが、おそらくどこかに建設された新道によって旧参道は放棄されてしまったのだろう。

頭上にばらばらという音が響き始めた。見上げると葉を叩き始めた大粒の雨。あわてて斜面を滑るように下りると神社、来れば来るほど味がでる紀伊半島を後にした。

[了]
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