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●2015年7月某日/嵐の毛無峠で過ごした夜.2

真夏に行う平地での車中泊はなんとしてでも避けたいと
標高が高く涼しい場所を探し求め辿り着いたのが長野県群馬県県境に位置する毛無峠。
当初この場所で寝るつもりもなかったものの標高1800m、
下界の猛暑を思わず忘れてしまう涼しいこの場所が気に入り車中泊をすることに決めた。
突如襲来した夏の嵐、ノスタルジックな眼下の花火大会を経て夜は更けていく


[前回の記事]

photo:Canon eos7d 15-85mm


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毛無峠2日目、AM04:15
昨夜の喧噪が嘘のような静かな夜明けとなった。幻想的なグラデーションが毛無峠に林立する鉱山索道のシルエットを浮かび上がらせる。振り返ると破風岳方面はまだ暗闇に沈み朝と夜がり交じる不思議な時間帯。

朝の毛無峠索道1508kenashi2day02.jpg
朝の毛無峠索道1508kenashi2day03.jpg
朝の毛無峠索道1508kenashi2day04.jpg
朝の毛無峠索道1508kenashi2day01.jpg


それにしてもよく眠れた。標高1800mの高地では熱帯夜が続く真夏の車中泊とは思えない心地よい涼しさ、薄手のシュラフ一枚でちょうどよい気温だった。



現在立つ毛無峠、群馬県側の遥か眼下に広がる赤茶けた空間はかつての小串鉱山跡。
峠からダート車道がつづら折りを繰り返し鉱山跡まで伸びているものの、先述したよう車は通行止め。峠道は「群馬県」と書かれた標識とともに車の往来を阻止するチェーンによって塞がれている。徒歩でしか向かう事ができないこの鉱山、自分もかつて目指したことがあったものの、周囲を包み込む濃霧によって断念されられた。

毛無峠の群馬県看板1508kenashi2day05.jpg



今回は鉱山はもちろん、毛無峠を訪れる予定すらなかったため何の準備もしていない。しかし朝もやに包まれる早朝の鉱山を見下ろしていると次第に欲がわいてきた。
至る所に設置された「遭難多発区域」と書かれた看板が躊躇させるものの、朝は快晴、昼から雲が広がり午後は霧か雷雨といった流れが自分が経験してきた夏山の典型的なパターン。時刻は午前5時30分、この時間帯ならば霧が発生する確率は限りなく低い。とはいえ現在立つ標高1800mの峠から目的地は遥か眼下。

所要時間はどのくらいかと、テントから這い出てきた小串鉱山をよく訪れるという方に尋ねると下り40分、登り50分の行程かな、との返事。しかし今日は他にもいくつもの予定があり最低でも朝8時には毛無峠を出発したい。
こうなれば行程を半分に縮めてやろうと思い立つ。決して理由がない訳ではなく数年前の槍・穂高縦走はじめ北、南アルプスはじめ多くの山を歩いてきた自負はある。しかし今日の自分の格好、山の装備といわれるものからはほど遠い服、靴。ペットボトルの水も昨夜飲み干してしまい一抹の不安を抱きつつも峠から一歩を踏み出した。

毛無峠の群馬県看板1508kenashi2day06.jpg


AM06:05

下りは早い。みるみる高度を下げていく。振り返ると先ほどまで真横にあった索道鉄塔郡は遥か上部となった。早朝とはいえ夏の日差しはきつくすでに昼間のような雰囲気。この索道、かつて小串鉱山から長野県側へ硫黄を運ぶルートとして設置されたもの。閉山後、鉱山施設の多くが解体撤去されたものの、不思議な事に索道だけが残され毛無峠のシンボルとなっている。

毛無峠の小串鉱山索道跡1508kenashi2day07.jpg
毛無峠の小串鉱山索道跡1508kenashi2day08.jpg


当初は看板もありわりと歩きやすい山道だった鉱山跡へ向かうルート。しかしルートが岩場から笹場に変わると、予期しなかった障害物に行く手を阻まれる事となった。

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それは行く手を遮る笹、ではなく笹の表面に付着する朝露。一滴一滴はわずかなものの藪漕ぎのように山道を覆い尽くす笹をかき分け進むうち、スパッツのような装備を持たない下半身はまるで水につかったようにびしょぬれ、靴の中からも水が溢れ出すといった有様。


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ボタボタと水をたらしながらもついに峠から見下ろした赤茶色の台地入り口に到着した。眼下にはあまりに広大な敷地。森の中にある円形の遺構はシックナーだろうか。
今回は地図もなく、どこへ向かえばよいものかさっぱりわからない。とはいえ時間は限られている。あれこれ迷って時間を無駄にするわけにもいかず、とりあえず目に入る建造物を片っ端から目指してみる事にした。




見ての通り現在地から麓の鉱山本体まではまだかなりの高低差があるため、かつてのズリが積み重なった斜面を駈けるおりる。土ぼこりを巻き上げながら乾いた斜面を滑り下る様子を想像していたものの、ズリは昨夜の豪雨で水をたっぷり吸い取ったせいで湿り気を帯び意外にグリップがよい。そのかわり足下は泥まみれ、びしょぬれの服装と相まってさらにひどい状態になった。こんな情けない姿で登山者に出会ったら、間違いなく山をなめた素人め!と思われてしまうことだろう。恥ずかしいので登山者を見つけたら早めに身を隠すとしよう。



小串鉱山1508kenashi2day12.jpg

ずるずると下ってきたズリ山を振り返る。雨によって浸食された谷間の立体感が斜めの光線によって強調されまるで赤富士のような迫力のある姿。



AM06:30

到着。毛無峠から駆け足で25分。腕時計を眺め鉱山滞在時間は朝7時までと決める。わずか30分足らずしかないが今後の予定も考えるとこれが限界。

小串鉱山1508kenashi2day15.jpg
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朝の日差しに照らし出される峠とは対照的に、谷間に位置する小串鉱山の大部分は闇に沈んでいた。青みがかった谷底には傾き崩れ果てたコンクリートの固まりが遺跡のように散乱し森に戻りつつある。この場所、帰宅後調べると当時の選鉱所だったよう。他にも変電所はじめいつくかの施設が残されてるとのことを後に知ったものの、当日は地図も持たず訪れたため見つける事はできなかった。


AM06:55

気がつけば7時直前。まだ広大な敷地のほんの一部しか回っていないものの、そろそろ撤退予定時刻。
帰り道、鉱山敷地にある地蔵堂へ参拝。下りの際には急いでいたため気がつかなかったが、お堂には多数の資料が展示してあった。当時の鉱山写真や現場で働いていた方の証言など興味をそそられる展示が多くゆっくりと読みたかったのだが時間に追われほとんど見ることができなかったのが惜しまれる。

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AM7:30
予定時刻より遥かに短い30分あまりで車を停めていた毛無峠へと帰還した。あれほど悩まされた笹に付着した朝露も強い日差しによって乾いてしまったため順調な帰路となった。



というわけで探索どころか到達が目的となってしまった慌ただしい小串鉱山訪問。それでも早朝の決断で訪れておいてよかった。
こうして霧、嵐、星空とめまぐるしく変化した毛無峠での一夜は終わりをつげた。濡れた服を乾かすと次の目的地へと出発、山を下る。きっと下界は猛暑に包まれていることだろう。

[了]
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