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●2014年12月某日/大阪梅田旧北ヤード跡地を歩く〜冬編〜

  • 2015/03/13 22:30
  • Category: 大阪
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廃墟に代表される朽ち行くものを観察するのと同時に
新たにこの世に産まれるものを観察するのも好きだ。
このような「もの」を生み出す現場に興味を覚え始めたのはたのはいつのことだろう。
記憶を遡ると巨大プロジェクト建設現場を初めて訪れたのは明石海峡大橋建設現場、10代後半の頃だった。
当時撮った写真を引っ張り出すと、橋桁同士はまた繋がっていないのでおそらく1996年あたりのことだろう。

さて10年近く追い続けた大阪梅田北ヤード再開発は第一期となるグランフロントの完成によって一旦終了。
それから二年余り、未だ残る広大な空き地をどう活用するのか、
いよいよ第二期開発のうわさもぽつぽつと浮上し始めた。
年末、いつもの大阪定点観測へ梅田スカイビル及びグランフロント大阪を訪れた。


photo:Canon eos7d 15-85mm

大阪の中心地梅田。その梅田にあるJR大阪駅の北に広がる広大な空き地、これが「梅田北ヤード」跡だ。
かつては梅田北ヤードと呼ばれていたが近年「大阪駅北地区」「うめきた2期区域開発」「旧北ヤード」あるいは「梅田貨物駅跡地」などさまざまな呼び方がつけられた。周囲の建物が次々に解体されていく中、高層ビルに囲まれ最後まで異彩を放っていたレトロな巨大倉庫も昨年ついに解体されこの巨大空間は完全な更地となった。

梅田北ヤード地図1412umekitamap02.jpg





まずは2013年に完成したグランフロント大阪より旧北ヤードを見下ろす。

広い。あまりに広大な土地。
これが大阪最後の一等地とよばれる旧梅田北ヤード跡地のベールを脱いだ本当の姿だ。長い間敷地を埋めてつくしていた建物、レールがすべて解体撤去され改めてその広さに気づく。都心の超一等地という呼び名にも改めて納得。

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かつて梅田貨物駅があったこの場所、国鉄民営化後はその移転先、また大阪都心の超一等地に残されたこの虎の子のような土地をどのように利用するのか長い間議論の対象となっていた。オフィス街、大学、公園、超高層タワー、はたまたサッカースタジアムとさまざまな案が出ては消えていく。



真横に西日本最大の乗降客数を誇る巨大駅舎大阪駅が併設、4〜500m級という世界ではすでに当たり前になった超高層建築も一見可能に見える夢のようなこの場所、同時に北側わずか10kmに立地する伊丹空港によって航空法の高さ制限に干渉されるというジレンマも併せ持つ。この航空法、大阪に置いてはより梅田、中之島、天王寺、と都心から南へ離れるほどビルの高さが増すという不思議な現象を引き起こしている。


それにしても航空法による高さ制限、大阪に限らず羽田を近隣に持つ東京南部においても超高層ビル建設の大きな障害となっている。ちなみに634mの東京スカイツリーは航空法の緩和、300mのあべのハルカスはわずかに枠外+緩和ということでそれぞれ高層建造物の建設が可能になった。

うめきた2期区域開発1412umekitamap01.jpg


この広大な土地、個人的には木々で埋め尽くし100年後には明治神宮のような広大な森へ変貌させてたいところだが採算度外視の緑地は決して受け入れられることはないだろう。





最近浮上しているのが緑地と建造物が混在する折衷案だ。最近もまたもコンペが行われ(一体何度目だ??)ゼネコン各社がビルと公園を織り交ぜたデザインを提案している。このままだと周囲の街と横並びの200m程度ビルがまた数棟建って終わりそうだ。


しかしこのまま進んでしまって良いのだろうか。一旦作ってしまった建造物は取り返しがきかない。
超高層ビル建設に大きな障害となる「梅田200mの壁」航空法も未だ緩和されず、さらに2045年に大阪まで延長されるというリニア中央新幹線終着駅も新大阪かこの梅田か、決着すらついていないというのに先走った結果、中途半端な建造物を建ててしまうのはいかがなものだろうか、と考えてしまう。
しばらく土地を寝かせ航空法の緩和、高さ規制の壁が破られるのを待つのも一つの案ではないか。


とはいえこの場所を埃舞い上がる土剥き出しのまま放置しておくことは景観上好ましくない。それならば暫定緑地としてはどうだろう。
緑地といっても造成費、メンテ、整備がネックとなる「公園」のようなものではなくシンプルな草原。そもそも以前から不思議なのが日本で緑地計画が持ち上がると必ず池、噴水、遊具などが付随する大げさな公園ができあがることだ。どうせいつかは何かを建てるのだから無駄な費用やメンテナンスも必要ない適度な木々、さらに芝と違って管理が楽な原っぱの組み合わせで良いのではないか。

しかしあまりにも長い間緑地が続くといざ開発という時になって、人工的に作っておきながら自然破壊だという声が出てきかねないので注意が必要かもしれない。せいぜい15年くらいだろうか。

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そんなくだらない妄想を膨らませながら北ヤード跡地を南側の某ビルより望む。

左(西)が梅田スカイビル、そして右(東)の建物がグランフロント大阪。こちらから見ると両者の位置関係がよくわかる。サイトで公開されている大阪市の計画書PDFによれば西端を走るJRは東に移転、大阪駅に隣接する新駅共に地下に建設されるよう。


重機が点在するこの場所を埋め尽くしていたのが先ほども書いた赤い屋根のレトロな巨大倉庫。
長い間この地に鎮座し梅田の歴史を見守ってきたこの倉庫、土地利用を巡り揉めに揉め結局工期を一期と二期にわけるという玉虫色の決着の末二年ほど前にようやく解体された。無骨な外観の廃墟のようなこの倉庫、周囲の高層ビルとのミスマッチな光景は個人的には結構好だった。見慣れたものが消滅すると少し寂しくもある。

ついでに北ヤードの昔の様子を調べようと国土地理院サイトを開き1960年代の空撮写真を眺めるとこの場所、そして線路を挟んだ南側の二カ所に大きな「池」のような船だまりが見える。ちょうど現在ブリーゼタワーなどの高層ビルが密集するあたり。この船だまりから伸びる水路を写真上でたどっていくと中之島あたりの堂島川へ繋がっていることがわかる。

そうこの場所の西側、かつては運河だったのだ。現在でこそ鉄道、トラック輸送がメインとなった物流だが建設当時は水運が全盛期、貨物は船によって大阪湾との間を行き来したという。梅田という名称の語源は「埋田」から来ていることはよく知られているようにこの辺りかつては低湿地帯であった。今回梅田北ヤードに船を横付した写真を見て、一見内陸にあるように感じるこの梅田が実際は海面の高さとほぼ変わらない低地ということを改めて実感する。そういえば前回、北ヤードを訪れた際は豪雨から数日たったというのにこの空き地、そのほとんどが水没したままだった。



一期工事の集大成、4つの高層ビルの集合体、グランフロント大阪。これほど北ヤード定点観測にふさわしい場所はない。迷路のように複雑な構造に迷いながら新たな俯瞰ポイントを探す。テナントの間を行き来しているとひょっこりと屋上やバルコニーへ出ることができるドアが現れる。

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続いて東側。
グランフロント東側に見える白い壁。これが怒濤の建築ラッシュ、大阪梅田再開発の先陣を切ったこのヨドバシカメラ梅田店。昔キリンを目撃したこともあった長らく空き地だったこの場所を1997年、大方の予想に反し落札したのがヨドバシカメラだった。関西ではなじみの薄い家電量販店が大阪駅裏手の一等地を落札したことは、高級百貨店誘致をもくろんでいた近隣関係者に大きなショックを与えた。失望感溢れる当時の報道をよく覚えている。

だが結果としてヨドバシ開業は低迷していた梅田復活の引き金となり、さらに日本橋家電街を消滅させ、梅田、いや大阪の導線の入れ替えに成功した。

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ヨドバシカメラ梅田開業から数年の時を経て阪急梅田ビル立て替え、大丸(サウスゲートビルディング)、大阪駅(ノースゲートビルディング)、グランフロント、そして阪神百貨店立て替えと長い間ほとんど変化のなかった大阪梅田の光景はここ10年で一変、生まれ変わった。そんなヨドバシカメラ北側、長らく駐車場だったこの場所にもついに高層ビルの建設が決まった。



グランフロントから地上へ降りると次は新梅田シティにある梅田スカイビルへと移動を開始。
ぽっかりと口を開ける大きな空間が特徴的な梅田スカイビル、その竣工は意外にに古く1993年。スカイビル自体は目と鼻の先に見えるものの梅田貨物駅を挟んだ対岸に建つため例の「北ヤード」を通過する必要がある。とはいっても道があるはずもなくその真下に掘られた薄暗い地下道「北梅田地下道」が唯一のアクセスだ。

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↑地下道を出たところから先ほどのグランフロントを振り返る。上は2011年頃、建設中だ。


昔から何度も足を運んできた梅田スカイビル、173mと特筆すべき高さではないが周囲に何もないため定点観測には適した場所だ。ビル開業当初は賑わったと聞くがここ10年ほどはいつ訪れても閑散とし寂れた雰囲気を醸し出していた。またスカイビルへと向かうアクセス路となる長い地下通路も同じように人の気配はほとんどなく、点滅する水銀灯に照らし出される怪しい雰囲気満点のある意味好きな場所でもあった。


Umeda Sky Building旧北ヤードの地図1412umekitamap01.jpg



ところが今回数年ぶりに梅田スカイビルを訪れ驚かされた。

かつてホームレスの寝床になっていた地下道は人で溢れ、スカイビルのエレベーター前は長蛇の列。こんな大勢の客を見たのは初めての経験だ。特に目に付くのは外国人の姿。欧米系の観光客は数年前からちらほら見かけたものの今回はインドネシアあたりだろうか、イスラム圏の方が多数目に付いたのが印象的。少し前にピラミッド、アンコールワット、パルテノン神殿、コロッセオ、サグラダ・ファミリアなどそうそうたる顔ぶれと共にTOP 20 BUILDINGS AROUND THE WORLDに選出と報道されていたがその影響なのだろうか。世界に名だたる歴史的建造物群の中にちゃっかり入ってしまった梅田スカイビル、本当に大丈夫なのだろうかとすこし心配してしまう。海外には桁外れのビルはいくつもあると思うのだが・・・。

そんな混み合ったエレベーター、さらに空中を斜めに移動するエスカレーターを乗り継ぎ最上階に到着。これまた混雑している受付でチケットを購入後、屋上へつながる階段へ足を踏み入れた。このビル、外気に触れながら展望を楽しめることができるのが大きな売りとなっている。





そんなスカイビルではあるが実は展望台としての致命的な欠陥がある。
風が吹き抜ける開放的なこの屋上、360度全ての風景を見渡すのは一見容易に思える。確かに明石大橋や生駒、六甲など地平線に近い風景を見渡すには優れたビルだ。しかし二つのビルの上に上部を載せていると言う特殊な構造のため下部に突き出た様々な構造物に邪魔され足元の光景を俯瞰することができないのだ。
それならばと一階下の最上階展望室へ戻れば反射が目立つガラス越しではあるものの確かに足元の俯瞰は可能。(下の写真)

Umeda Sky Building1501umekitanow05.jpg


ところがこの階、今度は東面と西面が受付カウンターや壁面で塞がれているため、こちらからも360度を見渡すことができず。特に東側が塞がれているのが致命的。これほど絶好の位置に絶好の高さで立地しながらも肝心のグランフロント大阪、北ヤード再開発区域はほとんど見下ろすことができない。
展望台を自称するならこれはぜひ解消して欲しい。今後大開発が行われるであろう北ヤードの光景を目の当たりにできる最高の場所なのにあまりにもったいない。


それでももわずかに見える北ヤードを無理矢理見下ろしてみる。5年ほどの前の光景と比較。当時はまだ倉庫の赤屋根は健在だ。

梅田スカイビルよりの展望1501umekitanow08.jpg
梅田スカイビルよりの展望1501umekitanow09.jpg


今度はビルの北側から開発予定地をのぞき込む。こちらの方角も展望台からは視認できないのでガラスの隙間から無理矢理撮ったもの。それにしても肝心の東側が見えず相変わらずストレスがたまる展望台だ。

梅田スカイビルよりの展望1501umekitanow06.jpg
梅田スカイビルよりの展望1501umekitanow07.jpg


同じように名古屋の超高層ビル、ミッドランドスクエアも250mという中部地方最高峰を誇りながらも展望通路とガラス面になぜか距離があるため、反射や柱が眺望を邪魔し猛烈な勢いで進む名古屋駅前再開発を満足に俯瞰することはできない。
構造から改修する必要があるミッドランドスクエアと比べスカイビルはまだ改善の余地はあるのではなかろうか。観光客が急増、かつての寂れた状態から復活しつつあるチャンスをふいにするのはなんだかもったいなく感じてしまう。夜間イルミネーションなどは凝っているので例えば下部階を東側専用展望スペースとして開放するなど眺望面も改善して欲しいもの。



ついでに昔からの梅田移り変わり写真を並べておいた。さらに細かくはこちら→LINK 

↓2006年頃、古びた二階建て食堂街が取り壊され、まもなく大阪ステーションシティの建設が始まる。
梅田再開発1501umekitaold02.jpg
↓鉄骨のくみ上げが始まった。今は景観に合わせシンプルになったヨドバシ外観もこの頃は派手だった。
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↓ノースゲートビルディング組み上げと同時に巨大な屋根が大阪駅プラットホームに架けられていく。
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↓現在グランフロント大阪の巨大建造物が建つこの場所はまだ更地。ヨドバシカメラがよく見える。
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↓2011年、ステーションシティが竣工するのを待ちかねたかのように裏手でグランフロントの建設が始まった。
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梅田再開発1501umekitaold07.jpg
ビルはみるみる高さを増していく。阪急、大丸、そしてグランフロント。この2011年頃が梅田再開発のピーク。これだけの棟数のビルを一気に組み上げる光景は近年まれだろう。航空法の制限がなければいったいどれほどのビルが建ったのか。

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グランフロント大阪梅田再開発1302umeda001.jpg




このように完成した大阪ステーションシティ及びグランフロント。幸いなことに開業後は多くの客でずいぶん賑わっているとのことだが、自分はといえば正直完成した建造物にはあまり興味が湧かないため開業後は観測以外ほとん足を伸ばすことはなくなってまった。

スカイビルから地上へ戻る。ここから線路伝いに阪急中津駅まで続く寂れた下町を歩くのがお気に入りのコース。古びた町工場を始めとする下町、空を覆う電線、その向こうに高層ビルが建ち並ぶ自分の好きな光景が続く道だ。しかし今回は南側に訪れたい場所があるので再び先ほどの地下道へもぐり込むと再び大阪駅方面へと向かった。



近代的なビルが続々と建設され活気に満ちる梅田周辺。まさに大阪、いや関西の最先端地区。
一方同じ大阪市内にありながらまったく逆の忘れられた空間も存在するのがこの街の奥深い所。

次に向かうは都心の秘境駅、南海木津川駅。半年ぶりの訪問となるが、どこか変化はあるのだろうかと地下鉄堺筋線へ乗り込んだ。

[続く]
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